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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第80回 天野圭介 中国・成都市サッカー協会 アカデミーU-15/U-16 監督

2023年07月28日

アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第80回 天野圭介 中国・成都市サッカー協会 アカデミーU-15/U-16 監督

中国、成都市サッカー協会で3年目を迎えて

2021年の5月に中国・成都市に着任し、今年で3年目を迎えました。

今年度は成都市サッカー協会アカデミーU-15監督としてのチーム活動と、昨年に引き続き技術部スタッフと共に指導者養成事業の各講習会の業務を担当しています。

中国では日本サッカーとの違いについて比較されることが度々あり、中国国内でもカタールワールドカップでの日本代表の活躍をはじめ、アンダーカテゴリー日本代表のアジアでの活躍、日本国内のユース年代からジュニア年代の活動まで幅広く注目されています。

中国は広大な国土と総人口が14億人以上にのぼるため、文化や習慣、生活スタイルの地域差が非常に顕著です。しかし、指導現場に目を向けると中国国内のいずれの地域においても選手の選択肢を過度に制限する環境設定や、プレー方法を限定した指導に重きが置かれ、また相手選手がいる状態になると極端に適応できない選手やチームが数多く存在するように思います。

この育成面の課題の問題提起として、私が講師を務める指導者講習会では問題解決から逆算したトレーニング論と題して、固定概念を違う角度から検証してもらうためのグループアクティビティや講義を行い、指導者が自ら考えるきっかけ作りをしています。

中国の育成年代の現状

今年の5月には、中国サッカー協会主催の中国U-13エリートキャンプの選手選考に携わる機会がありました。セレクションには中国大陸を南北の地域に分けて各地域から選抜された約70名の選手が参加しました。

この機会を通じて、素晴らしい才能を持った多くの選手に出会うことができたことは貴重な経験になりました。

このセレクションを通じて感じたことは、中国の選手は日本の同年代の選手と比べると、On the ball、Off the ball時のいずれにおいてもプレーの優先順位の理解が低く、そのことによりプレーの連続性がなくなることが課題だということです。

またこのエリートキャンプには、1980年代、90年代、2000年代の元中国代表の指導者や中国サッカー協会に所属しているスペイン人、オランダ人指導者たちが選考スタッフとして参加していました。ディスカッションでは日本サッカーがビジョンに対してどのようにして発展と成長を遂げているのか、また中国の育成年代選手の課題点や選手たちの教育環境、年間を通したリーグ戦環境、指導者養成、トレーニングの考え方について意見交換しました。

中国生活から感じたこと 更なる進化への挑戦

日本を離れて3年目を迎え、改めて環境に適応していく力の必要性を日々実感しています。そのためには多様性を受け入れる思考や客観的な視点を持つこと、同時に自身の考えを伝える力も大切なことだと感じています。

日本で生活している時は、規律やルールが整備されているため混乱が少なく、事前に問題を回避できる環境に慣れていました。それにより物事を効率良くスムーズに進めることができ良い面も沢山あります。一方で、問題や想定外のことが起きたときに本質を見定めて、個人の判断のもと流動的且つ臨機応変に対処する能力を育む機会が少ないことに気づきました。

選手育成においても世界で活躍する選手を輩出し、チームでも世界のトップを目指す上で必要なことは、個人が問題や課題を打開していく力を更に身に付けることだと思います。各々の力で目的を達成するための手段を強化していくことが大切ではないかと思います。

今後も日中両国の選手や指導者から刺激を受けながらサッカー発展の一端を担えるよう邁進したいと思います。

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