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【SPECIAL】女子サッカー人気と選手の価値~清水梨紗選手(ウェストハム・ユナイテッドFC/イングランド)
2024年04月03日
サッカー選手としても、人としても応援してもらえる存在に
なでしこジャパン(日本女子代表)はパリオリンピック2024 女子サッカー アジア最終予選で朝鮮民主主義人民共和国(DPR Korea)に勝利し、この夏、パリオリンピックに臨みます。同予選に出場した清水梨紗選手に予選を振り返って思うこと、そして日本女子サッカーへの思いとサッカー選手として大切にしていることを聞きました。
※このインタビューは2024年3月20日に実施しました。
試合後に訪れた大きな安堵感
「本当に勝てて良かった」
――なでしこジャパンは、2月のパリオリンピック2024 女子サッカー アジア最終予選を突破し、オリンピック出場権を獲得しました。DPR Koreaとの2試合を振り返っていかがですか。
清水 オリンピック出場が決まったときは、うれしさと同時にほっとしました。私自身は2021年に東京オリンピックに出場しましたが、オリンピック予選は今回が初めてで、ここで敗れていたらオリンピックに出られなかったんだとあらためて考えたとき、自分が思っていた以上にほっとしたんです。実は大きなプレッシャーみたいなものを抱えていたのだと試合後に感じました。ただ、試合前にはあまり意識しすぎず、「いつもと変わらない試合をしよう」と思って臨めたことは逆によかったと思っています。
パリオリンピック2024 女子サッカー アジア最終予選の第2戦、
ホームで勝利してオリンピック出場を決めた後、選手たちはピッチ上で喜びを爆発させた
――ホームゲームとなった第2戦は、国立競技場に20,777人の観衆が駆け付けました。会場の雰囲気はどうでしたか。
清水 とても良い雰囲気で、皆さんの声援に大きな後押しをいただきました。特にゴールが決まった時の盛り上がり、私たちのゴールを一緒に喜んでくださる皆さんがいて、一緒に喜び合えること。あんなにうれしいことはないです。私は今、海外でプレーしていますが、代表チームとして、代表選手として結果を残し、日本女子サッカーに還元したいという思いもあるので、そういう意味でも本当にホームで勝てて喜び合えて良かったと思っています。
大きなプレッシャーをはねのけ、
パリオリンピック行きの切符を獲得した選手たちの喜びと安堵感は試合後の円陣で見せた笑顔からもうかがえる
――現在はウェストハムで2シーズン目を戦っています。WEリーグでのプレー経験もある清水選手にとって、イングランドのウィメンズ・スーパーリーグ(WSL)の違いなどは感じますか。
清水 練習環境はイングランドの方が整っているかもしれません。ウェストハムの女子チームの練習場は、男子のアカデミーと同じ場所で、天然芝ピッチ3面と人工芝ピッチ、屋内施設が備わっていて、そうした環境からもサッカーが地域に根付いていると感じます。チームには選手の栄養やメンタルをケアするスタッフもいます。WSLは毎週どこかの試合がピックアップされてテレビ放送されていますし、大きなスタジアムを使っているチームも多くて、例えばアーセナルの試合は約6万人が入るエミレーツ・スタジアムでもチケットが完売になります。
――そうしたイングランドでの女子サッカー人気はどこに要因があるのでしょうか。
清水 イングランド女子代表が結果を残していることは大きいと思います。2022年のUEFA欧州女子選手権で優勝し、昨年のFIFA女子ワールドカップ(オーストラリア&ニュージーランド)では準優勝しています。代表の活躍が今のリーグの盛り上がりにもつながっているのかなと。テレビで女子サッカーを見る機会が増えたり、駅や電車(車内)でも女子サッカー関連のポスターをよく見かけたりもします。イングランドの日常に女子サッカーがあるのだと感じます。
そうした違いから日本の女子サッカーを考えたとき、なでしこジャパンを魅力的なチームにすることはもちろん、やはり代表では結果を求めていかなくてはならないと思います。
常に100%のパフォーマンスを届ける
ファンとの交流も大切にしていきたい
――女子サッカー選手、プロサッカー選手としての価値を高めていくことも重要になると思います。清水選手が大切にされていることは?
清水 シンプルですが、常に100%でサッカーに取り組むこと。選手としてコンディションに波があることもありますが、それをコントロールして100%のパフォーマンスをピッチ上で発揮することを常に心掛けています。もしかしたら、自分が出場する試合でサッカーを初めて見る人もいるかもしれません。そうした方にも、サッカーって楽しいな、また見に来たいなと思ってもらいたいですよね。そのためにも日々の練習を含め、気を抜かずにプレーしようと自分に言い聞かせてピッチに立っています。
大学卒業後にプロ契約を結んだ清水選手。
「プロとして手を抜かないのは当たり前。でも、仕事をしながらそれを当たり前にできる選手がベレーザにはたくさんいた。
先輩たちのそういう姿を見てきたから今の自分がある」と話す(写真は2021-22 Yogibo WEリーグより)
――ピッチの外でもオンラインミーティングなどでファン・サポーターとの交流を大切にされています。
清水 私は「オンとオフに差がある」とよく言われるので、自分のパーソナルな部分を知ってもらう機会もつくれたらいいなと思ってオンラインミーティングなどをしています。小さなコミュニティーではあるのですが、交流を機に試合を見に来てくれた方や観戦機会が増えた方もいます。もちろん選手として評価してほしい思いはありますが、サッカーをしている自分が好きですし、ありのままの自分を知ってもらい、サッカーを身近に感じて好きになってもらう、という良い連鎖が起きればいいなと。今のなでしこジャパンはだいぶ個性溢れたれた選手が集まっているので、選手一人一人を知ってもらうことが、女子サッカーを知って好きになってもらうことにもつながっていくんじゃないかなと思い、私自身も楽しみながら取り組んでいます。
――国内外から日本女子サッカーを盛り上げていきたいですね。
清水 日本の皆さんには、ぜひWEリーグやなでしこリーグの試合を見てもらって、頑張っている選手たちの背中を押してもらいたいと思います。ファンの皆さんとの交流は、選手にとっても大きな力になるんです。私が日テレ・東京ヴェルディベレーザにいた時は、練習や試合後にファンの皆さんと直接触れ合える機会がありました。コロナ禍ではなかなかそれができなかったのですが、今もそうした交流の場は大切にしていると思うので、WEリーガーを身近に感じてほしいなと思います。
WEリーグやなでしこリーグではファンとの交流を大切にしているクラブが多い。
選手をより身近に感じられることは日本女子サッカーの魅力の一つだ
――パリオリンピックに向けてここからまた準備が始まります。抱負をお願いします。
清水 これまで女子ワールドカップやオリンピックを経験してきて、その度に「次の大会にも出て結果を残したい」と思ってきました。私自分は悔しい思いばかりで、もう二度と同じことを言いたくないと思っています。ですので、パリオリンピックでは金メダルを取って皆さんと喜びを分かち合いたい。代表のメンバー争いも厳しくなってくると思うので、まずは自分がそこにしっかりと食い込むこと、同時に魅力的ななでしこジャパンをつくってパリに向けて準備したいと思います。
SPECIAL
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