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若い世代が活躍~【コラム】 田嶋幸三の「フットボールがつなぐもの」vol.2~
2016年10月25日
2回目となる田嶋幸三会長のコラム「フットボールがつなぐもの」。
今回は、各カテゴリー代表の活躍とFIFAカウンシル(評議会)で議論された内容について報告します。
JFA公式Webサイトでは月1回を目処に、田嶋会長が、日々思うことやJFAの取り組み、世界やアジアのサッカー界で起こっていることなど、その時々の話題を取り上げ、皆さんにお伝えしていきます。
U-19日本代表が5大会ぶりに世界大会への切符を獲得。U-17日本女子代表は、FIFA U-17女子ワールドカップで準優勝
現在、バーレーンで開催されているAFC U-19選手権で、日本は昨日(10月24日)、タジキスタンとの準々決勝に臨み、4-0で圧勝して5大会ぶりとなる世界大会への切符を手にしました。
この試合、日本は終始、主導権を握り、前半8分に小川航基選手(ジュビロ磐田)のゴールで先制すると、19分に堂安律(ガンバ大阪)が追加点を挙げて2点のリードで前半を折り返します。後半、相手のファウルで得たFKを小川選手自らが蹴って3-0。88分には、岩崎悠人(京都橘高校)がワントラップから左足のシュートでダメ押しの4点目を決め、勝利を決定づけました。
準決勝は27日、相手はベトナムです。TV放送は25:10からCSテレ朝チャンネル2で生放送します。
好調の波に乗り、このまま勝ち進んでアジア王者の座を狙ってほしいと期待しています。U-19日本代表の選手たちに熱いご声援をお願いします。
世界第2位のU-17日本女子代表、リスペクトが高く評価
ご存知の通り、ディフェンディングチャンピオンとしてFIFA U-17女子ワールドカップに出場したU-17日本女子代表は、朝鮮民主主義人民共和国(DPR.Korea)と決勝を戦い、PK戦に敗れて準優勝で大会を終えました。
この大会で日本は、グループステージを全勝してノックアウトステージに進出しました。準々決勝では、体格に勝るイングランドを相手に攻撃の意識を高く保ち、相手を無失点に抑えて3得点で圧勝。準決勝は、4試合で97本のシュートを放っている強豪スペインと対戦しました。試合は序盤から激しい攻防戦となり、日本は前半で先制点を獲得。しかし、楠瀬直木監督はハーフタイム、「リードを守るのではなく、勇気を持って戦おう」と選手を鼓舞し、選手たちもそれに応えて攻撃姿勢を貫き、48分のオウンゴールを含めて3-0で勝利しました。
DPR.Kとの頂上決戦は、序盤から主導権争いを演じる好ゲームとなりました。日本は、DPR.Kのシュート数7本に対して24本、ポゼッション率も60%と大きく上回ったものの、90分では決着せず、勝敗はPK戦に委ねられました。日本は4人目のキッカーが失敗。5人全員が成功したDPR.Kに軍配が上がりました。
それでも、終わってみれば、日本は出場16チーム中最多の19点をマーク。躍動感あふれる素晴らしいサッカーを見せてくれた、楠瀬監督以下、チームの健闘に敬意を表したいと思います。
日本はこの大会でフェアプレー賞を受賞し、キャプテンの長野風花選手(浦和レッズレディースユース)が大会MVPのゴールデンボール賞に輝きました。
JFA審判委員会の小川佳実委員長によると、準決勝の際にFIFAのテクニカルスタディーグループが4強入りのチームを分析してレフェリーに伝えるのですが、日本のフェアプレーが高く評価され、特に敗者に対する配慮が素晴らしいと称賛されたそうです。若い世代が世界の舞台でリスペクトを体現してくれることは非常に意義深いこと。日本サッカーの文化としてこれを継承していきたいと思っています。
今回の若きなでしこたちの活躍は、現在、アジア王者を目指してAFC U-19選手権を戦っているU-19日本代表と、11月に世界大会(FIFA U-20女子ワールドカップ パプアニューギニア 2016)を控えたU-20日本女子代表にも大きな力を与えてくれるものだと思います。
これからも普及、育成、強化、指導者養成、環境整備に一層力を注ぎながら、ユース育成・強化の成果をU-20日本女子代表、なでしこジャパンにつなげていきたいと思っています。特に女子の場合は、ユースがなでしこジャパンに直結していますので、育成・強化の手を緩めることなく取り組み、2020年の東京オリンピックでは金メダルを狙いたいと思っています。
アジア最終予選もいよいよ折り返し地点に突入
アジア最終予選(Road to Russia)も大詰めを迎え、11月15日には、サウジアラビアをホーム・埼玉スタジアムに迎えます。FIFAランキング51位の日本と同54位のサウジアラビア。拮抗する2チームの戦いは激しいゲームになることは必至です。
サウジアラビアは強力な攻撃陣を擁し、初戦でタイに1-0、イラクとのアウェイ戦を2-1で勝利。3戦目にオーストラリアと引き分けはしましたが、アラブ首長国連邦(UAE)との第4戦は3-0で圧勝し、これまで3勝1分、勝点10でグループ単独首位につけています。過去に3度のAFCアジアカップチャンピオンに輝きながら、2010年と2014年のFIFAワールドカップ出場を逃しているだけに、本大会出場に懸ける思いは並々ならぬものがあるでしょう。その戦いぶりに表れています。
日本にとってアジア最終予選の大一番とも言え、これからの戦いを優勢に進めていくためにも決して負けられない一戦です。
この試合に備え、日本は11月11日、茨城県立カシマスタジアムでオマーンとのキリンチャレンジカップに臨みます。“仮想・サウジアラビア”と位置づけるこの一戦。課題をしっかり確認し、サウジアラビア戦の勝利に結びつけなければなりません。鹿嶋での代表戦は実に12年9カ月ぶり。地元のサッカーファン、鹿島サポーターのボルテージは高く、熱気あふれる戦いを演出してくれるのではないかと期待しています。
まだまだ続く厳しいアジアの戦い。チームとしては周囲のプレッシャーや批判などに惑わされることなく、万全の準備をして戦いに集中し、勝ち星を重ねていきたいと思っています。
FIFAカウンシル(評議会)、2026年以降のFIFAワールドカップ出場枠について議論
10月13日と14日の両日、スイスのチューリッヒでFIFAカウンシル(評議会)が開催され、インファンティーノ会長から「FIFA2.0:The Vision for the Future(将来へのビジョン)」が発表されたほか2026年以降のFIFAワールドカップの出場枠などについて議論しました。
FIFAは出場チーム枠を拡大することを検討しており、今回の会議では、1グループ5チームないしは4チームで戦う案や48チームで競い合う案など、いくつかのパターンが提示されました。
ワールドカップの価値やサッカーの質の向上を危惧する声があるものの、ヨーロッパサッカー連盟(UEFA)も前向きな姿勢を見せており、FIFAは今後、出場枠の拡大によってどのくらいマーケティングやチケット料収入が増えるのかを具体的に試算し、来年1月のカウンシルに提案、そこで最終決定することとしました。
日本として、またAFCとしても枠の増大については異論なしとして、1月の会議に臨むことにしています。
開催地については、直近2大会を開催する大陸連盟は原則として立候補できないということも確認されました。2018年のロシア大会をホストするヨーロッパサッカー連盟(UEFA)は2026年大会まで招致の資格はなし。2022年大会を開催するアジアサッカー連盟(AFC)は2026年と2030年大会は立候補できません。また、開催国の負担を軽減するため、複数国による共催も承認されました。
インファンティーノ会長が示した「FIFA2.0:将来へのビジョン」は、原文が69ページに及ぶ文書で、先に記した通り、FIFAワールドカップの招致手順や運営方法の再検討のほか、今後10年間、サッカーの発展のために40億USドルを211の加盟協会を通じて投資することやサッカーの技術開発を目的とした「FIFA ベンチャー基金」構想、さらに強固な財政基盤を確立するために他のステークホルダーや主要な金融機関、世界の開発銀行と連携していくことなどが記されています。
そのほか、ガバナンスやコンプライアンス、会計監査等々が徹底されるよう、年間1億USドルを加盟協会に付与してアドミニストレーションの専門化に取り組むこと、ガールズリーグ、女子プロサッカーリーグの整備、女子サッカーの推進戦略など女子サッカー発展のために、今後 10 年間にわたって加盟協会に最大 3.15億USドルを投資することも記載されています。インファンティーノ会長は、「女子の競技人口を現状の2倍の6000万人に増やす」と明言しており、世界のサッカー界で女子サッカーへの取り組みが加速していくことでしょう。
サッカーを発展させるための盤石な体制構築の戦略が発表されたのは、FIFA史上初めてのこと。インファンティーノ会長がFIFAの組織改革と世界のサッカーの発展にどう取り組んでいくのか、その手腕に注目が集まります。
カウンシルでは、そのほかにFIFAワールドカップ2018の競技会規則、2018-2019インターナショナル女子カレンダー、FIFA女子ワールドカップフランス2019の各大陸枠(前カナダ大会と同様、アジア枠は5)、FIFAフットボールアウォーズ2016の開催(2017年1月9日/チューリッヒ)などについても協議し、承認されました。