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第12回フットボールカンファレンスがオンラインで開会
2021年01月10日
「第12回フットボールカンファレンス」が1月9日(土)に開会しました。新型コロナウイルス感染拡大の影響を鑑み、今回は全てのプログラムがオンライン開催となりました。
フットボールカンファレンスは、日本サッカー協会(JFA)の指導者ライセンスを保有する全国の指導者たちを対象とし、1998年に第1回を開催、2001年の第2回目以降は、開かれた2年に一度開催されています。ここでは、JFAの取り組みや日本のサッカーの方向性を共有するほか、海外から講師を招き、日本の指導者が世界のサッカーのトレンドや各国の取り組みを知る機会となっています。
第12回を迎えた今回は、JFAが2021年に創立100周年を迎えるにあたり、テーマを『このくにのサッカーの未来』とし、3日間にわたって日本サッカーの「過去」「現在」「未来」について考えていきます。100年以上前にこのくににもたらされたサッカーは、多くの先達の努力によって、「日本のサッカー」として形作られ、そして、これからも形を変えながら発展をし続けます。今回のカンファレンスでは、その土台が築かれてきた歴史と、そこから描く未来を、サッカー仲間で共有する場としたいと考えています。
まずは反町康治JFA技術委員長が「日本サッカーは急スピードで発展してきましたが、2018年のFIFAワールドカップロシアでベスト16の壁を打ち破ることができませんでした。あと一歩をどう越えていくか。これが我々の大きな課題です。何が必要なのか。どこに進んでいくのかをしっかり考えていかなければなりません」と挨拶をしました。
続いて田嶋幸三JFA会長が登壇し、100周年を迎えるJFAについて「100年の歴史を見ると多くの出来事がありました。歴史をリスペクトしなければならないですし、リスペクトがあるからこそ次の100年をつくれると思っています」と語り、「誇り・覚悟・団結・礼節・責任」という5つのキーワードからなる日本代表アイデンティティについて「これは代表選手だけのものではありません。今回の参加者の皆さんと一緒に共有していきたいと思っています。そして、皆さんが指導されている選手たちにもその意識を伝えてください」と呼び掛け、3日間にわたるカンファレンスが幕を開けました。
初日のサブタイトルは「このくににもたらされたボールを」となっており、日本サッカーの過去を紐解いていきます。まずは川淵三郎JFA相談役と田嶋会長が登場し、元アナウンサーの山本浩氏の進行で「夢中で蹴り続けてきた ~日本サッカーのあゆみ」というテーマのセッションを行いました。
最初に日本サッカーのあゆみが映像で紹介されました。1964年の東京オリンピックに選手として出場した川淵氏、その試合を小学生時代に観戦してサッカーに魅了されていった田嶋会長の口からさまざまなエピソードが語られる中、「忘れてはならない一大トピック」として紹介されたのが、“日本サッカーの父”と称されるデットマール・クラマー氏についてでした。
選手として直接、指導を受けた川淵氏は、代表チームで遠征したデュイスブルクスポーツシューレの恵まれた環境で対面したことや、日本国内のデコボコの土のグラウンドもいとわず指導してくださったこと、選手と同じ旅館の布団で寝泊まりし、生卵や焼き魚といった食事を一緒に取ったことなどを紹介。
「我々の中に入り込んで、不平不満は一切言わなかった。指導のために何をすべきかを全身で示してくれました。クラマーさんほどの人格者、実際に率先垂範できた指導者はいませんでしたね」と語りました。
田嶋会長は1983年に西ドイツに留学した際、クラマー氏を頼ってレヴァークーゼンで2年間、指導論を学びました。クラマー氏はその時も川淵氏の頃と同様の練習をしていたそうで、「何をやるにも基本が必要だということを教わりました」と振り返っています。
その後も1993年のJリーグ開幕やJリーグ百年構想、2002年のFIFAワールドカップ日本/韓国、2005年宣言など、さまざまなトピックについて語り合いました。最後に山本氏から「明日以降、日本サッカー界は何をどうすればいいのかを色紙に書いてください」と促されると、田嶋会長は「夢があるから強くなる」と記してこう語りました。
「夢に向かうからこそパワーが出てくるし、物事に到達しようと思うことができます。日本サッカー界全体が夢を持たなければならないと思います」
一方、川淵氏はクラマー氏の教えにも通じる「基礎作り」としたため、「しっかりした土台をつくればその上に花が咲きます。みんな上のほうばかり見ますけど、基礎をつくることが日本サッカーの力につながると思います」と断言しました。
続いてのセッションは「強くなろうと蹴り続けてきた ~日本サッカーのあゆみ」。山本昌邦氏と川俣則幸氏が司会進行を務め、元日本代表監督の西野朗氏(現タイ代表、U-24タイ代表監督)と岡田武史氏(現JFAシニア・アドバイザー、FC今治オーナー)が、日本代表について語り合いました。
アジアの中でもなかなか勝てなかった時期を経て、現在はワールドカップ常連となった日本代表。ワールドカップ出場が具体的な目標になったのは、1992年に就任したハンス・オフト監督の時代でした。
オフト監督の下でコーチを務めていた西野氏と山本氏はその指導が「とにかく細かかった」と振り返り、岡田氏も「『トライアングル』とか『サポート』という言葉は当時から知っていたけど、それを体系立てて考えることができる、ということを示してくれた指導者」と評しました。
そのオフト氏を始め、フィリップ・トルシエ氏、ジーコ氏、イビチャ・オシム氏、アルベルト・ザッケローニ氏と、歴代の日本代表監督が日本の選手に対する第一印象や特徴、どのようなチームづくりを進めたかを語ったVTRが紹介されました。
また、実際に1998年フランス大会、2010年南アフリカ大会を率いた岡田氏、2018年ロシア大会を率いた西野氏は代表監督時代のエピソードを披露しました。
岡田監督は初めてワールドカップに出場した日本人監督となりましたが、フランス大会のメンバー選考について、「あらゆるシミュレーションをして、その中で一番出てくる回数が多い選手、いろいろできる選手を選びました」と語りました。また、山本氏から当時18歳の小野伸二選手を選出した理由を問われ、その理由も明かしています。
「シミュレーションをする中で、当時は攻撃の中心はヒデ(中田英寿氏)で、攻撃はヒデ抜きでは考えられなかった。万が一、ヒデがけがをした時、代わりの手がなくて、その時は伸二の天才にかけるしかない、という理由でした」
2010年大会と2018年大会では、チームづくりの途中で監督が代わり、大会前は不安視されながら決勝トーナメントに進出したという共通項があります。岡田氏は当時の状況を「自分たちでやるしかない、と追い込まれたら選手たちが主体的に動き出した。」と振り返りました。
また、西野氏も準備期間が短い中で挑んだ2018年大会について「直前に体制を変えてしまったことでサッカー界を揺るがせ、選手たちにも動揺させ、不安を抱かせました。その中で、選手たちが究極に主体的に動いてパフォーマンスした大会だったと思います」と語りました。2人が語った「主体性」は、今後の日本サッカーにおけるキーワードになりそうです。
初日最後のセッションは「母国からの贈りもの ~歩みを止めないイングランドサッカー」。小野剛JFA副技術委員長をナビゲーターに、イングランド代表のガレス・サウスゲート監督のインタビューが紹介されました。
本来はサウスゲート監督をカンファレンスに招く予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で不可能に。小野氏の渡航も難しくなったため、昨年末にオンラインでのインタビューを実施しました。
イングランドは2018年のワールドカップでベスト4進出という好成績を残しました。「過去50年間で最高のパフォーマンスを披露できた」というこの大会では若手も躍動しましたが、サウスゲート監督は「クラブの育成のおかげ」と語りました。イングランドでは8~9年前にアカデミー制度が見直され、それ以降に成長した選手たちが台頭していることが紹介されました。
また、2012年に完成した代表のトレーニングセンター「セント・ジョージズ・パーク」の存在も大きかったそうです。サウスゲート監督は「全コーチが一堂に会するハブであり、ここで仕事をし、アイデアを共有し、交流し、さまざまな関係者を招いて知識を共有することができる場」と評しています。
また、サウスゲート監督は日本サッカーへの印象について「ディベロップメントプログラムや男女双方でプレースタイルに関して一貫性を持たせながら改善、進化させていこうという舞台裏で行われている取組みについては把握している。どの年代別チームも印象深い。ワールドカップでのパフォーマンスは特にそうだった」と評しました。
これを受け、日本代表の森保一監督は謝意を述べるとともに、「日本は謙虚さがいいところだと思います。まだまだ学ぶべきところはたくさんあると思いますが、戦える武器、良さもあります。世界に追いつき、追い越すことができると思いながら、自信を持って指導者の皆さまと一緒に世界と戦っていきたい」と語りました。
サウスゲート監督は最後に、100周年を迎えるJFAに対して「今後も哲学やコーチングのアイデアを共有しながら未来に向かって歩んでいくことを楽しみにしています」とエールを送ってくれました。
カンファレンス初日はいずれも内容の濃いセッションでした。10日(日)の2日目、11日(月・祝)の3日目は女子サッカーや海外の指導者から見た日本サッカー、日本サッカーの未来について、さらに活発なセッションが行われます。
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