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【ワールドカップトピックス#第4回】落ち着きと温かみのある町カザン ~日本代表ベースキャンプ地の表情
2018年07月02日
旅先で一つの町に長く逗留していると、どこかに出かけた場合でも、そこに戻りたいと思うことがある。2018年FIFAワールドカップで日本代表チームがロシアの本拠地にしているカザンは、そういう町かもしれない。日本は2010年大会以来2大会ぶり、通算で3度目のベスト16入りを決めて、7月2日(月) 21:00(日本時間3日(火) 3:00)にロストフ・ナ・ドヌで行われる16強対決でベルギーに勝てば、準々決勝でカザンの町に戻る。
カザンと聞くと、サッカーファンはロシアプレミアリーグのFCルビン・カザンを思い浮かべるだろう。2008年からプレミアリーグを2連覇している古豪の練習場が、日本代表の拠点だ。町の中心部からはカザンカ川を挟んだ北側にあり、隣接する緑豊かな公園には連日、多くの家族連れが訪れて、のんびりと子供たちを遊ばせている。練習場の前には町の中心部へ延びる道路が走り、路面電車、トロリーバス、バスが走り、その地下をメトロが行く。町の中心部から車やメトロで15分ぐらいの距離だが、落ち着きのあるエリアだ。
落ち着きという点ではカザンの町全体がそうかもしれない。中心部には歩行者専用のバウマンストリートという目抜き通りがあり、劇場や映画館、洒落たレストランやカフェが並び、ヴォルガ川とカザンカ川の合流地点を臨む広場まで伸びる。大会のインフォメーションブースが通りの数か所に設けられ、特設ライブステージでは週末になるとバンド演奏が行われる。そこを物見遊山にそぞろ歩く地元の人々に交じって、各国から訪れたサポーターがお祭りムードで練り歩く。フランス、オーストラリア、スペイン、イラン、コロンビア…。TVスクリーンを設けたレストランやバーは、試合になると多くの客で賑わう。
特に、夏のこの時期は白夜が続く。ロシア全土でみれば南西に位置するが、北緯は55度45分。北海道よりも北にある。夜の帳が下りるのが22時頃というのはイングランドやフランスあたりと変わらないが、夜明けが早い。代表チームがカザン入りした6月中旬で午前3時前頃だったが、わずか2~3週間ほどの間に1時間早くなった。だからなのか、週末など午前2時を回ってもバウマンストリートは多くの人で賑わっている。冬が厳しい町の人々は、ワールドカップムードの中、短い夏を急いで楽しんでいるのかもしれない。
バウマンストリートの突き当りにある広場を見下ろす小高い丘には、カザン・クレムリンが建ち、真夏の快晴の空を思わせる青い屋根が輝きを放つ。広場の反対側にはルビン・カザンが試合で使う競技場がある。カザンカ川の対岸には今大会のファンフェスタの会場があり、カザンだけでなく、各地の試合が大型スクリーンに映し出され、大会ムードを感じることができる。だが、ファンフェスタの会場も、中心街でも、町はきれいに保たれて、ゴミひとつ落ちていない。
地元の人は物静かな印象だが、ユニバーシアード大会や世界水泳など大きな国際大会を経験し、海外からの来訪者の受け入れに慣れているのかもしれない。暖かく見守っているようなところがある。ルビン・カザンの練習場で警備にあたる多くの警官や係員は、連日訪れる報道陣と顔見知りになると、「オハヨウ」「サヨナラ」など片言の日本語であいさつを交わし、笑顔を見せる。猛暑の日には、日陰に入るように勧めるグランドキーパーのおじさんもいる。
物静かだが温かみのある、洗練されたカザンの町が、日本代表の帰りを待っている。
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