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UEFA Assist プログラム、女子サッカー発展のためのワークショップを実施
2023年03月29日
日本サッカー協会(JFA)は3月23日(木)、24日(金)に、「UEFA Assist プログラム」の一環として、女子サッカー発展のためのワークショップをJFAハウスで実施しました。20日(月)と21日(火)に行われた女性リーダーシップに続き、この2日間は女子サッカーの環境整備や運営についてのベストプラクティスを共有することを目的とし、JFAや都道府県サッカー協会、WEリーグおよびWEリーグクラブの経営層や管理職、JFAナショナルコーチングスタッフ、JFAコーチら39人が参加。講師はヨーロッパサッカー連盟(UEFA)のPriscilla JANSSENSさん、Chris MILNESさん、Eva PASQUIERさん、Jarmo MATIKAINENさんが務めました。
性別を問わず、それぞれの立場で日本サッカーをけん引するメンバーが集った今回。プログラムを始めるにあたり、JFA女子委員会の今井純子副委員長は「(これだけの人が)こうして集まる機会はなかなかなかった。日本の女子サッカーの発展をみんなで考える機会にしたい」と伝えました。「ガバナンスとジェンダー平等」をテーマとしたセッションでは、組織においてなぜジェンダーバランスが必要なのか、サッカーにおける女性の役割をどう考えているかなどについて議論がなされ、参加者からは「サッカー界は女性がマイノリティ。その中で女性が輝く姿を見せることで日本社会にも影響を与えられるのではないか」「女性も男性も同じ権利を平等に与えられることが大事だと思う」といった意見が出ました。UEFAでもリーダー的な立場に就く女性が少ないことが課題となっており、講師からは「女性にもチャンスがもっと与えられ、全体のバランスをとることが必要。サラリー(給料)や発言する場面などのさまざまな機会と権利が男女均等に与えられるよう、みんなで協力しなければならない」といったフィードバックがなされました。
JFAという組織におけるジェンダー平等についても、あらためて確認する時間が設けられました。JFAでは、理事30人のうち女性は5人(16.7%)、評議員会メンバー79人のうち女性は4人(5.1%)、21ある委員会のうち女性が委員長を務める委員会は1つ、事務局の管理職に就く女性は63人のうち11人(17.5%)といった数字が示されています(いずれも2022年時点)。これらは決して十分な数字ではなく、UEFAの講師は「女の子や女性がスポーツ、サッカーの世界に入っていけない阻害について考えてほしい。女性がサッカー界に留まらない、定着しない、続けられない要因は何だと思うか」と問いかけ、参加者は思いつく要因を付箋に書いて貼り出し、全体でそれを共有しました。また、こうしたジェンダーバランスの課題を解決するためには、女性の将来を示すことのできるロールモデルをつくること、インスピレーションを与えられる人を起用することなどが提案され、一方で「女性が適材適所で活躍できているかどうかも重要。(女性だからという理由ではなく)質や適性を伴う選任でなければならない。男女が互いに支え合うことで大きな力を生み出すことができる」と伝えられました。
女性スポーツにおけるマーケティングやブランディング、収入を生み出すウェブコンテンツ作りなどの事例も紹介されました。その中で、イタリアの名門クラブであるユベントスが2017年1月にリブランディングの一環としてロゴを一新したことも例に挙げ、「とてもシンプルなデザインになったことで、グッズやアパレルなどいろいろな場面に展開しやすくなった。ユベントスファンではなくてもデザインが好きでグッズを買う人もいる。ロゴもシンプルなので制作コストもかからない」と説明し、収入は工夫することによって生み出すことができると強調しました。
UEFA女子チャンピオンズリーグは2022年より、大会史上最高の観客動員と視聴数を更新し続けています。UEFAは2021年にリーグロゴを刷新するほか、アンセム(テーマ曲)も作成。アンセムは、選手に何か新しいことが始まると実感させ、女性をエンパワーするような大胆なものを目指して作られたといいます。UEFAの講師は「かなりディテールにこだわった女子チャンピオンズリーグのためのアンセム。男子のリーグと同じく英語、フランス語、ドイツ語の3カ国の歌詞がある。選手も大好きなテーマ曲」と言及。参加者からは「迫力があり、試合やリーグに懸ける思いが伝わる」という感想が寄せられました。そのほかにも同リーグではさまざまなプロモーションを仕掛けており、それがリーグやクラブ、選手の成長につながっているといった背景も紹介されました。
そのほか、サッカーの社会的な目的や役割、大会構造が選手の成長に与える影響などについても議論がなされ、UEFA欧州女子選手権におけるテクニカルデータも共有されました。また、日本女子サッカーにおいて優先して発展させるべき分野を全員で議論し、そこから導き出された4つのテーマ「ブランドディベロップメント」「サッカーに関わる女性の能力開発」「クラブディベロップメント」「グラスルーツ、学校でのサッカー」について、グループワークも実施。各グループでテーマに基づいてゴールを設定して具体的なプランニングを作成し、その内容を発表しました。
UEFAの講師は「ぜひ今回立てたプランを早い段階で完成させてほしい。われわれにそのプランを共有してもらえたら、情報やサポートを提供することもできる。これから実践することが重要」と伝えました。プログラムの途中には田嶋幸三JFA会長も激励に訪れるなど、さまざまな人が参加した今回のUEFA Assist プログラム。日本女子サッカーの発展に向けた有意義な機会となりました。
参加者コメント
松嶋幸治さん(北信越FA理事、石川FA理事・女子委員長)
女子に関わる最先端の戦略や取り組み、いかに継続し改善して、目標を達成していくかなど、綿密で洗練された方法論など、多岐にわたる取り組みを知る機会を得ることができました。今回のワークショップでは、近年問題になっているジェンダーに関する事柄から、女子サッカーが世の中に与える影響の重要性、その環境をより良いものに持続しながら発展していくために、参加者の皆で4つの重要なキーワード【①ブランドディベロップメント、②女性がサッカーに関わり続け、能力を開発、③クラブディベロップメント、④グラスルーツ】を設定し、参加者でグループセッションをしました。その中で、私達のグループは、グラスルーツの発展について、佐々木JFA女子委員長をリーダーにグループディスカッションし、プランニングを行いました。UEFAの講師の方から、「戦略だけではダメ、スケジュールや責任の所在と、しっかりとした実現可能な運用計画を作成し、実施と見直しを繰り返すことのできる仕組みと、必ず現時点の状況を確認できる様なプランニング】とのアドバイスを受けて、グラスルーツの充実と発展を目的としたゴールを達成するためにオブジェクティブを設け、現実的な中間目標や達成までの期間など、より具体的なプランニングが作成できました。
今回のワークショップを経験し、立場的に一番現場に近い者として、大変参考になりましたし、物事を達成するためのプロセスの構築や、一緒に達成していく仲間たちの重要性など、また身近にいる子どもたちに、よりサッカーを身近に日常的なものにしていくために取り組まなければならないことなど、自分自身の考えが整理されて、大変良かったと思います。今回のワークショップを受けて、多くの共有できる仲間ができたことは、何よりの財産となりました。今後もこのようなワークショップがあればぜひとも参加させていただきたいと思っています。
井上有希江さん(愛知FA理事、女子委員長)
1日目のガバナンスとジェンダー平等のセクションでは、組織の在り方、部署や会議体の役割、ジェンダーバランスについて考えさせられました。UEFAの講師陣により、欧州と日本のサッカー界での女性の立場の違いを痛感させられました。また、UEFA女子チャンピオンズリーグ、女子EURO2022の成功例や価値の高さ、そこに至るまでの取り組みや社会的責任など大変参考になりました。2日目は日本女子サッカーのブランディングについてSMARTを用いて目標設定をしました。7月から始まる女子ワールドカップまでに何ができるか、その後にどう繋げるかなど深く議論することができました。
2日間を通じて、
・女子サッカーが、子ども自身がやりたい!親がやらせたい!と思われるスポーツになること
・女子サッカー界が多くの方が関わりたい、チャレンジしたいと思われる存在になること
・女子サッカークラブが地域の資源として欠かせない存在になること
・日本が男女問わずいつでもサッカーに触れることができる日常になること
など、多くの夢や期待に触れることができました。
私に何ができるかわかりませんが、トライする女性に対して、自信を持って背中を押せるような環境整備の一助となることができればと思います。