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アジアのピッチから~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第25回 埴田淳 ブータン代表GKコーチ
2017年03月02日
アジアの各国で活躍する指導者達の声を伝える「アジアのピッチから」。第25回は、ブータン代表のGKコーチを務める埴田淳氏のレポートです。
ブータンでの暮らし
私の住んでいるブータンの首都ティンプーは、標高2400m、気温は日本とほぼ同じ、日中は日差しがとてもまぶしいです。10月中旬から乾季に入り、3月までほとんど雨は降りません。ブータン人は世界一辛いもの好きと言われています。インドに隣接しているため、カレー料理や唐辛子を使ったメニューも多いのです。この辛さには徐々に慣れてきましたが、未だに慣れないのが野犬の多さ。肉屋の前の犬は特に凶暴で注意が必要です。鉄道がないため、交通網はバス、タクシー等の車が中心ですが、信号が無いので優先順位付けに日々苦労します。宗教はチベット仏教が多く、その影響を様々な場面で感じます。
ブータン協会の隣にはアカデミーの寄宿舎があります。今年は、U-19、U-17 、U-16 の3カテゴリー計60名弱の選手が生活を共にし、隣接する人工芝の練習場で、学校前と放課後の2部練習を行っています。代表(トップチーム)の選手は、プロ選手が数人しかいないため、ほとんどの選手は仕事や学校の帰りに練習を行います。
女子のアカデミーは、ティンプーから南に9時間離れたインドとの国境であるゲレフという街にあります。
あらゆるカテゴリーのGKを指導
アカデミー生には、基礎・基本を中心に指導しています。ボールが来る前の準備と判断を徐々に組み込んで、GKを中心にDFを組織出来るようにすることを目標とし、自分自身で何が必要かを分析しトレーニングを組めるように促しています。その理由は2つ。ひとつは、私が代表や女子代表に帯同しアカデミーを不在にしている間でも、こちらが組んだメニューや自分たちで考えたトレーニングを選手たち自身で行い評価できるようにすること。ふたつめは、未来の代表選手になるだけでなく、その先コーチとしてもブータンサッカーに貢献できるような人材を育成する狙いです。
代表の選手たちには、対戦相手に合わせて要求するドイツ人監督を中心に、ゲームを意識させた中での技術・判断の向上に取り組んでいます。ブータン人は日本人と同じくらいの身長で、他の国と比べるとお世辞にも大きいとは言えません。前回のバングラデシュ戦前は、クロス、ロングボールを多用してくる相手なのでその対応に多くの時間を割きました。
昨年10月から代表監督はドイツ、女子代表監督は韓国、アカデミー監督とGKコーチは日本からと、外国人スタッフが多く関わっています。ブータンの比較的ゆったりとした国民性と暮らしぶりの中において、規律の面が厳しく言われるようになり、練習に遅刻したり無断欠席する選手はいなくなりました。また、アカデミー選手自らが自主練習をするなど、意識面はかなりの変化が起こっています。私が赴任するまでGKコーチが不在だったため、GK専門のトレーニングができる喜びがあるようで、GKトレーニング中にクラブチームのコーチが見学に来ることもあります。
現在の取り組みと目標
年末にインドで開催された南アジア(SAFF)女子選手権では、ネパールに0-8、モルディブには1-3と二敗という結果でした。とは言え、ブータン女子代表の平均年齢は17歳と若く、これからのチームです。次回のSAFF女子選手権ではさらにレベルアップできるようにトレーニングしていきます。大会期間中、同じくJFAから派遣されている武田千秋さん(ネパールサッカー協会技術委員長)や河本菜穂子さん(モルディブ女子代表監督)とお会いし色々な話ができました。南アジアの地域では、男女ともにインドとネパールが少し抜きん出ている感があります。国それぞれの文化、宗教の違いはあるものの、サッカー育成、強化の部分やハード面は類似していると感じました。特にブータンの女子に関しては、様々な理由から国際親善試合の機会がなく強化に苦労しているのが現状です。
U-19は現在ブータン国内のティンプーリーグに参戦中です。少しでも良い順位でシーズンを終われるよう日々努力しています。U-16は、9月に行われるAFC U-16選手権の予選に向けて準備中です。現在U-19と合同でトレーニングを行っており、3月にスリランカで行われる国際親善試合に参戦します。そこでのスリランカ、ネパール、日本との対戦を通じて、我がチームの今の立ち位置がわかると考えています。そして、代表は、3月28日(火)から始まる、アジアカップ最終予選突破が目標です。オマーン、パレスチナ、モルディブが同グループですが、モルディブはニ次予選でも同グループで2試合とも僅差で負けているため今回は是非リベンジしたいと思います。
2015年3月にFIFAランキング最下位を脱したブータン王国ですが、関係各所と協力しながら更なる発展を目指します。
JFA公認海外派遣指導者
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