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[短期連載]JFAスポーツマネジャーズカレッジ ~スポーツを通して地域と暮らしを豊かに 坂口淳ダイレクターインタビュー

2022年06月22日

[短期連載]JFAスポーツマネジャーズカレッジ ~スポーツを通して地域と暮らしを豊かに 坂口淳ダイレクターインタビュー

日本サッカー協会(JFA)は、2004年に「JFAスポーツマネジャーズカレッジ」(SMC)を開講。SMCは、04年から06年の3年間は2002FIFAワールドカップの記念事業のサッカーを中心としたスポーツ環境整備事業の一環として、07年からキャプテンズミッション「M11.スポーツマネジメントの強化」に組み込まれ、現在は各地域における「サテライト講座」を中心に開催。ここでは、サテライト講座のダイレクターを務める坂口淳さんに話を聞いた。

○オンライン取材日:2022年4月26日
※本記事はJFAnews2022年5月に掲載されたものです

スポーツは地域と暮らしを良くする手段の一つ

――JFAスポーツマネジャーズカレッジ(SMC)講座の目的を教えてください。

坂口 自立した魅力あふれるスポーツ組織づくりに必要なビジョン、組織をマネジメントする能力を身につけることを目的としています。2004年から本講座がスタートし、2007年以降はサテライト講座としてより受講しやすく、短い時間(計18時間)で修了できるようになっています。

――想定している「自立したスポーツ組織」とは?

坂口 主にアマチュアの組織が対象で、規模もさまざまです。サッカーで言えば、セミプロのようなJFLのクラブから、中学高校の部活動、ボランティアで運営するチームまで幅があります。組織づくりをしていく上で必要なことは多岐にわたります。赤字にならない収支構造の構築や、活動場所の確保もそう。チーム活動を維持していくためには、最低限の人を集めないといけません。分かりやすくいえば「ヒト・モノ・カネ」をマネジメントする企業経営の考え方と変わりませんが、あくまでアマチュア組織を対象としているので、持続させていくことが最大の目的です。

――スポーツ組織のマネジメントを教える上で、大事にしていることは何ですか。

坂口 一つは人との関係づくり。一度築いた関係性を維持し、発展させていくことが重要になってきます。「人」と言っても、レイヤー(階層)があります。スポーツの組織においては、最初にプレーヤー(競技者)を集めなければ、競技は成り立ちません。そこに支える人たち、応援する人たちが加わってきます。SMC講座は全国各地に住む人たちを対象にしていますので、地域性も鍵となります。活動する組織は大都市にあるのか、それとも地方都市なのか、もしくは地方でも人口の少ない町なのかで変わってきます。同じ地域は二つとないため、それぞれの地域でオリジナルのものを考えなければなりません。これはSMC講座で大切にしているメッセージです。ある一つのひな型を基に、「必ずうまくいきますよ」とは言えません。それぞれの土地に先人たちが長年育んできた歴史と文化がありますので、地域になじむ組織をつくらなければ、うまくいかないでしょう。

――SMC講座には、どのようなカリキュラムがあるのでしょうか。

坂口 6セッションの構成になっています。セッション1は組織か自身のビジョンを策定します。掲げた旗が魅力的でなければ、人は集まってきません。セッション2は環境分析。組織を取り巻く環境を考えます。コロナ禍の影響で世の中が大きく変わり始めました。受講者の意見を聞いていて特に感じるのは都市と地方の関係です。リーマンショック(2008年)や東日本大震災(2011年)を経て、人々の価値観も変化してきました。都市への憧れが昔ほどなく、逆に地方の価値が見直されてきています。実際に人口は都市から地方に移り始めています。セッション3はコミュニティデザイン。コミュニティには組織と地域という二つの側面があります。少子高齢化に伴う人口減少により、地域そのものの存続が危ぶまれるケースもあります。地域がなくなれば、当然スポーツ組織もなくなります。現状を踏まえた上で、足元から見つめていきましょうと話しています。「地域密着」という言葉には少し違和感を抱いており、地域に住んでいる人たち、そこで仕事をしている人たちは、地域そのものだという自覚を持ったほうがいい。組織を良くすることは、地域を良くすることにもつながります。講座では組織、地域を良くする手段、そして、そこに暮らす人々の生活を豊かにする手段の一つとしてスポーツを捉えています。

――セッション3までの話を聞くと、アイデアが整理され、形になっていく気がします。

坂口 セッション3まではやりたいことと課題の抽出です。セッション4ではビジネス界でよく使うSWOT分析(強み、弱み、機会、脅威)を行います。この分析について既に知っている方は多いですが、そういう人ばかりではありません。代表的なフレームワークを使い、ビジョンを実現させるための戦略を立てていきます。セッション5は行動計画で、セッション6では目標管理。全体の流れとして、個々で一つの題材を決めて、実行可能な計画をつくりあげる過程を通じて、必要なスキルを体験していきます。例えば決められた時間にゴールまでたどり着くような話し合いは、できるようでなかなかできないものです。何を決めたかがはっきりせず、モヤモヤしたことがある人もいるのではないでしょうか。SMC講座では話し合いの進め方もトレーニングします。

――ビジネススクールのような印象を受けます。

坂口 イメージは近いですが、敷居はもっと低いですよ。私自身、難しいマネジメント論を教えるのではなく、なるべくかみ砕いて、ビジネスの世界から縁遠い主婦の方から中学生や高校生でも理解できるように心がけています。「スポーツマネジャーズカレッジ」という名前ですが、講義内容は基礎的なことばかり。どなたでも気軽に受講できます。

教えるよりも引き出すこと

――SMC講座を受講しているのは、どのような人たちですか。

坂口 もちろんサッカー関係が多いですが、他競技の方もいます。最近では、障がい者スポーツの関係者も増えています。マネジメントする立場の人だけではなく、プレーヤーもいます。県協会側から働きかけて、中小企業を経営している方たちにも参加してもらい、地域のスポーツ関係者と交流してもらったこともありました。

――SMC開講から18年になりますが、これまでの修了生で自らの計画を具現化させた人たちはいますか。

坂口 数多くいます。現在、J3のアスルクラロ沼津を立ち上げた山本浩義さんはその一人です。SMC講座を受講されたとき、沼津は東海リーグ2部に属していましたが、将来的にJリーグに入会するプランを練り、目標に向かって着実にステップアップしていきました。京都の久御山高校サッカー部を率いる松本悟監督は、地域を巻き込んだ計画を立て、全国高校サッカー選手権大会でベスト4入りを果たしました。久御山高校は公立校なのですが、地元の小中学校のクラブに自分たちの高校のグラウンドを使ってもらうなどしながら連携し、長期的なプランの下で高校サッカー部の強化につなげていました。

――地域とのつながりが成功の秘訣だったのですね。

坂口 地域とアマチュア組織がうまく噛み合って結果を残した例ですが、一つの成功例が全てに当てはまるわけではありません。SMC講座では何かを一から教えるというよりも、受講者が既に持っているものを引き出すことを心がけています。ぼんやりしている目標を明確化させるためのお手伝いをしたいと思っています。先ほど、マネジメントする立場の人たちの例をいくつか挙げましたが、それ以外の立場の人でもできることはあります。

――マネジャー以外にもアプローチしているのですね。

坂口 SMC講座は、必ずしもリーダー向けではありません。組織を構成する一人の意識が変わることで、組織全体が変わっていきます。フォロワー側に回る人の役割も大事ですし、昔と今ではリーダーシップの取り方も異なります。一人が先頭に立って、引っ張るパターンだけではなく、周囲がリーダーをフォローし、組織全体で盛り上げていく場合もあります。昨今は組織がフラット化していますから。

――SMCを修了した人たちへのメッセージはありますか。

坂口 自信を持ってもらいたいですね。はじめの一歩を踏み出し、計画を実行する勇気を持ってほしいです。私たちができることは、計画を実現させる可能性を高めるためのサポートです。かなわぬ夢物語とは思わず、まず行動に移してもらいたいと思います。

――今後、どのような人にSMC講座を受講してもらいたいですか。

坂口 特に、地方と呼ばれるところに住む人たちです。スポーツを通して、地域を盛り上げてほしいと思っています。高齢者の方々にも、ぜひ受講していただきたいですね。自分たちの生活だけに目を向けるのではなく、地域発展や、お孫さん世代のために何かを残す活動に少しでも関心を持っていただければうれしいです。

SMC紹介文

JFAスポーツマネジャーズカレッジ(SMC)とは

豊かなスポーツ文化の創造。
それを具現するのは、私たち一人ひとりの力。

地域に根ざし、誰もが気軽に楽しめるスポーツは、人々をきっと幸せにします。
そんなスポーツ組織に、今、求められているものの一つ。
それは、魅力溢れるスポーツ組織づくりを進めていける優れたマネジャーの存在。
スポーツマネジメントを学び、自立した魅力溢れるスポーツ組織づくりを進めていくことで、スポーツの楽しさを、より多くの人々と分かち合いたい。

JFAスポーツマネジャーズカレッジ(SMC)で学ぶスポーツマネジメントは、地域に根ざし、人々に愛される、魅力溢れるスポーツ組織づくりの必要不可欠なツールとなります。

JFAスポーツマネジャーズカレッジは、自立した魅力溢れるスポーツ組織づくりを推進することにより、豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献できる優秀な人材を養成することを目的とした人材育成事業です。

お問い合わせ
JFAスポーツマネジャーズカレッジ事務局
〒113-8311 東京都文京区サッカー通り JFAハウス
TEL:050-2018-1990 MAIL:jfa_smc@jfa.or.jp

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