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【VARを知ろう】ここは知っておきたい!VARの基礎知識

2020年02月21日

【VARを知ろう】ここは知っておきたい!VARの基礎知識

VARとは

2020シーズンから、JリーグでVARが本格導入されることになりました。対象となるのは明治安田生命J1リーグ全306試合、FUJI XEROX SUPER CUPの1試合、JリーグYBCルヴァンカップのプライムステージ全13試合、そしてJ1参入プレーオフ決定戦の1試合、合計321試合です。ルヴァンカッププライムステージやJ1参入プレーオフ決定戦では2019シーズンからすでに導入されていましたが、本格導入に先立ち、改めてVARについて解説していきたいと思います。

VARとは「Video Assistant Referee(ビデオ・アシスタント・レフェリー)」の略称です。サッカーの試合では主審1人、副審2人、第4審判員と4人の審判員がピッチにいるのが一般的ですが、彼ら以外に映像で試合を確認し、判定をサポートする審判員のことをVARといいます。

VARは、2018年、国際サッカー評議会(IFAB)が定めるサッカー競技規則記載の正式ルールとなり、IFABの承認を受けた組織、スタジアムにおいて、ライセンスを取得した審判員によってのみ採用できるようになりました。2018FIFAワールドカップロシアでも採用されています。

VARの役割は、あくまでもフィールド上の審判員(主審、副審、第4の審判員)をサポートすることです。最良の判定を見つけることではなく、「はっきりとした明白な間違い」をなくすためのシステムです。ほとんどすべての人が「その判定は明らかに間違っている」という事象に限り、VARが介入することになります。

判定についてVARが介入するのは①「得点かどうか」②「PKかどうか」③「退場かどうか」④「警告・退場の人間違い」の4つにおいて、「はっきりとした明白な間違い」もしくは「見逃された重大な事象」があった場合となります。この4つのケース以外では、VARが介入することはありません。ピッチ上では主審、副審の立ち位置やプレーのタイミングによって、見間違いや見逃しが発生してしまうことがあります。それらを正すサポートをするためにVARが介入します。

VARの手順と進め方

では、実際にどのような流れでVARが介入するのか、その手順と進め方を見ていきましょう。大前提として、VARはアシスタント・ビデオ・アシスタント・レフェリー(AVAR)やリプレイ・オペレーター(RO)とともにビデオ・オペレーション・ルーム(VOR)で試合映像をモニタリングしつつ、ヘッドセット・コミュニケーション・システムで審判員と交信しています。

どんな試合でも、まずはフィールド上の審判員(主審、副審)が判定を下します。その判定において、上記4つの事象のうちどれかが発生した場合、VARは同じタイミングで映像を活用し、該当シーンをチェックします。アウトオブプレーになった後、VARは事象をチェックしていることを主審に伝え、主審はその間、片方の耳に手を当て、もう一方の腕を伸ばすシグナルで「VARがチェックしていること」を周知します。

そこで「はっきりとした明白な間違い」もしくは「見逃された重大な事象」がなかった場合、VARは主審にチェック完了を伝え、主審はゲームを続行します。

「はっきりとした明白な間違い」もしくは「見逃された重大な事象」の可能性があり、レビューが必要だと判断した場合は、VARが介入してレビューを提案します。主審はTVシグナルをし、VARが介入することを周知します。

映像から事実として確認できる事象の場合、主審はVARからの情報を聞き、その情報を元に映像を確認することなく最終判定を下します(VARオンリーレビュー)。例えばオフサイドであったかどうか、ボールがゴールラインを越えていたかどうか、ファウルが起こった位置がペナルティエリアの中だったかどうか、などの場合です。
一方、主観的な判断が必要な事象については、主審はレフェリーレビューエリアに設置されたモニターで自らリプレイ映像をチェックして最終的な判断を下し(オンフィールドレビュー)、ピッチ上で再びTVシグナルを出した後、その判断を伝えます。なお、日本では主審がオンフィールドレビューを行う際、スタジアムのビジョンにも同じ映像が公開され、観客や選手、ベンチスタッフなども確認できるようになります。

VARは「最小限の干渉で最大の利益を得る」ことを哲学としています。フィールド上で起こるすべての事象に干渉するわけではなく、役割はあくまでフィールドの審判員のサポートです。また、最良の判定を見つけようとするものではなく、「明白な間違い」をなくすためのものです。ある事象を目撃したほとんどすべての人が「その判定は明らかに間違っている」と思う場合以外では、VARが介入することはありません。

用語集

VAR

VARとは「Video Assistant Referee(ビデオ・アシスタント・レフェリー)」の略で、日本では「ブイエーアール」と発音します。少なくとも6カ月間の必修訓練を受けたトップリーグの主審または元主審が務めなければなりません。

AVAR

「Assistant Video Assistant Referee(アシスタント・ビデオ・アシスタント・レフェリー)」の略で、VARやROとともにVORでモニターをチェックし、VARをサポートする役割を担います。VARとAVARを合わせて「VARs」と表します。通常の試合ではVAR1名、AVAR1名で試合を進めますが、ワールドカップなどではAVAR2~3名で行うこともあります。VARと同様に、少なくとも6カ月間の必修訓練を受けたトップリーグの副審/主審または元副審/主審が務めなければなりません。

RO

「Replay Operator(リプレイ・オペレーター)」の略です。VORのモニターで試合映像を確認しつつ、VARの要求に応じて複数台のカメラによる映像の中からチェックに最適な映像をセレクトし、スロー再生やコマ送り再生をして映像によるジャッジのサポートをします。VAR、AVARと同様に定められた必修訓練を受けた者のみが務めることができます。

VOR

「Video Operation Room(ビデオ・オペレーション・ルーム)」の略で、VARsが試合をモニタリングする部屋を指します。VORはスタジアムの中かそば、あるいはマッチセンターに設置することができます。2018FIFAワールドカップロシアではモスクワのマッチセンターにVORが置かれましたが、Jリーグの試合では各スタジアムのそばに設置します。室内には複数のモニターが並べられ、VAR、AVAR、ROが映像をチェックします。
競技者やチーム役員がこの部屋に入った場合、退場が命じられます。

RRA

「Referee Review Area(レフェリー・レビュー・エリア)」の略で、主審がオンフィールドレビューの際にモニターを確認する、白い破線で区切られたエリアです。競技者やチーム役員がこのエリアに入った場合、警告が与えられます。

Q&A

Q:耳に手を当てる主審のポーズにはどのような意味があるの?

A:VARが介入する事象が発生し、VARが映像をチェックしていることを伝えるポーズです。VORからはコミュニケーション・システムを通じて「ディレイ(再開を遅らせてください)」という通達が主審に伝えられ、主審はVARのチェックが終わるまでプレーの再開をストップさせます。特に問題がなければそのままプレーを再開させ、レビューが必要だと判断した場合はTVシグナルを出してVARオンリーレビューかオンフィールドレビューに移ります。

Q:TVシグナルって何?

A:主審が両手で大きく四角を描くことを「TVシグナル」と言います。VARが介入した後、主審がレビューを必要と判断した時に示します。レビューにはVARオンリーレビューとオンフィールドレビューの2種類があり、主審はVARオンリーレビューの「TVシグナル」は1回のみ、オンフィールドレビューの場合はレビューの前後に1回ずつ「TVシグナル」を示します。

Q:TVシグナルを出して、オンフィールドレビューをするケースとしないケースの違いは?

A:オフサイドがあったかどうか、ボールがゴールラインを越えて得点となったかどうか、といった客観的な事実に基づいて判定を下す場合は「VARオンリーレビュー」を用い、VARからの情報のみで主審が最終的な判断を下します。客観的な事実とは「オフサイドポジションにいたか」や「ゴールを割ったかどうか」などを指します。一方、反則の強さはどの程度のものだったか、ハンドの反則が意図的だったかどうかなど主観的な判断が必要となる事象については「オンフィールドレビュー」となり、主審が実際にモニターで映像を確認して最終的な判断を下すことになります。

Q:主審は無線でVARの言うことをずっと聞いているの?

A:主審が常時交信しているのは2人の副審、第4審判員のみです。VARはVORですべてのプレーを監視し、対象の事象が起きた場合に「ポッシブル○○(○○が起きた可能性があります)」と主審に伝えます。○○にはオフサイドやハンド、レッドカードなどが入ります。そしてプレーの流れが切れたときに主審とVARは交信し、主審は必要に応じてVARの助言を聞き入れます。

Q:選手や監督がレビューを要求することはできるの?

A:プロ野球の「リクエスト」やテニスの「チャレンジシステム」とは異なり、判定の介入に権限を持つのは主審だけで、選手や監督がレビューを要求することはできません。試合では選手がTVシグナルをまねてオンフィールドレビューを要求するシーンをたまに見かけますが、競技規則では過度な要求をした場合は警告の対象となっています。
また、選手やチーム役員がRRA(レフェリー・レビュー・エリア)に入ってしまった場合、警告が与えられます。

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