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【最後の青春ドラマ】恩師の言葉を糧に成長~JFA 全日本U-18 女子サッカー選手権大会・林穂之香(ウェストハム・ユナイテッド)前編

2022年12月28日

【最後の青春ドラマ】恩師の言葉を糧に成長~JFA 全日本U-18 女子サッカー選手権大会・林穂之香(ウェストハム・ユナイテッド)前編

JFA 第26回全日本U-18 女子サッカー選手権大会が2023年1月3日(火)に開幕します。U-18年代の女子日本一を決する大会に出場した選手はどのような青春時代を過ごしてきたのか。ここではなでしこジャパン(日本女子代表)でも活躍する林穂之香選手のアカデミー時代のストーリーをお届けします。

○オンライン取材日:2022年12月13日

往復2時間超を通い続けた6年間

「当時の写真を見ると、今でも『このメンバーで戦ったな』と思い出して、頑張ろうという気持ちになります」

現在、イングランドのウェストハム・ユナイテッドで活躍する林穂之香は、セレッソ大阪堺ガールズの一員として出場した全日本女子ユース(U-18)サッカー選手権大会(現、JFA 全日本U-18 女子サッカー選手権大会)についてそう振り返った。

C大阪堺ガールズは2015年度の第19回大会で初出場・初優勝の快挙を成し遂げ、林は高校2年生の時に栄えある優勝メンバーの一員となった。そして、翌2016年度の第20回大会ではキャプテンとしてチームを連覇に導いた。2年連続で栄冠を達成したが、その裏には人知れぬ苦労もあったという。

林は京都府宇治市の出身。幼稚園の友だちの影響で5歳のときに始めたサッカーは「めちゃくちゃ楽しかった」そうで、小学生になってからは地元の神明J.S.Cスポーツ少年団に入り、夢中になってボールを蹴った。

日本の女子サッカー界には、中学生年代のプレー環境が不足しているため、中学進学のタイミングで競技から離れてしまう子が多いという課題がある。林も中学進学に際してこの課題に直面した。「女子サッカー部がある京都府内の私立中学に行くことも考えた」というが、少年団のコーチがセレッソ大阪レディースU-15(2012年にセレッソ大阪レディース、2013年にセレッソ大阪堺レディースに改称)のセレクションの存在を教えてくれた。「ここに行きたい」という強い気持ちでセレクションに臨んだ林は見事に合格し、2011年に晴れてC大阪レディースの一員となった。

自宅のある宇治市から大阪市内のグラウンドまでは、電車を乗り継いで2時間近くかかる。中学の授業が終わったら急いで帰宅して大阪に向かい、トレーニングを終えて自宅にたどり着くのは23時20分頃。そんな生活が何年も続いた。「中学生の時期が一番、通うのが大変だった」そうで、最寄り駅までの車での送迎など、家族のサポートも受けながらサッカーに打ち込んでいった。

高校2年時に初出場初優勝

当時のC大阪レディースは中学生のチームだったが、2011年は関西女子サッカーリーグ1部、2013年からはチャレンジリーグ(2部)やチャレンジリーグWEST(3部)など、成人女子のリーグ戦に参加していた。フィジカルやスピードの面では文字どおり「大人と子どもの差」がある戦いで、林も「全く勝てない時期もありましたし、相手の動きが分かっていてもフィジカルの差でやられてしまう場面もあって、すごく悔しかった」と振り返っている。

それでも、彼女たちは「チャレンジ精神はずっと持っていて、そういった強い相手に今日こそは勝ってやるという強い気持ちで毎試合、戦っていた」という。レベルの高い相手と常に対峙するこの環境で、C大阪レディースは着実に実力を伸ばしていった。

中学での3年間を終えて高校に上がる頃、林は竹花友也監督からある言葉をかけられる。

「監督から『真面目すぎる』とか『おとなしすぎる』といったことをさらっと言われました。確かにおとなしかったし、一生懸命プレーするだけ、みたいな子だったんですよね。アイデアを出したり、チャレンジングなプレーを見せたりということも少なかったですし、相手と駆け引きをすることもなかったので、もう一つ、殻を破ったほうがさらに成長できるということだったんだと思います」

林は当時のチームを「関西のチームだからなのか、すごくエネルギッシュで明るく、パワフルな子が多かった」と振り返る。そのなかで、彼女自身はとにかく正確に、ミスなくプレーすることを重視していた。確かに不可欠な姿勢ではあるが、竹花監督にとっては他の選手に比べて物足りなく映ったのかもしれない。

性格はそう簡単に変えられるものではなく、林は今もなお闘争心を前面に出すようなタイプではないが、指揮官やチームメートに支えられながら、一歩ずつ着実に成長していった。

迎えた高校2年時、林はC大阪堺レディースの下部組織にあたるC大阪堺ガールズの一員として第19回の全日本女子ユースに初出場した。「全国大会というだけでワクワクしていましたし、みんな楽しみにしていました」と語る一方、「チームとして最初から優勝を狙っていたし、勝ちたいという気持ちがみんな強かった」という同大会で、C大阪堺ガールズは快進撃を見せていく。

初戦は大分トリニータレディースに10-1、2回戦はクラブフィールズ・リンダに15-1と、2試合連続で2桁得点を記録する大勝。続く準決勝は浦和レッズレディースユース(現、三菱重工浦和レッズレディースユース)との対戦となり、林は1点リードで迎えた67分、チーム2点目を挙げる。終盤に1点を返されたため、結果的に林のこのゴールが決勝点となった。FKの流れからルーズボールにいち早く反応し、相手GKの頭上を抜くよう左足で巧みにコントロールされた一撃は、積極性やアイデアの詰まったシュートだった。

迎えた決勝の相手は、それまで5連覇を達成し、この大会でも圧倒的な優勝候補に挙げられていた日テレ・メニーナ(現、日テレ・東京ヴェルディメニーナ)。「自分たちは前線からプレスをかけるスタイルなんですが、それが全部かわされて、全然できなかった」と林が振り返ったとおり、C大阪堺ガールズは苦戦を強いられた。それでもピンチをしのいで90分間をスコアレスで乗り切り、PK戦の末に5-4で勝利を収めた。初出場にして初優勝、しかも絶対王者メニーナを破っての戴冠。林自身にとっても、それまでの努力が報われた瞬間だった。

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大会期間:2023年1月3日(火)~2023年1月9日(月・祝)
大会会場:大阪府/J-GREEN堺

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