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JFAインターナショナルコーチングコース2019を開催
2019年12月06日
「JFAインターナショナルコーチングコース 2019」が11月20日~24日の日程で、静岡県時之栖スポーツセンターにて開催されました。
このコースは、アジアの指導者のレベル向上や、日本とアジアの指導者間の情報交換や交流を深めることを目的としており、今回で10度目の開催となりました。
今回のコースは、「エリート選手の育成」をテーマとし、アジアの20カ国・地域から代表やユース年代代表コーチングスタッフ、選手育成や指導者養成のダイレクター、アカデミーのコーチ、女子選手のコーチなどアジア諸国・地域でエリート選手育成に携わる指導者総勢28名が日本の選手育成の取り組みに注目し、高い関心を持って参加しました。
コース中の講義では、日本の男女エリート選手育成の取り組みやU-20日本代表チームの活動、エリート選手育成のフィジカルについて説明し、意見交換をしました。また、JFAアカデミー福島のトレーニングと試合、ナショナルトレセンU-14/U13、そしてアジアチャンピオンズリーグ2019決勝の観戦を行いました。
今コースでは、ディスカッションの場を多数設定しました。受講者が積極的に参加する場となり、受講者の友好も深まる有意義なコースとなりました。
この事業は、2014年11月13日に国際交流基金アジアセンター・JFA・Jリ―グの3者間で、アジアにおけるサッカー交流および協働事業に関する覚書を締結したことにもとづき、ASEANを含むアジア各国を対象とした文化交流事業のひとつとして開催しました。
JFAと国際交流基金アジアセンターのサッカー協働事業「ASIAN ELEVEN」
インストラクターコメント
木村康彦 ユース育成サブダイレクター
インターナショナルコーチングコース2019では、「エリート選手の育成」をテーマに取り上げ、①タレント発掘のシステム、②FAやプロクラブのアカデミー活動、③育成年代の代表チーム活動、④エリート選手のためのゲーム環境、⑤女子選手の発掘と育成、⑥エリート選手のフィジカルの6つの小テーマを柱に構築しました。また、コースではJFAの取り組みについて一方的に紹介するだけでなく、日本での取り組みの様子を実際に視察してもらうこと、また他国・地域の取り組みについても発表してもらうこと、そして各小テーマについてグループワークやディスカッションを通じて参加者同士で積極的に意見交換する場を作るようにしました。
タレントの発掘と育成の取り組みでは、トレセンシステムを紹介し、実際にナショナルトレセンU-14/U-13を視察して、各グループでプレーの分析や選手評価を行ないました。選手たちの技術の高さには全員が感心しており、グアムの参加者は「選手みんなが高いレベルでプレーしていて、ここからさらに選手を選ぶのは難しい」と、中国のコーチは「一人審判で行っているが、プレーしている選手からクレームが出ない。日本にフェアプレーの精神が根付いていることがわかった」との感想を述べ、サウジアラビアのコーチからは「ゴール前で積極的に仕掛ける選手が少ない」という意見もありました。また成長速度の違うこの年代のタレントを発掘・評価する難しさ、U-13年代での8人制サッカーやピッチやゴールサイズについてもディスカッションしました。
ゲーム環境については、プレミアリーグ、プリンスリーグなど、エリート選手を育成するリーグ戦を紹介し、プリンスリーグのJFAアカデミー福島 対 帝京可児高校の試合を視察しました。育成年代のリーグ戦を創設できていない国も多く、選手育成のためにシーズンを通じた拮抗したゲームの必要性について理解を深めました。韓国の選手育成ダイレクターは「韓国ではクラブと高校チームのレベルが違うので、一緒にリーグを行うと拮抗しない。日本の高校チームとJリーグのアカデミーがU-18年代のトップリーグで一緒に闘っていることは素晴らしい」といった感想を述べていました。
受講者からの発表では「育成年代のコーチの数や質の確保」、「タレントの発掘方法やシステム」、「代表チームの活動や公式戦が少ない」といった問題が挙げられ、指導者養成、選手データの管理、タレント発掘のワークショップの開催、AFCの大会開催のあり方などについて意見やアイデアも共有しました。国や文化に根ざす独特の課題もあり、例えばインドのU-16代表監督は「インドには地域によって27の言語があり各地域から選ばれた代表選手とコミュニケーションをとるのが難しい」といった事象、大陸であるオーストラリアや小国であっても1,110の島々からなるモルディブではスカウティングや選手招集に大きなコストが掛かることなどが挙げられました。
最終日には、埼玉スタジアムでACL2019決勝を全員で観戦してアジアトップレベルのサッカーを堪能しました。コースを通じて、日本の選手育成に対する参加者からの貴重な意見やフィードバックから多くの気づきもありました。また、指導者同士のネットワークを構築できたことも成果だと思います。参加者のオープンな議論や真面目な取り組み姿勢を観て、彼らのサッカーに対する熱い情熱と自国・地域の選手への深い愛情を強く感じ、これがアジアサッカー発展の大切なキーであると思いました。いつの日かアジアからワールドカップを掲げる国が出ることを願っています。
参加者コメント
ケビン グライマ さん(オーストラリアサッカー連盟からの参加者)
行われたセッションとプレゼンターはファーストクラスでした。このコースに参加した指導者達は、ユース育成に関する日本のビジョンと哲学についての理解を深めました。このコースはまた、私たちが自国で経験するいくつかの課題を共有する機会を与えてくれました。JFAインターナショナルコーチングコースを開催していただいた日本サッカー協会に感謝します。
チェウング、キン フング さん(香港サッカー協会からの参加者)
JFAがインターナショナルコーチングコース2019を開催してくれたことに感謝します。指導者として、私は日本サッカーのオンザピッチのことしか知りませんでしたが、このコースに参加したことにより、日本のサッカーの発展と構造、特にユースチームの発展について、より多くのことを知ることが出来ました。JFAアカデミーがサッカー以外のことも多く活動していることは、香港のフットボールアカデミーに大いに参考になります。様々な国の多くの友人を作る機会を与えてくれたJFAに感謝します。