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ブルーノ・ガルシアのフットサル道場 vol.3「選手の成長のために「PMI」をつくろう」
2019年08月26日
必見「フットサル道場」!
機関誌『JFAnews』で連載中のブルーノ・ガルシアフットサル日本代表監督のコラムをJFA.jpでもお届けします。フットサルの魅力や指導法など、フットサルだけでなく、サッカーにも通じるポイント満載です。
※本コラムはJFAnews2017年8月号に掲載されたものです
強化カルテはシンプルでOK
夏は、大会やキャンプが頻繁に行われることから、誰もが競技に集中できる。1年の中で最も選手が成長しやすい時期と言える。特に、成長期にある10代半ばの選手はフィジカル面が伸び、飛躍的にレベルアップするケースがある。しかし、放っておいて自然に力がつくというわけではない。今回の号では、指導者はどのように選手の成長を促すかについて触れたい。
スペインのスポーツ界には、PMI(Plan de Mejora Individual)という言葉がある。英語ではPersonalImprovementPlan(個別の強化プラン)を意味する。簡単に言うと、選手を個別に強化するためのカルテのようなもので、PMIは下図のように技術、戦術、フィジカル、メンタルという四つの要素から成り立っている。この四つを少しずつ伸ばしていけば、選手は成長するというのが私の理論だ。「強化プラン」という名前に臆せず、チーム練習や試合などで得た課題を克服するための宿題と気軽に捉えてもらいたい。プランの立て方も至ってシンプルだ。
例えば、選手に攻撃時の技術を身につけてもらいたい場合、縦パスを受けてからターンする動きに変化を加えてみてはどうか。かかとや足の甲を使って反転するパターン、一度フェイントを入れてから前を向くパターンなど複数のメニューをこなせば、実戦での引き出しも増える。フィジカルを強くしたい場合は体幹トレーニングが有効だ。それほどスペースを取らないし、選手個人のペースで体を鍛えることができる。
メンタルの強化に関してもあまり難しく考える必要はない。試合中、ゴール前で慌ててしまうような選手には、目を閉じてイメージトレーニングをさせてみよう。1日の終わりにその日の試合や練習を振り返り、自分と向き合う時間をつくるだけで翌日の過ごし方が変わってくるかもしれない。
技術、戦術、フィジカル、メンタルの要素を一度に強化する必要はない。このうち一つの項目に1日30分、毎日取り組めば、選手は必ず変化すると思う。
写真のような体幹トレーニングも、個別に行えば「PMI」の一つになる。
要は「いかに意識を高く保つか」とブルーノ・ガルシア監督は語る
個々が力をつければチームは強くなる
チームは、個人が集まってできるものだ。チームにいる全員が同じスピードで成長すればいいが、それは不可能に近い。個々がそれぞれ特徴を持っており、吸収のスピードと価値観も異なるため、成長するスピードも変わってくる。だからこそ、指導者にはチームだけでなく、個人にもアプローチしてほしいと思う。冒頭に記した四つの要素についても、フィジカル的な要素はコンディショニングコーチが、メンタルはメンタルトレーナーが、戦術は分析担当が、といったように、それぞれの指導のスペシャリストが選手個人の「強化プラン」を用意することが望ましい。
1回目のコラムでも触れた通り、私はフットサル指導者の駆け出しだった頃、高校の体育教師を兼務していた。クラスの中には必ず1人や2人、物事を習得するのに時間がかかる生徒がいる。そういう生徒には、全体の授業とは別に個別で宿題を与え、サポートしていた。
生徒に得意な科目と苦手な科目があるように、サッカー選手にも得意なプレーと苦手なプレーがある。しかし、「この期間にはこの技術を習得する」という見通しは立てなければならない。サッカーの指導者がいつまでに攻守の連係を深め、最終的にチームとして機能させるかというところに導く作業と似ている。そして、チーム全体を機能させるには、個人の能力を伸ばす必要があると思う。
どの指導者も選手を成長させるためにできる限りのことを用意したいものだ。打てる手を打った上で、最終的に選手をその気にさせる。指導者が準備したメニューによって、選手自身が成長している手応えを感じられれば、その選手のモチベーションは必ず上がる。
柔道に打ち込んでいた学生時代、私は強くなるためのメニューを自ら考え、実践した。柔道という個人競技に取り組んでいる限り、自分で考えなければならなかった。成長の道筋が明確化されず、苦しんだ時期もあったが、「個人としてレベルアップする」ことの重要性を学んだ。一人一人が力をつければチームは強くなる。だから、指導者には、チームだけではなく、個人にも目を配ってほしいと思っている。
◀vol.2「コンフォートゾーンを脱出せよ!」 vol.4「日々の練習から試合を意識してプレーさせることが自分の仕事だ」▶
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