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リスペクト・フェアプレーを推進する大会、そしてセーフガーディングについて ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.107~
2022年04月05日
第25回フェアプレーカップ
2021年11月27日、山岸佐知子JFAリスペクト・フェアプレー委員長に同行して、千葉県成田市にある三里塚FCが主催する「第25回フェアプレーカップ」を視察した。この大会の趣旨は、近隣のU-11のクラブを招待し、参加クラブの交流とともに、リスペクトやフェアプレーの啓発・推進を行おうというもの。1996年から毎年行われている(2020年は新型コロナウイルス感染拡大のため中止)が、当時の天皇杯全日本サッカー選手権大会などでフェアプレーが表彰の対象になっていることを知り、「フェアプレー」という名称を“勝手に”使わせてもらって開催することになったそうだ。
三里塚FCは、「楽しいサッカー」「考えるサッカー」「挑戦しよう」をクラブの基本としている。子どもたちが将来にわたってサッカーが好きで、その気持ちを持ってプレーできるようにとの思いに加えて、試合の勝敗のみにこだわることなく「自分の考えで試合展開が判断できる」、そして「何よりもサッカーが好き」という子どもたちを育てている。
1984年のクラブ創立時には、まだ「リスペクト」という言葉が浸透していなかったが、当時からその考え方はクラブの基本的な理念にあり、この大会でもリスペクトのバナーが掲示されていた。また、選手は常日頃から、ユニフォームの袖にリスペクトのワッペンを張ってプレーしている。
もちろん三里塚FCのみならず、このフェアプレーカップに参加するクラブの全てがリスペクトの精神や考え方の下、プレーしていたのは言うまでもない。大会に参加したクラブのキャプテンはリスペクトのロゴが入ったキャプテンマークを着用して、チームを引っ張っており、また選手一人一人が一生懸命にボールを追いかけていた。とてもうれしい。
JFAセーフガーディングポリシー
11月18日、日本サッカー協会(JFA)は、これまで以上に子どもたちを守るために「JFAセーフガーディングポリシー」(https://www.jfa.jp/respect/safe_guarding.html)を策定した。
子どもたちがサッカーやスポーツを安心・安全に楽しむ権利とその環境を守り、より良いものとするために、サッカーに関わる全ての人々が順守する指針。サッカーファミリーにとって、よりどころとなるものである。ポリシーの基本原則は4つ。「子どもたちの安心・安全を守る」「ゼロ・トレランス〜私たちは許さない」「そのためにも」「そしてこれは」。子どもたちを守るための環境の整備、絶対にあってはならない暴力・暴言などの排除、そのために何をすべきか、そしてサッカーファミリーにとってのポリシーの在り方などである。
「セーフガーディング」の考え方は、子どもたちのみならず、大人であってもその状況における弱者を守ること。具体的に、暴力・暴言やいじめ、虐待などの未然防止(環境の整備)と、発生時に対応するためのものだが、JFAのポリシーは特に前者に重きが置かれている。加えて、「子どもたちをエンパワーするために」とサブタイトルがついているように、「子どもたちを守り、エンパワーする(本来持っている潜在能力を引き出し、自信、力を持たせる)」ことに目を向けている。
クラブでのセーフガーディング
「JFAセーフガーディングポリシーができたので、三里塚FCでもポリシー推進のための勉強会(ワークショップ)をやりませんか」と問い掛けてみたところ、開催にポジティブな答えが返ってきたのだが、「そもそもセーフガーディングって何ですか」という素朴な質問をいただいた。
それはそうかもしれない。ポリシーの考え方は、これまで日本サッカーが推進してきたリスペクトやフェアプレーの考え方を基本としているため、まずは各クラブがそれぞれ行ってきたことを継続していくことなのだろう。しかし、もっと広く、そしてもっと深く浸透させて、サッカーファミリーの皆さんが安心して安全にサッカーを楽しみ、また子どもたちをエンパワーさせていくためには、ポリシーがまずはクラブレベルで推進されなければならない。JFAはもとより、各地域・各都道府県サッカー協会や各種連盟の力を借りて、誰もが意識・行動できるようにしていきたい。
成田市三里塚。かつて成田空港を巡っての闘争が繰り広げられたが、その後は終息し、相手を大切に思う共生の地になっている。三里塚FCのグラウンドも「共生グラウンド」と呼ばれていた。フェアプレーカップの継続的な開催と近隣クラブとの連携の下、これまで以上にリスペクト・フェアプレーを推進していってくれるのだと思う。
【報告者】松崎康弘(JFAリスペクト・フェアプレー委員)
※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2022年3月号より転載しています。
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