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「独特の緊張感の中で戦えた経験は宝物」 池田太監督インタビュー FIFA U-20女子ワールドカップ コスタリカ2022
2022年09月12日
FIFA U-20女子ワールドカップ コスタリカ2022が8月10日から28日にかけて開催され、U-20日本女子代表は準優勝を果たした。史上初の大会2連覇とはならなかったものの、3大会連続のフェアプレー賞獲得や現地で得た力強い声援など、コスタリカで過ごした充実の1ヶ月についてチームを率いた池田太監督に聞いた。
――2大会連続で決勝に進出し、準優勝という結果を持ち帰りました。まずは大会全体を振り返って、どんな感想でしょうか?
まずは選手を支えてくださっている所属チームの方々や、小さい頃から指導していただいた指導者の皆様、保護者の皆様をはじめとする、私たちに関わってきてくださった方々に感謝を伝えたいです。大会としてはこの年代でも各国が組織的にオーガナイズし、しっかりと整ったサッカーを目指している中で、個の網力の高い選手が各ポジションにいました。そういった相手への対策を選手たちがしっかりと理解すること、そして短い時間で適応していく力はこのチームの強みだったと思います。
――アジア予選が中止になり、海外遠征もなかなかできない中で迎えた大会でしたが、チーム作りで強調されたことを教えてください。
練習ではピッチ上をゾーン分けして攻守の狙いを整理し、また相手のスカウティングをもとにセットプレーなどの細部を詰めていきました。大会直前まで対外試合ができなかったからこそ、各国も日本がどんなチームかを知る術がないだろうと考え、3バックや4バックと様々なシステムにトライしました。そうすることで、選手個々のプレーや戦い方の幅を広げる狙いもありました。
――初戦のオランダ戦では、その狙いが見事に的中した印象です。
そうですね。「アグレッシブに戦う」というコンセプトがあったので、初戦は積み上げてきたことを思い切りぶつけようと臨みました。初戦の硬さは見られましたが、狙い通り前線から奪いにいき、先制点を奪うことができました。後半は相手が長いボールを入れてきて耐える時間もありましたが、粘り強く戦い、初戦で勝ち点3を積み上げられたことは自信になりました。
――相手の情報の伝え方で工夫したことはありますか?
中2日のどのタイミングで選手たちに相手の情報を共有するか、その情報に基づいてどのような練習をしていくかは、スタッフと試行錯誤しました。伝える情報が多すぎて選手が不安にならないようにバランスを心がけましたが、選手たちは情報処理能力に長けていたと思います。
――その後ガーナ戦の勝利を経てもなお、3試合目のアメリカ戦はグループステージ突破が決まっていない中で緊張感もありましたが、勝敗を分けたポイントは?
アメリカは最終ラインにフィードが上手い選手がいたので前半からコンパクトにして守ろうとしましたが、思うようにプレッシャーをかけられなかったので、改めて後半は蹴らせないようにと前線からの守備のシフトを入れ直しました。その中でアグレッシブさを取り戻して先制できたことが大きかったと思います。
――ノックアウトステージ前に行った選手だけのミーティングは、池田監督から提案されたそうですね。
はい。ノックアウトステージでは負ければ大会を去らなければいけないので、長江伊吹キャプテンと相談して決めました。後から彼女に聞いたら、プレー時間が少ない選手も含めて全員がそれぞれの思いを伝え合うことができて「いい時間でした」と。その中で、しっかりと一体感を高めてくれたと思います。
――フランス戦は延長後半にリードを許しながらラストプレーで追いつき、PK戦で劇的な勝利を収めました。
90分間でゲームを終わらせたかったのが本音ですが、個が強いフランスに最後まで怯むことなく戦ってくれました。PK戦の前に円陣を組んだ時はみんないい表情をしていましたし、勝って最大の6試合を戦えることになったのは、選手たちの頑張りの成果ですね。
――そして、準決勝では無失点だったブラジルから2点を奪い、2大会連続となるスペインとの決勝に進みました。
ブラジルは各ポジションに強み持った選手がいる印象でしたが、両サイドを使ってボールを動かそうと準備して臨んだ中で山本柚月選手が先制点を決めてくれました。一度は同点に追いつかれましたが、最後は「決勝に行こう」という強い気持ちで勝つことができたと思います。
――決勝はスペインに1-3で敗れましたが、後半は押し込み、最後まで攻め抜きました。
立ち上がりにディフェンスラインの裏への抜け出しを許して、落ち着く間もなく2点目、3点目を取られてしまいました。動揺もあったと思います。ただチャンスは作れていたので、ハーフタイムはその場面を映像で見せながら「前線から追って、取り返しにいこう。力を振り絞って戦おう」と伝えました。選手たちもしっかり顔を上げて1点を返しましたが、スペインの守備を崩せず、試合後はみんな悔しさが溢れていましたね。ただ、通用した部分から自信を得た選手や、「楽しかった」と言う選手もいました。試合ごとにお客さんの数や日本国旗の数が増えて、拍手の音も大きくなっていくのを感じましたし、素晴らしい環境でプレーできたことに感謝しています。悔しいけれど6試合を戦い切って、本当に濃い1ヶ月を過ごせたのではないかと思います。
――「応援されるチームになる」ことがチームの目標のひとつでもあったと思います。
ピッチの中で選手たちが主体的に生き生きと、ボールやゴールを奪いにいく姿勢を見せたこともそうですが、試合前後の笑顔や振る舞いも含めて応援してもらえたんじゃないかと思います。日常でもホテルスタッフの方々とコミュニケーションを取ったり、明るく振る舞ったりできることが選手たちのベースにしっかりあるんだなと感じました。
――選手たちには、この大会を通じて得た経験を今後にどう生かして欲しいですか?
決勝の独特の緊張感の中で戦えた経験は宝物だと思います。その中で感じた決め切る力やパワーやスピードなどを伸ばして、一人ひとりがさらに成長して選手としての器を広げて、女子サッカーの土台を厚くしてほしいと思います。
派遣していただいたチームや選手たちに関わってきた指導者の皆さん、応援してくださった皆さんにも心から感謝申し上げます。ぜひ、今後とも応援をよろしくお願いします。
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