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第32回JFAレフェリーキャラバンを群馬県で開催
2017年12月22日
12月16日(土)・17日(日)の2日間、第32回JFAレフェリーキャラバンを群馬県で開催し、審判インストラクターおよび審判員の総勢37名が参加しました。
今回の群馬キャラバンでは、斉藤仁インストラクター(イントレマネジャー)ならびに高橋武良インストラクター(関東レフェリーデベロップメントオフィサー)を中心に事前に群馬県サッカー協会審判委員会と打ち合わせを行いました。打ち合わせを通し、「審判インストラクターの資質向上を目指して」をテーマに指導者と今後指導者として活躍が期待される審判員向けに、チュータリングやアセスメントの手法と実践演習を組み合わせたプログラムを行うことになりました。参加者の性別や経験、年齢も異なる中、グループに分かれた演習では常に笑いが絶えず、和やかで活発な2日間となりました。
インストラクターコメント
高橋武良 関東レフェリーデベロップメントオフィサー/1級審判インストラクター
県内でのサッカーがさかんであり、県を代表して地域や全国で活躍するチームが多くある群馬県で、JFAレフェリーキャラバンを開催しました。参加された方は審判員として活躍しながら、審判員の指導を行っている方が多く、今回のキャラバンで実施したチューターリングとレフェリーアナリシスのプログラムを楽しみながら積極的に参加していただきました。2日間で感じたことは、初めて体験するプログラムに興味があるからというよりは、新しい手法を取り入れて、チームや選手と同じように、あるいはそれ以上に活躍できる審判員をみんなで育成していこうという意欲でした。クロージングで、中村委員長から年明けには、今回のプログラムをいかした審判研修会を企画していきたいとの提案があり、実施に向けて参加者の皆さんが企画を考える姿から、群馬県の審判界に新しい風が吹き、発展していくと感じました。最後に7月から準備をしていただき、開催のためにご尽力いただいたスタッフの皆様に感謝申し上げます。
斉藤仁 イントレマネージャー
本キャラバンの目的を“インストラクターのスキルアップ”と定め、“チューターリング”と“アセスメントからアナリシスへ”という題目を掲げて実施しました。女性4人を含む幅広い層となる約30人が参加し、基本はグループを単位とした構成で進めました。JFAの将来構想やラーニングサイクルの理解、それに繋がる審判指導者トレーニングセンター活動、地域都県との連携の必要性へと進み、チュータ―リングの理論までを午前中に済ませました。午後から眠気避けの「恋するフォーチュンクッキー」から始めましたが、これが熱気の助走となり、手法体験の6ステップ、9ダイヤモンドではグループ討議から意見が飛び交い、発表の段階では指摘や質問が飛び交い、楽しさと盛り上がりの中、熱心で前向きな積極性溢れる雰囲気となりました。初日の最後は学んだチュータ―リングの実践を行いました。グループで企画を組み上げ、その代表が「自ら気付かせる」指導に挑戦しました。フィールドシートの活用、スタンツ的な動きのある取り組み、質問の選択、引き出そうという意識が有りながらスッキリするくらい指導者が教えてしまう実際の進め方のギャップなど、学んだ内容を体験してもらえたと感じました。一所懸命さと真摯さ、それにユーモアある発言と笑いと、予定の時間を超過した一日目が終わりました。
2日目は、新アセスメントレポートの修正の主旨と書き方概論を学びました。その後、映像を見ての個々の分析結果をグループで討議し、視点の差異と見方・感じ方を共有しました。それを基に、試合をスタンドで見ていた1級審判員に当該審判員になりきってもらい、A項の規則の解釈と適用と、D項のポジションと動きに関して、チュータリング手法を活用して10分間で行う試合後のフィードバックを実践しました。審判員役の当意即妙な受け答えもあり、前日同様、真剣で熱のこもった活気あふれる時間となりました。フィードバック毎に意見を出し合い、講師のインストラクターからの気付きをもらい、アセスメントにおけるアナリシスの視点、それをチューターリング手法で審判員の成長に生かすことを相関付けた実践になったと感じました。キャラバンの主旨の一つである審判育成の再構築のきっかけになったことは中村審判委員長の閉会挨拶で明示されました。群馬名物のからっ風を物ともしない、熱く活発な2日間を共有でき、今後の群馬の活発な活動を期待できるキャラバンでした。
審判委員長コメント
中村祐 群馬県サッカー協会 審判委員長
レフェリーキャラバンを開催するにあたり、群馬県としてどのような内容で開催するのが最も望ましいのか。審判委員会で議論を重ねた結果、本県では2級審判員が担当する試合にアセッサーを継続的に派遣し指導を行っているが、試合ごとに単発の指導しかできておらず、次の試合へつながる、シーズンを通した一貫した指導ができていない現状が確認されました。この現状を踏まえて、現場で幅広くアセッサーに協力いただいている「2、3級インストラクター」を対象に絞って行うことが望ましいのではないかとの結論に至りました。キャラバン担当者およびJFA審判部の方々と数回のミーティングを重ねた結果、内容を「チュータリング技術の習得」「映像を利用してのレフェリング分析」の二点に絞って実施することが決定され、開催の運びとなりました。
キャラバン初日は2、3級インストラクター23名、オブザーバーとして8名の審判員が参加し、高橋武良JFA関東RDO、斎藤仁イントレマネージャーを中心に「チュータリング技術の習得」に伴う「チュータリングとは?」と「チュータリングの実践」を行い、チューターの役割やプレインストーミング・6ステップ・ダイヤモンド6などを、グループに分かれての実体験を踏まえた実践形式で行いました。二日目は「アセスメントとは?」と「アセスメントに基づく指導の演習」を参加者各自に事前課題として与えられていた、県高校選手権準決勝戦のレフェリング分析(VTR映像を利用)からのフィードバックを新アセスメントレポートの考え方や記載方法を含めて指導していただきました。
今回のキャラバンでは、今まで我々が行っていたティーチング中心の指導とは全く違う手法が提示され、目から鱗が落ちた参加者が多かったと思いますが、この貴重な経験を無にすることなく、更なる指導力の向上に向けて頑張っていただきたいと思います。他に特筆すべきこととして、初日は石山昇JFA審判副委員長、二日目は黛俊行JFA常駐インストラクターが飛び入り参加されました。突然ではありましたが、お二人の貴重な講話を拝聴できたことに対して、参加者を代表して御礼申し上げます。
受講者コメント
大武広海 3級審判インストラクター
「群馬県は審判員一人当たりのインストラクターの数、全国45位」。今回ご指導いただいた高橋さんの言葉に、まずはじめに愕然としました。私自身、3年前に3級インストラクターとなり、現役の審判員として活動をしながらインストラクターをしてきましたが、そうした現実についてはなかなか実感できていませんでした。さらにJFAとして、ワールドカップで決勝の主審を担当できる審判員を育成していくこと、そのためにユース世代の育成が急務という課題を共有いただき、私たち群馬県のインストラクターに求められる役割の大きさを感じられたことはとても意義のあることでした。
実際の講義では「チュータリング」をテーマに、審判員自身に考える機会を与え、自発的に成長に繋げる方法について学びました。「少し教えて、深く教える」というチュータリングの考え方に沿っての実習は、今までのやり方との違いに戸惑いながらも、参加者全員で必死に考えながらゴールに向かって進めていきました。印象的だったのは「ブレーンストーミング」「6ステップ」「ダイアモンド9」など、受け身ではなく、自分で考えて発表することで理解が深まることを実感できたことでした。また、総まとめとして実際の指導場面をイメージしたロールプレイングを担当させていただきましたが、いろいろな方に自分のやり方を見ていただき、良いところも、悪いところも、さまざまなご意見をいただくことができ、大変刺激になりました。
群馬県でもユース世代の審判員が徐々に増えつつあります。若い人たちを伸ばすのは私たちインストラクターであり、先輩審判員の大切な役割です。その責任の大きさを感じながら、今回学んだことを積極的に活用し、若手審判員が夢を持てるような育成ができるよう、私自身も成長していきたいと思います。今回は本当にありがとうございました。
新井恵子 3級審判インストラクター
今回このレフェリーキャラバンで、多くのことを学びました。特に、1日目のチュータリングの講義と実践は、とても新鮮で驚きと楽しさの連続でした。自分では理解していることでも、頭の中の考えを整理し、相手に簡潔に分かりやすく伝えることや、相手の考えや思いを上手く言葉にして引き出すことの、大切さや難しさを痛感しました。そして、チュータリング実践において、そのコミュニケーションの中に、相手のみならず自分自身もスキルアップに繋がるカギがあるのではないかと感じました。また、2日目のアセスメントに基づく指導のフィードバックでは、実際にレポートを書く側を経験し、フィードバックを行う意味を再認識するとともに、審判員として指摘・指導を聞くことだけではなく、話すことから生まれる気付きの多さに驚きました。
このレフェリーキャラバンで得た知識を、今後の審判活動に活かしていくことはもちろんですが、群馬の審判員に広めていくことも、私たちの役割だと思っています。まずは、すぐに出来ることから、見直しや工夫をしていきたいと思います。この2日間を通して、講師方からいろいろなお話を伺い、審判に対して同じ熱意を持った仲間と日本中で繋がっているように感じ、とてもうれしく思いました。本当にありがとうございました。