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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第20回 壱岐洋治 モンゴルU-14女子代表監督

2016年09月14日

アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第20回 壱岐洋治 モンゴルU-14女子代表監督

アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。第20回は、モンゴルサッカー連盟(MFF)でU-14女子代表監督を務める壱岐洋治氏のレポートです。

モンゴルでの暮らし

2月中旬、仙台からチンギスハーン空港に着陸し、生まれて初めてモンゴル国に足を踏み入れました。北国育ちで寒さに慣れているとはいえ、マイナス30度を体感し、さすがに足がすくむ思いでしたが、宿舎及びMFFの敷地内にある室内フットサル場等の建物室内は暖房完備で、3週間ほど経つと寒さにも慣れました。モンゴルは面積が日本の約4倍あるものの、人口は約300万人。そのうち、約半数の150万人が首都ウランバートル(海抜約1300m)に居住しています。遊牧民がのんびり暮らしているモンゴルのイメージとはかけ離れ、この街には近代的高層ビルが林立しており、近代的都市に成長している様子がうかがえます。6月から8月は湿気もなく、日本の北海道を髣髴(ほうふつ)させるような爽やかな気候が続き、実に快適な生活を送っています。

モンゴルのサッカーについて

男子は想像を超える高いレベルにあり、10チームある国内のトップリーグ(そのうちウランバートルを拠点とするクラブが9チーム)は5月から9月の期間、2回戦リーグ制で行われています。日本人も10人程度プレーしており、顕著な活躍を見せているチームもあります。女子は、日本と比較して選手人口が極端に少ないのが現状です。私の役職は「U-14女子代表監督」ですが、その年代の選手たちを幅広く指導しています。選手たちは明るく純真。練習中は喧嘩していても帰りは一緒に仲良く帰り、後に引きずらない爽やかさがあります。個人スポーツである格闘技を得意とするお国柄か、チームスポーツは発展途上のようです。サッカーの技術面では、ボールを正確に「蹴る・止める」が出来ていない選手が多いため、サッカーの基本の体得や組織プレーの重要性を粘り強く指導しています。また、周囲の人への気配り、挨拶、環境の美化、チームとしての約束事項の遵守など、サッカー以前の心配りも随時強調しながらトレーニングを行っています。

宮城キャンプを実施

8月12日から21日までの10日間、宮城県松島フットボールセンターを拠点にキャンプを行いました。この日本遠征が5月下旬に正式決定し、「6月下旬に渡航メンバー20人を発表する」と言った途端、休みがちな選手も眼の色を変えて真剣に練習に取り組むようになりました。今回行った練習試合は全部で7試合(聖和学園女子、常磐木学園女子、仙台育英学園女子の1年生等)、戦績は1勝6敗でした。多くのゲームは大敗でしたが、選手たちにとっては「百聞は一見に如かず」で、レベルの高い宮城の女子チームの流れるようなパスサッカーと直接渡り合い、一同驚嘆の溜息ばかりでした。

サッカー以外の交流プログラムも数多く行いました。宮城県庁、松島町役場、河北新報社への表敬訪問、松島湾遊覧、海の杜水族館見学、仙台でのショッピング等、選手たちは大いに満喫していました。特に、海水浴では大人も含めて大はしゃぎ。海が無いモンゴルの子供たちにとっては貴重な体験となったようです。

日本三景の一つである風光明媚な松島で行われた今回のキャンプは、モンゴルにはない美しさや静かさに、チーム一同羨望の眼差しを向ける日々でした。また受け入れて下さった宮城県サッカー協会、フットボールセンター、対戦相手の全ての方にご協力、ご支援そして親切なおもてなしをいただき、チーム団の誰もが心から感謝の念を口にしていました。

モンゴルサッカー発展のために

40年前、私は茨城県の鹿島ハイツで日本サッカーの父であるデットマール・クラマー氏によるユース年代の指導者研修会に参加し、そこで多くの感銘を受けました。その中で、特に基本の重要性を力説していたのが今でも鮮明に脳裏に残っているのです。今現在、そのクラマー氏の研修内容がモンゴルでの指導においても最適であることを実感しています。基本をしっかり身につけさせること。戦術面においては、「教えること」「考えさせること」の区別です。今後の目標は、基本技術の更なるレベルアップと状況判断の能力向上、さらに、ゴールキーパーやディフェンダーからビルドアップしたパスサッカーの展開に重点を置いて、モンゴル人の特性を生かしつつ、日本から学ぶべき点を融合させ、この国における女子サッカーの礎作りと全体のレベルアップに貢献することです。MFFとしては、2018年のアジア大会における女子代表チームの初参加を目指し、そこで強豪国と対等に戦えるようになるのが目標です。

モンゴルと日本の架け橋として

私が日本で所属している「宮城フェニックスサッカークラブ」(60歳以上のシニアチームで会員数が約150名)が、8月29日から9月3日までモンゴル遠征を実施しました。伊藤孝夫団長(86歳)、西巻四郎監督(85歳)以下総勢15名(平均年齢73歳)がはるばるこの国まで渡航し、ウランバートル選抜O-60(60歳以上)、私が指導するモンゴル女子U-14代表、そしてモンゴル日本人会チームと計3試合を行いました。全て敗戦したものの、在モンゴル日本大使館、JICA事務所、モンゴルオリンピック委員会、MFFへの表敬訪問や乗馬体験等と、有意義な海外遠征となりました。ジュニアからシニアまで幅広い年代において、モンゴル-日本間の草の根交流も今後も積極的に取り組んでいきます。

JFA公認海外派遣指導者

壱岐 洋治 U-14女子代表監督

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