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【海外派遣指導者インタビュー】「気持ちは伝わる」大友麻衣子チャイニーズ・タイペイ女子代表GKコーチ
2020年06月11日
日本サッカー協会(JFA)はサッカー日本女子代表の強化に取り組み、すべてのカテゴリーのFIFA女子ワールドカップで優勝を果たしてきました。また、2023年のFIFA女子ワールドカップの招致や来秋にWEリーグ(女子プロサッカーリーグ)が開幕するなどさらなる発展の時を迎えています。一方で、1992年から多くの指導者を海外に派遣し、チームや選手、審判員の育成・強化に尽力しています。ここでは現在、チャイニーズ・タイペイで女子代表GKコーチを務める大友麻衣子コーチに指導者になったきっかけや今後の目標について聞きました。
※このインタビューは5月29日(金)にウェブ会議システムを利用して行いました。
――指導者になった経緯を教えてください。
大友 現役引退を決めた直後に「子どもたちのスクールで指導してみないか」というお話をいただいたのがきっかけです。1年間、小学生を指導し、成長していく過程を見られるのがすごく楽しかったのですが、引退直後でまだ体も動くのでもう少し上の年代を教えたいと思い、尚美学園大学のGKコーチに着任しました。尚美学園大学には5年ほどいましたが、私が用意したメニューをものすごく一生懸命やってくれて、「それだけできるなら私もこれだけ準備するよ」という相乗効果があり、指導した選手がリーグ戦で最優秀GK賞を受賞しました。
――2019年にチャイニーズ・タイペイのGKコーチに就任されます。その経緯を教えてください。
大友 一度サッカーから離れたいと思って大学をやめたのですが、すぐにJFA関係者から「こんな話があるんだけどやってみない?」と連絡をいただきました。海外での指導に興味を惹かれ、「私でよければやってみたいです」と返答しました。ちょうど東京オリンピックのアジア2次予選が始まるタイミングで、「1カ月間、オリンピック予選だけ」という契約でした。
――指導面や生活面で苦労したことはありますか?
大友 まずは言葉ですね。中国語は未経験だったので、コミュニケーションは大変でした。生活面は、その1カ月間は遠征続きでずっと台湾にいたわけではないので、そこまでではなかったです。
――最初の1カ月を終えた後、契約が延長された経緯を教えてください。
大友 チームを率いる越後和男監督から「引き続きGKコーチを担当していただけませんか?」と誘っていただいて。1カ月間しか一緒にやっていない中で評価していただき、私も選手のことをもっと知りたい気持ちが芽生えていたので「ぜひやらせてください」と返答しました。
――契約延長後、日常生活や仕事面で苦労はありましたか?
大友 台湾は基本的に外食文化なので、部屋にキッチンがないんです。日常生活時は通訳がいないですし、頻繁に外食や買い物に行くのが最初は大変でした。仕事面では、昨年は国外遠征が多く、国内合宿も平日だけ集まって週末は解散するという長期合宿を数カ月間やりましたが、私自身も初体験のスタイルだったので、休日もゆっくりできませんでした。
――チャイニーズ・タイペイでの指導を経験し、指導者としての成長を感じる部分はありますか?
大友 成長とは少し違いますけど、チャイニーズ・タイペイはGKコーチ自体が少ないので、いろいろなチームや地域から「教えに来てください」という連絡をいただきます。実際に訪問して「来てくれてありがとう」と言っていただけるのはうれしいですし、必要とされている感覚はすごくあります。
――今後の夢やプランはありますか?
大友 指導している中で自分の知識不足、勉強不足を感じているので、日本に帰ってからもう少し勉強して、海外で指導した経験を生かしながら指導者を続けたい気持ちがあります。
――FIFA女子ワールドカップの招致や来秋のWEリーグ開幕など、日本女子サッカーも変革の時を迎えています。日本女子サッカーがさらに発展していくために、何が必要だと思いますか?
大友 プロ化されればサッカーに懸けなければならない人が増えてくるでしょうし、そうやってサッカーに打ち込める環境をつくっていただけること自体が幸せなことで、今後の発展にもつながると思います。
――最後に、日本で働く女性の方々へのメッセージをお願いします。
大友 やめたいと思っていた時期もありましたけど、結局サッカーが好きで続けているので、やっぱり大事なのは気持ちなのかなと思います。うまく言葉にできなくても伝わるものはありますし、私の場合は言語で伝わらなくても熱意だけは選手に伝わるので、何事も信念や気持ちが大事だと思います。