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vol.018 勝者を称えるという光栄

2013年07月19日

 参議院議員選挙の投票日を今週末に控え、立候補者は連日各所で演説を行い、有権者に対して自身への投票を呼びかけています。メディアでも選挙の行方について毎日のように取り上げられ、選挙アナリストによる様々な結果予測は枚挙に暇がありません。

 そんな選挙の後に残るのは、当選した人と落選した人。「勝者」と「敗者」です。選挙にかぎらず、競争の後には必ずこの両者が生まれるのですが、そんな時にお互いを称えるということは実はなかなか難しいもの。今回は敗者が勝者を称えるというまさにリスペクトが体現されたエピソードについてご紹介します。

 「2011年7月18日」

 日本サッカー史に刻まれる快挙が達成された日。そう、なでしこジャパンがドイツの地でPK戦の末アメリカを破り、日本サッカー史上初のFIFAワールドカップ優勝を決めた日です。

 優勝の瞬間を目撃し、多くの日本国民が歓喜しました。同年3月11日の東日本大震災で被災された人々を勇気づけ、元気づける出来事ということもあり、連日連夜にわたってスポーツの枠を超える扱いで伝えられた報道は皆さんの記憶に新しいところではないでしょうか。

 さて、そんな優勝の熱狂が冷めやらぬ中、ある人物から日本サッカー協会に一本の電話がかかってきます。

 「優勝したなでしこジャパンに会ってぜひお祝いの意を表したい」

 こう伝えてきたその人は、ジョン・ルース駐日米国大使でした。

 つい数時間前に世界一を決める大会の決勝戦で敗れた相手国の選手たちを駐日全権大使としてぜひお祝いしたい———。

 選手をはじめとするアメリカの人々は、敗北が決まった瞬間、まさに打ちひしがれる思いだったでしょう。優勝候補の筆頭であるアメリカ女子代表チームは、圧倒的な力で勝ち進み、日本が相手となる決勝でも当然勝利を収め過去最多となる通算3度目の優勝を飾るだろうと多くの人が信じていたことだと思います。それ故、優勝が達成されなかったという落胆は想像に難くありません。

 このことはスポーツの熱心なファンであるルース大使ももちろん例外ではなかったはず。それにも関わらず「少しでいいのでぜひともお祝いさせてほしい」というご本人からの熱心な依頼に、首相表敬直前というタイトなスケジュールではありましたが、なんとか時間を設けて大使をお迎えしました。

 非常に短い時間ではあったものの、ルース大使はすべての選手と握手を交わし、お祝いの言葉をかけられました。そして、その後に行われたメディアからの取材に対し、大使はこのように述べられます。

 「ひとりの熱心なスポーツファンとして決勝戦にくぎ付けになりました。米国代表チームを懸命に応援しましたが、結果として米国チームはなでしこジャパンの勝利への意欲を上回ることはできませんでした。チームのメンバーにお会いして接戦の末の勝利をお祝い申し上げることは、私にとって大きな名誉です」

 敗者として勝者を称えることが出来るのは光栄であり名誉なことである。

 これは全てに当てはまることではないかもしれません。特に、現代の厳しい競争社会においては、勝つことこそが全てという世界も多くあることだと思います。しかし、そんな社会であるからこそ、勝者を称える場面を当たり前のように見られるというスポーツの素晴らしさがより鮮明に浮かび上がってくるのもまた事実であり、大切にしなければならないことなのではないでしょうか。

 日常生活のいろいろな場面でこんな光景を見ることが出来るようになれば、リスペクトの輪はもっと広がることでしょう。リスペクトF.C.JAPANのメンバーの皆さん、そんなスポーツ文化の醸成を目指してぜひ一緒にリスペクトの普及を進めていきましょう!

 

 

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