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「考えられる選手になるためのいい機会に」中山雅雄JFA技術委員会普及部会長に聞く体を動かす重要性
2020年04月16日
現在、新型コロナウイルスの拡大防止のために多くの方が自宅での待機を余儀なくされています。ここでは中山雅雄 JFA技術委員会普及部会長に、休校中の子どもたちに向けて運動の重要性や室内での運動について聞きました。
※このインタビューは4月10日にウェブ会議システムを利用して行いました。
※写真は2018年9月22日に撮影したものです。
――体を動かす重要性とは。
中山 全く運動をしなければ人が持っている機能はその環境に適した形まで低下してしまうと言われています。ご高齢の方の認知症予防などにおいても運動が重要な役割を担っているという研究は多く紹介されています。体を動かすことと心身の健康は密接な関係があると考えられています。
――極端に運動機会が減ることで運動機能が大きく低下するようなことは考えられますか。
中山 そこに対するはっきりとしたエビデンスはありませんが、例えばプロのスポーツ選手であれば、オフシーズンに体を休めます。ただし、新しいシーズンに向けてはある程度体のコンディションを維持しておかなければすぐには元には戻りません。オフの体調管理が悪くスタートがうまくいかなかったといったことはよくあります。オフの期間はメンタル面を修繕していくことも求められますが、その中でも最低限の体のコンディションを保つことが大事だと言えます。
今は命を守る、あるいは社会的な責任を果たすという意味で家にいることを第一に考えるべきです。その上で、いざ環境が改善されたときに心身ともに万全のコンディションでスタートを切るためには限られた環境の中でどうやって過ごしていくかは非常に大切だと思っています。
――キッズや4種の子どもたちが室内での運動で維持できる機能または高められる部分はありますか。
中山 家の中の限られた状況で、外でできていたいわゆるトレーニングをするには限界があります。そこまでのことを求めてしまうと逆にできないことがストレスになってしまうかもしれません。体力を向上させると考えるのではなく、少なくともいまの体力のレベルを維持することを考えたほうがいいかもしれません。
ちょっとした体の動きを意識してやるだけでも体の機能は維持できます。ただし、一つのことをやり続けるのではなく、手の動き、腹筋や背筋などいろいろな箇所を動かすことを意識してほしいです。狭いところで、一つの動きで全身運動というのはなかなかできません。負荷はそんなに高くないけども変動性のあるエクササイズにトライしてバランスのいい運動を心がけてください。
――JFAが展開している「Sports assist you」のいい活用方法があったら教えてください。
中山 無料公開している「JFAチャレンジゲーム」は主に幼児から4種の子ども向けで、簡単なものから難しいものまであるので、自分にできそうなレベルから映像をまねしてみてほしいです。大人も段階を踏みながらやってみると楽しいかもしれません。
「プロサッカー選手らによるトレーニング動画」は子どもからしたら今まで自分が見たことがないような高いレベルに触れられる機会になります。大人であれば「こういうことまで考えているんだ」という新しい気付きになると思います。体を動かすことはしてほしいですが、そういう知的な部分で刺激を入れられる機会なのかもしれません。
――単に真似をするだけじゃなくて、頭の運動にまで発展していければいいと。
中山 トップレベルの選手はいろいろなことを考えながらプレーしています。子どもたちに求めたいのは、限られた中で自分に何ができるのかを見出すことや、自分自身でどう工夫するかという部分。自立できるチャンスと捉えてチャレンジしてほしいですね。
――子どもの運動にアプローチする上で、指導者や保護者はどのようなことに気をつければいいでしょうか。
中山 「自分でやってみよう」と思うような働きかけをしてほしいです。全てをコピーするのではなくて、大人も自分なりの工夫が必要です。今の環境でできる、できないではなくて、どうしたらできるかに導いていただきたいです。例えばマンションなどでは激しい運動をすると下の階に音が響きます。それをどう解決するかを子どもと一緒に考える。逆にこういうことをすると他の人に迷惑をかけてしまうんだというように、自分のしたことが他の人にどのように影響するのかというところまで考えるチャンスでもあると思います。
――最後にこれからの子どもたちに期待することを聞かせてください。
中山 低下した体の機能は後からでも戻すことはできます。今の状況を乗り越え、人としての自立や成長を遂げて、またサッカーができる日常が帰ってくる日を迎えられれば素晴らしいですね。多くの子が一つ先、二つ先を考えて行動したり、人のことを考えてプレーすることの大切さを感じてピッチに戻ってきてくれれば、また違ったサッカーが日本で見られるのではないかと期待しています。