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森保監督:感謝を力に ~いつも心にリスペクト Vol.99~

2021年07月21日

森保監督:感謝を力に ~いつも心にリスペクト Vol.99~

サムライブルー(日本代表)の森保一監督にとっての最初の「勝負」、東京オリンピックが目前に迫りました。

サンフレッチェ広島の監督を退任して3カ月後の2017年10月に2020年東京オリンピックを目指すチームの監督に就任。翌18年の7月には、22年ワールドカップ・カタール大会を目指す日本代表の監督に就任しましたが、オリンピックを目指すU-21代表の監督も兼務することになりました。

17年に「U-20」だった「東京世代」は、コロナ禍によるオリンピックの延期で今年は「U-24」となりましたが、「兄貴分」の日本代表と「1チーム2カテゴリー」という考え方で境目をつけずに強化してきた結果、森保監督が当初から口にしてきた「金メダルを狙う」という言葉が現実的に聞こえるようになりました。

特にオリンピックに向けて吉田麻也選手、酒井宏樹選手、そして遠藤航選手という経験豊富な選手たちを「オーバーエイジ」として迎えたことで守備が安定し、チーム力は飛躍的に向上しました。このチームの強みは堂安律選手や久保建英選手など攻撃陣に豊かな才能を抱えていることでしたが、守備の安定によってその才能がフルに生きるようになったのです。

しかし今回のオリンピックで活躍が期待されるのは、選手たちの顔ぶれによるものではありません。森保監督の哲学が浸透し、「個々に力を持った選手たちが、チームのため、仲間のために走り、戦う」という日本のサッカーの最良の姿が貫かれていることが最大の力です。

「私たちの活動を支えてくれている全ての人に感謝しています」

記者会見など公の場で話すとき、森保監督は必ずこうした感謝の言葉から始めます。それは通り一遍の言葉ではありません。大会スポンサーから試合会場で準備に当たってくれたスタッフまで、その都度、具体的な対象を挙げつつ感謝の言葉を語る姿を見ると、「この人は本気でそう思っているんだな」と理解できます。選手たちとのミーティングでも、最初に語られているに違いありません。

そして、「感謝」の表現として「使命」があります。困難な状況下でも、日本代表チームの活動を実現するためにたくさんの人が骨を折ってくれているのは、日本代表の活動が日本の社会にポジティブな活力をもたらす力があるからと、誰もが信じているからです。

ならば、日本代表は、仲間を信じ、力を合わせて、見ている人々の心を打つプレーをしなければなりません。どんなに苦しい状況にあっても、終了のホイッスルが吹かれるまで戦い抜かなければなりません。森保監督は、そうした試合をすることで「日本中に元気・勇気を届けたい」と語るのです。

私たち取材陣に対しても熱を込めて毎回こうした話をするのですから、当然、選手たちにも話しているはずです。実際、現在の日本代表、U-24日本代表には、そうした「森保イズム」が見事に浸透しています。選手たちが森保監督と同じ思いを共有しているからこそ、個々に、そしてチームとして大きく成長し、オリンピックを、そして一年後に迫ったワールドカップを迎えることができるのです。

サッカーですから、必ずミスがあります。なかなかうまく運ばず、苦しむ試合もあります。でもそんなときこそ、「チームのために走る。最後まで諦めずに戦う」というこのチームの「ベース」が生きるはずです。

当然、森保監督には、世界と戦うためのサッカーのビジョンがあり、戦術的なアイデアがあります。しかし練習場で、あるいはミーティングを通してそうしたことを徹底するだけでは、魂のない「ロボット」になってしまいます。戦術と同時に、「森保イズム」という根本的な思いが浸透し、全選手が同じ方向を向いているからこそ、真に世界と戦う力になるのです。

森保監督は「感謝」を力に変えました。しかし力にするために感謝しているのではありません。心からの感謝の気持ちがチームを一つにまとめ、結果として大きな力になっているのだと思うのです。

森保監督とU-24日本代表の健闘を祈りたいと思います。

寄稿:大住良之(サッカージャーナリスト)

※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会機関誌『JFAnews』2021年7月号より転載しています。

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