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【最後の青春ドラマ】衝撃の選手権デビュー“怪物伝説”の幕開け~第101回全国高校サッカー選手権大会・平山相太(筑波大学コーチ)前編
2022年12月26日
第101回全国高校サッカー選手権大会が12月28日(水)に開幕します。高校年代の大舞台に立った選手はどのような青春時代を過ごしてきたのか。ここでは国見高校で3大会連続出場を果たし、2度の優勝を経験した平山相太さん(現、筑波大学コーチ)の高校時代のストーリーをお届けします。
○オンライン取材日:2022年12月14日
親元を離れて名門高校へ
今年で101回目を迎える全国高校サッカー選手権大会において燦然と輝く「大会通算17得点」という記録。高校生の3年間、毎年、チームが出場して常に上位進出を果たし、そのなかでコンスタントにゴールを決め続けなければ到達するのが難しいこの大記録の保持者こそ、国見高校(長崎)で“怪物”と呼ばれた平山相太だ。
190センチの長身ながら足元の技術も高く、高校生離れしたスケールの大きなプレーでゴールを量産した平山だったが、意外にも点取り屋としての役割を求められていたわけではなく、彼自身も「チームの一員としてやるべきことを遂行するという気持ちでプレーしていた」という。
平山は福岡県北九州市出身。1997年度の第76回大会で地元の東福岡高校が帝京高校(東京)と戦った通称“雪の決勝”を見て選手権に魅せられ、自らもその舞台を目指すようになった。その東福岡高校を始め、各地の高校に練習参加するなか、サッカー選手としてだけでなく、人間としても成長へと導く小嶺忠敏監督(当時)の教えに感銘を受けて国見への進学を決意する。
当時の国見高校は、現在では考えられないほどのハードトレーニングをこなすことで知られていた。平山も覚悟を決めて国見の門をたたいたのだが、待ち受けていたのは想像を超える走りのトレーニング。タイムが設定され、クリアできなければ上級生も含めたグループ全員が連帯責任で最初からやり直し、というメニューには特に苦しめられた。体は大きくとも、新入生の体力は上級生には遠く及ばない。自分だけがクリアできず、そのたびに上級生も再び走らなければならないという状況は、特にメンタルに響くものだったという。
一方で、試合になると最初から存分に実力を発揮していた。正式な入学前に行われた鹿児島合宿でゴールを量産したこともあり、入学当初からAチームに帯同。コンスタントに結果を出し続け、1年生ながら2001年度の第80回大会の選手権でメンバー入りを果たすことになる。
本人が「先輩たちが選手権に連れて行ってくれたようなものだったので、あまり実感がなかったです」と振り返るように、この時の平山は不動のレギュラーではなく、登録メンバーの1人という立ち位置だった。実際、初戦となった2回戦の松商学園高校戦(4-1)、3回戦の星稜高校戦(4-1)はともに試合終盤からの出場で、続く準々決勝の大津高校戦(2-1)は出番なしに終わっている。
高校1年で選手権制覇を経験
迎えた準決勝、国立競技場で行われた鹿児島実業高校戦の先発メンバーに、平山の名前があった。平山自身は「あの大会で僕が先発するというのは、小嶺先生の頭の中にはなかったはずです」と回顧する。そして「同じ九州の鹿児島実業との試合だったので、相手の意表を突くという戦略だったと思う」というこの起用は見事に実ることとなる。
国見の長身FWの代名詞である14番のユニフォームを身にまとった平山は22分、片山奨典のフィードに抜け出すと、丁寧な切り返しでDFをかわし、右足のトーキックで先制点を奪った。「国立の舞台でしたが特に緊張せず淡々とプレーできましたし、得点シーンも相手DFやGKの動きを冷静に見て、シュートコースもしっかり見えていました」というこのゴールが、選手権における“平山伝説”の幕開けとなった。
鹿児島実業を4-1で下し決勝に進出した国見だったが、平山が決勝のピッチに立つことはなかった。平山自身も「悔しい気持ちはなく、当然だよな」と感じていたそうで、岐阜工業高校を3-1で下し優勝を飾った瞬間も「3年生がすごく喜んでいるのが印象的だった」と語っている。一方で、その姿を見て「高校生がこの大会にかけていることを実感し、選手権という大会の偉大さや素晴らしさを再認識した」という。
2年生になると、平山は前線の主軸として存在感をさらに強めていく。とは言えエゴイスティックな点取り屋だったわけではなく、オールコートプレスやロングボールを多用するチーム戦術の中で求められるタスクを堅実にこなしていった。選手権は出て当然、上位進出の常連だった国見だが、長崎県予選の初戦から映像を使って相手を分析し、対策を立てるなど、その強さはチームとしての入念な準備に裏打ちされるものだった。そのなかで個々がそれぞれの役割を全うしていたからこそ、他を寄せ付けない実績を残していたのである。
第81回大会に出場した平山は、初戦となった2回戦の丸岡高校戦(5-0)でのハットトリックを皮切りに、準決勝までの全試合でゴールを挙げていく。ハードトレーニングが当たり前の国見だったが、「選手権のときは調整に重きを置いていた」そうで、各選手ともコンディションは万全。全員がタスクを遂行できる状態にあったことが、チームとしての強さは平山のゴール量産につながったとも言える。
盤石の強さを見せ、当然のように決勝まで駒を進めた国見が対峙したのは、後にJリーグ入りする名手をズラリとそろえ、国見と同様に優勝候補に挙げられていた市立船橋高校。そしてこの試合は、それまで無双状態だった平山にとって生涯、忘れられない一戦となった。
第101回全国高校サッカー選手権大会
大会期間:2022/12/28(水)~2023/1/9(月・祝)
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