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ウェルフェアオフィサー研修会 ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.77~
2019年03月26日
2016年11月20日と27日にそれぞれ東京都(JFAハウス)および大阪府にて、ウェルフェアオフィサー研修会を開催しました。地域や都道府県サッカー協会(FA)、また各種連盟のウェルフェアオフィサーとその候補者にご参加いただきました。
差別・暴力問題を未然に防ぐための啓発活動や顕在化した問題への対応は、日本サッカーにとって非常に重要であり、しっかりと取り組んでいかなければならない課題です。この課題解決の方策の一つとして、昨年ウェルフェアオフィサー制度を立ち上げ、認定研修会を開催しました。
JFAでは、「サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献する」と理念を掲げています。この理念にまい進するため、ビジョンを掲げ、バリューも確認しています。そして、「関わりのあるすべてを大切に思うこと:リスペクト」は、日本サッカーのバリュー(価値)です。ウェルフェアオフィサ制度はそれを推進する一つのすべであり、大きな柱です。
「ウェルフェア」とは、幸福、快適な生活、福利を意味し、サッカーを楽しむサッカーファミリーの安心・安全を守る担当者が「ウェルフェアオフィサー」です。2015年9月のJFAリスペクトフェアプレーシンポジウムで研修会を行い、地域や都道府県FA、連盟の皆さんにウェルフェアオフィサーになっていただきましたが、今回は2015年に認定されたウェルフェアオフィサーのリフレッシュと同時に、新たにウェルフェアオフィサーになる方の認定研修会として開催しました。
研修会では先進的な事例として、全県の4種チームの代表者等を集めてクラブ・ウェルフェアオフィサー研修会を5回開催した静岡県からのプレゼンテーション(20日は静岡県FAの竹山専務理事、27日は東海FAの入江理事が登壇)があり、クラブにおけるウェルフェアオフィサーやポジティブな指導の重要性などについての話をお聞きしました。研修会の開催前にウェルフェアオフィサー(マッチ、クラブ)の整備状況について、各FA等にアンケートをとったところ、制度ができてから1年にもかかわらず、34%が進展していると回答。それに対して、全く進んでいない(19%)を含め、進展が低いFA等は66%でした。また、ウェルフェアオフィサーの役割、位置付けなどがまだ明確ではないとの意見もあったことから、再度ウェルフェアオフィサーについて説明するとともに、各FA等におけるウェルフェアオフィサー制度の現状と取り組み、成果や効果、課題、今後の進展方策をテーマに、グループディスカッションなどを進めていきました。
さらには、手始めにマッチ・ウェルフェアオフィサーの設置から始めることが容易ではないかとの意見も多く寄せられたことから、山口隆文JFA指導者養成ダイレクターに再度マッチ・ウェルフェアオフィサーの活動、役割について説明いただき、いかに“気付き”を伝えるのかについて学ぶことができました。
研修会では、マッチ・ウェルフェアオフィサーの活動を行うためには研修が必要ではないかとの意見もいただきました。例えば、大会前にマッチ・ウェルフェアオフィサーをしていただく方に1時間程度のインストラクションを行う、あるいはすでにウェルフェアオフィサーを経験したことのある方と一緒に試合でOJTを行いながら研修をしつつ、より多くの方が関わるというのも良いと思います。また、山口ダイレクターの話の中で、関東大学サッカーリーグで学生によるマッチ・ウェルフェアオフィサーの設置で、年長の監督に対しても“気付き”を伝えられたという好事例も紹介されました。まさにウェルフェアオフィサーの本質です。
予算の問題などまだまだ解決していかなければならないことは多々ありますが、研修会に参加された多くの方がリスペクト・フェアプレーに関する各FA等における課題を認識し、解決について何らかの行動をとらなければならないと意欲を示されました。まずは、多くの大会や試合でマッチ・ウェルフェアオフィサーを設置し、少しでもより良いサッカー環境が整備できればと思います。
ウェルフェアオフィサーが設置され、その活動が活発になったとしても、そう簡単に大会や試合、クラブ内あるいはFA等におけるリスペクト・フェアプレーに関わる課題が解決されるわけではありません。しかしながら、まずは課題解決のために、ウェルフェアオフィサーを推進する必要があります。JFAとしても、マッチ・ウェルフェアオフィサーマニュアルを含むウェルフェアオフィサー活動推進のためのさまざまな準備をしていきます。
JFAのみならず、今回研修会に参加されたウェルフェアオフィサーを含め、サッカ界としてリスペクト・フェアプレー活動を主体的に推進し、1年後には“進んでいる”の34%と“進んでいない”の66%が逆転し、数年後には100%となり、FA等でウェルフェアオフィサー活動が積極的に推進できるようにしたいものです。
「サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献する」、それを“サッカー”は実現していかなければいけませんし、実現できると思います。
ウェルフェアオフィサーの整備状況
※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2017年1月号より転載しています。