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2019年JFAウェルフェアオフィサー研修会報告 ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.95~
2020年05月07日
ウェルフェアオフィサー(WO)制度は、2015年9月のWOジェネラルの研修会を皮切りに設置された。その認定研修会は、47都道府県サッカー協会(FA)と連盟から各団体でリスペクト(大切に思うこと)・フェアプレーを主体的に推進する方など69人の参加を得て、東京都・JFAハウスで開催された。
その後、参加者の利便のため、東京都と大阪府での開催となったが、さらに進み、2019年から9地域での開催とした。参加しやすさを提供した結果、2019年度は新規の145人を含めた計271人のWOジェネラルの認定をさせていただいた。
もっとも、各地域やFAなどの考え方はまちまち。FAにWOジェネラルを1人置き、リスペクト・フェアプレーを統括的に推進する考え方がある一方、FA内に複数人のWOジェネラルを設置したり、FA内の地区や種別を管理・運営する委員会などにWOジェネラルを設置したりして、広く対応する方法もある。後者は「伝言ゲーム」となってしまい、WO活動の手法などが変わっていく危惧もあるが、リスペクト精神溢れる多くのWOがリスペクト・フェアプレーを広く促進していただけるという利点もある。
研修会の午前中は、新規の方々にWOジェネラルにとって必要な知識を習得していただいた。「リスペクト・フェアプレーとプロジェクトの推進」「指導現場における暴力・暴言の発生とウェルフェアオフィサー制度(WOジェネラル、マッチWO、クラブWO)」「暴力根絶相談窓口の概要と相談があった場合の対応手順」についてなどである。そして、午後はリフレッシュ研修会。午前から受講している新規の方々は1日仕事となったが、すでに認定されている方々にも加わっていただいた。
研修会の内容は、アンケートの集計から各組織におけるリスペクト・フェアプレー活動の概要の紹介に始まった。18FA、1地域FA、4連盟が独自に暴力・暴言等根絶相談窓口を設置しているが、その概要、また設置していない団体で通報を受けた場合の対応についても紹介した。その後、最近の日本サッカー協会(JFA)の窓口の対応について、多くの事例も交えて説明した。
世の中で、スポーツ界における暴力・暴言根絶への関心が高まったことから、2018年には120件の相談があったことについて大きな関心が寄せられた。相談内容を分析し、事案の削減へ不退転の決意での対応が求められる(なお、2019年は11月末時点で229件の相談が寄せられた)。
マッチWOの活動のガイドライン(案)も説明した。具体的には、試合中の指導者などの行動の観察、試合前のあいさつや試合後の指導者への気付きの伝え方。また、2019年に競技規則が改正され、主審がチーム役員に「注意」という懲戒処分を与えることができるようになったこともあり、主審が気付きにくい指導者からの暴言を審判員に伝える手段も紹介した。このガイドラインを用いて、より多くの方々にマッチWOになっていただき、これまで以上にWO活動を推進していただければと思う。
ディスカッションのパートでは、「マッチWOとしての気付き」「気付きの伝え方」について話し合ってもらった。真剣な議論から、われわれが想定した観点を大きく上回るアイデアが出されたので、今後さまざまな形で紹介していきたい。
なかなか良い答えが出なかったのは、「WOの気付きが伝わらない人(指導者)に対してはどのように行動しますか」との問いであった。敗戦で気が高ぶっている、そもそもマッチWOの話を聞きたくなく、“馬の耳に念仏”の指導者に気付きを伝えるのは難しい。何か良いアイデアがあれば、ご教示いただきたい。
2つ目のテーマは、「リスペクト・フェアプレーが広まるために、あなたは主体的にどう行動しますか」「主体的に行動してもらうために、あなたはどういう行動をしますか」というもの。リスペクト・フェアプレーの考え方を広め、本当にそれが「日常」にあるような状態にするためには、啓発だけでは十分ではない。サッカーに関わる誰もが、個人として、また組織として、リスペクト・フェアプレーの行動をする必要がある。サッカーにとって最も大切であるリスペクト・フェアプレー。WOジェネラルと活躍される参加者によるリスペクト・フェアプレーの実践を宣言していただいた。非常に心強い。
もっとも、WO制度が中途半端な立ち位置となっている。JFAとして研修時間や教本の内容を確定し、明確なカリキュラムの下でなければ、FAレベルでは推進していかないといった意見もいただいた。2020年は、クラブWOをも含め、研修プログラム、認定プロセス、そして活動のためのガイドラインをテキストとして配布できるようにしたい。
【報告者】松崎康弘(JFAリスペクト・フェアプレー前委員長)
※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2020年1月号より転載しています。
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