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2023年度 リスペクトシンポジウム「セーフガーディングポリシーをクラブの日常へ」を開催
2023年09月22日
日本サッカー協会(JFA)は9月16日(土)、2023年度リスペクトシンポジウム「セーフガーディングポリシーをクラブの日常へ」を登録指導者や一般の方など、約200名にご参加いただきオンラインにて開催しました。
冒頭では田嶋幸三JFA会長からのビデオメッセージが公開されました。「われわれは本当に日本のサッカー界、スポーツ界から暴力暴言をなくしたいと思っています。良いものはどんどん、欧米から学んでいくべきです。しかし、リスペクトの精神にそぐわないものは、排除していかなければいけません」と、改めて強い意識が強調されました。
続いて事例紹介では、今井純子JFAリスペクト・フェアプレー委員長から、指導者を主としていたこれまでの基本方針から、保護者やチーム関係者、ファン・サポーターなど広く含めた啓発活動を行うとの考え方が示されました。その一例として、2015年から始まっている、クラブ内や試合で安心・安全や幸せといった「ウェルフェア」を守るウェルフェアオフィサー制度への鳥取県サッカー協会(FA)の取り組みが報告されました。鳥取県FAの山根卓也さんは、参加した保護者のウェルフェアへの意識向上の事例を紹介。また、国内で人口最少である鳥取県の立場から、「仲間を増やす、裾野を広げるために、安心・安全にサッカーを続けてもらいたい。そのための環境づくりが大切」と、サッカーの未来のための必要性も説きました。
その後行われたパネルディスカッションには、今井委員長、山岸佐知子同副委員長、鳥取県FAの山根さんに加え、公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)インテグリティ推進部インテグリティ推進課の品治恵子さんと日本バレーボール協会(JVA)業務執行理事 指導普及事業本部長の灰西克博さんの5名が参加しました。灰西さんからはJVAによる「指導と暴力の間となる“未暴力”」という捉え方が紹介され、暴力・暴言に発展する前に防ぐことができる可能性が示されました。
また、パネリストが注目したのが、灰西さんが紹介したJVAによる新聞広告でした。この広告では、同じ指導内容であっても選手側から見た場合と、指導者側から見た場合で、まったく考えが異なるという事例が多く掲載されました。例えば、選手が「練習後、2人きりの体育教官室で、1時間くらい怒りの説教を受けました」と訴えた事例に対して、指導者は「期待している選手なので、1時間かけてマンツーマンで指導を行いました」と返答。「レシーブの練習で、どう考えても取れない場所にボールを打たれます」という選手の声にも、「レシーブ力を高めるために、多少無理な場所へのボール出しは欠かせません」と指導者が返すなど、子どもと正反対の捉え方があったそうです。
JFAでも、子どもの見方を尊重すべくアンケートを実施。サッカーが楽しいという声が多くありながらも、自身や周囲が嫌な思いをする暴言や扱いを経験したという結果が出ました。そうした反応を受け、自身も指導者である鳥取県FAの山根さんは「子どもたちは、大人たちの行動などをしっかり見ているんだと分かりました。だからこそ、大人の振る舞い、言動・行動が大事だと思います。一方で、暴言・暴力をなくすために大人たちにできることがあるという声が73%あったというのは期待されているということ。子どもたちがスポーツをする環境を大人が整えていかなければならないと改めて考えさせられました」と語りました。山岸佐知子副委員長も「子どもたちは大人の背中を、思っている以上に見ているんですね。私たちはもしかしたら、一人ひとりがロールモデルであるという自覚をしていく必要があるのかなと思います」と認識を新たにしました。
JSPOの品治さんからは、「スポーツハラスメント」(スポハラ)という言葉で、スポーツ界の暴言・暴力が存在することと、その防止の努力が多くの競技で呼び掛けられていることが紹介されました。JVAの新聞広告はバレーボール界で大きな反響を呼び、選手と指導者の関係の見直しが広がるきっかけの一つとなったそうです。その事実を受けてパネリストは一様に、改めてスポーツ界にスポハラが存在してしまっている認識と、その撲滅、そしてリスペクトの精神を広める必要性を共有しました。
最後に、今井委員長が「いろいろな団体が多くのことに取り組んでいます。それぞれが取り組んでいることを集めて、知見を共有していくことは有用だと感じました。そして子どもたちの声を聞くことの重要性はすごくあると私たちも思っています。今日提示した以外にもたくさんの意見が届いています。それを読み込んで、施策や改善へとつなげていきたいと思います」と意気込みを語り、「同じ関心を持った人を増やしていくことが大事。全国でスポーツに関わるさまざまな方と情報を共有し、仲間を増やしていくことで必ず変えられると思っています。今後もご協力よろしくお願いします」と締めくくり、本年度のシンポジウムは閉幕しました。
コメント
田嶋幸三 JFA会長
私たちの精神は、「フットボール・フォー・オール」、すべての方にサッカーをやってもらい、関わって、見てもらいたい。そして、「アクセス・フォー・オール」。障がい者から老若男女、誰もがスタジアムやトレーニング場でサッカーに関われるという活動を、これからもさらに推進していきます。スポーツ、サッカーで日本を変えていきたい、世界一平和な国にしたいという気持ちを持って、リスペクトの精神を広めていきます。
パネリストコメント
品治恵子 氏(公益財団法人日本スポーツ協会 インテグリティ推進部インテグリティ推進課)
われわれは「NO! スポハラ」と声を上げてほしいとどんどん言っていますが、それだけではなくならないと思う方もたくさんいるのではないかと思います。しかし、小さい積み重ねだとしても言い続けてやっていくことが、遠回りのようで一番の近道だと思います。これからも意思を持って続けていきたいと思っているので、今回の参加者の皆さんにも努力いただければと思います。
灰西克博 氏(公益財団法人日本バレーボール協会 業務執行理事 指導普及事業本部長)
バレーボールだけではなく、他の競技団体も同じような悩みや課題を抱えていると、今回のシンポジウムで改めて認識できました。このシンポジウムで示された「見て見ぬふりをしない姿勢」の周知徹底や、しっかり声を上げられるウェルフェアオフィサーの設置は、非常に大事だなと感じました。こうした姿勢の重要性を、言い続けていかなければならないと感じました。
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