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オリンピックイヤーの幕開け【コラム】 田嶋幸三の「フットボールがつなぐもの」vol.12
2020年01月01日
東京オリンピックからFIFAワールドカップ最終予選へ
新年明けましておめでとうございます。
日本サッカーの2020年は、新しくなった国立競技場で開催された、ヴィッセル神戸と鹿島アントラーズの天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会決勝で幕を開けました。日本サッカーの冬の風物詩とも言える天皇杯。国立競技場での決勝は実に6年ぶりです。試合は、ヴィッセル神戸が2-0で勝利し、令和初の天皇杯優勝チームとして新たな歴史を刻みました。
この一戦は、新・国立競技場のこけら落としであり、東京2020オリンピック競技大会のテストイベントとして実施されました。超満員の観客で盛り上がる国立競技場にオリンピックが近づいていることを実感し、身の引き締まる思いがしました。
日本人にとってオリンピックは特別な大会です。特にサッカーなど団体スポーツが勝つことで注目が集まり、一大ムーブメントとなります。ましてや自国開催のオリンピック。森保一監督も高倉麻子監督も「金メダル」を視野に強化を図っていますので、U-23日本代表となでしこジャパンが大躍進して日本中を熱狂の渦に巻き込みたいと思います。
U-23日本代表は1月8日からタイで行われるAFC U-23選手権に出場します。日本を除く15チームにとってはオリンピック予選となる大会ですから、例年以上にし烈な戦いが繰り広げられるでしょう。日本は予選を免除されていますが、ここで頂点を目指すことがオリンピックのメダル獲得につながります。結果だけでなく内容にもこだわってオリンピックへの布石にしたいと考えています。
3月からはFIFAワールドカップカタール2022アジア2次予選が再開されます。SAMURAI BLUE(日本代表)がワールドカップ予選を突破して本大会でベスト8以上の成績を挙げることが最大の目標ですから、若手と経験ある選手との融合を図りながら、次につながる日本代表をつくっていかなければなりません。
オリンピックに挑む日本代表チームをしっかりサポートして好成績を収め、今秋から始まるアジア最終予選にシフトさせていきます。
来年はフットサルのワールドカップイヤーでもあり、2月からその予選がスタートします。女子のフットサル代表もAFC選手権が控えています。国内の男女フットサルリーグをさらに発展させるためにも、代表チームが好成績を挙げることが重要です。
ビーチサッカー日本代表は昨年、世界大会で4強入りの快挙を達成しましたが、次の大会はもう2年後に迫っていますので、新たな気持で「世界」を目指していきます。
われわれ日本サッカー協会(JFA)としては、オリンピック、ワールドカップ予選ともにチームが最大限の力を発揮できるようしっかりサポートし、応援してくださる皆さんと共に「新しい景色を」見たいと思います。
女子サッカーの持続的発展に向けたスタートの年
JFAは12月12日、FIFA女子ワールドカップ2023の開催提案書(招致ブック)をはじめとする招致関連の最終書類、開催合意書などを国際サッカー連盟(FIFA)に提出しました。正式に立候補したのは、日本、ブラジル、コロンビアの3カ国と、共催を表明しているオーストラリアとニュージーランドです。
FIFAは2018年、女子サッカーの発展に向けた戦略を策定しました。その中で女子ワールドカップの商業的価値を向上させるとともにクラブチームや各国リーグのプロ化を進め、2026年までに女子プレーヤーの数を全世界で6,000万人に倍増させる計画を打ち立てています。
FIFAはまた、2019-2022年の4年間に100億USドル(約1,080億円)を女子サッカーに投資することを表明。2023年の女子ワールドカップの出場枠も24から36に拡大するなど、女子サッカーの改革を進めています。
ヨーロッパのサッカー先進国も女子サッカーに力を入れており、それが昨年のFIFA女子ワールドカップの成績に大きく反映されました。日本としても世界の潮流に乗り遅れることなく、改革を進めていかなければなりません。
JFAは2023年大会の招致活動と並行して、2021年の開幕を目標に女子サッカーのプロ化を進めています。
東京オリンピック、そして、来年のプロリーグ開幕、2022年の国体少年女子(U-16 )新設、2023年の女子ワールドカップと、これからの4年間で女子サッカーを成長軌道に乗せ、持続可能な女子サッカーの体制を築きたい。そして、世界的にほとんど成功例のない女子のプロリーグを成功させてアジアの女子サッカーをリードする存在になり、プロリーグを起爆剤に女性活躍社会の実現、さらには、アジアにおける女性の人権保護や女性の地位向上につなげたいと考えています。
そういう意味で2020年は、女子サッカーの発展に向けたスタートの年になると言ってもいいでしょう。
来年は女子のU-20、U-17のワールドカップイヤーでもありますので、東京オリンピック、U-20/U-17女子ワールドカップと、3世代で再び世界トップの座を獲得し、日本の女子サッカーの名を歴史に刻みたいと思います。
オリンピックのレガシー
オリンピックイヤーの今年は、日本のスポーツ界にとって極めて重要な一年になります。
世界最高峰のプレーを見た子どもたちがいろいろな競技に関心を持ったり、スポーツとは無縁だった人たちがスポーツ観戦をしたり、運動を始めるなど、スポーツを観たり、参加したりする機会も増えていくでしょう。「スポーツ文化」を醸成するにはまたとないチャンスです。そのためにも、日本代表が強く魅力で、求心力のある存在でなければなりません。
スポーツはまた、地域コミュニティーの醸成や青少年の健全な育成といった重要な役割を果たします。少子高齢化は確実に進んでいますし、AI(人工知能)などの技術革新によって労働時間が短縮されれば、余暇の時間も増え、スポーツ活動も活発になっていくでしょう。また、ダイバーシティやインクルージョンといった概念が広まっていく中で、スポーツの社会的価値も再認識されるはずです。
キッズから高齢者まで、誰もが気軽にスポーツを楽しめる環境をつくること、有能な選手に機会と環境を与えること、サッカーを通じて社会貢献や国際親善に寄与すること――それが我々スポーツ団体に課せられた使命だと考えています。
今年も多くの皆さんがサッカーを安全に安心して楽しめるような環境づくりに力を注ぐとともに、日本代表チームが “Japan’s Way”を体現したサッカーで日本中の皆さんに感動と興奮をお届けできるようレベルアップを図っていきます。
2020年が皆さんにとって素晴らしい一年になりますよう、心からお祈り申し上げます。
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