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【SPECIAL】エンパシーを持って、頂上を目指せ~アルベルト・ザッケローニ氏 殿堂入り記念インタビュー#2

2024年10月24日

【SPECIAL】エンパシーを持って、頂上を目指せ~アルベルト・ザッケローニ氏 殿堂入り記念インタビュー#2

2010年8月から4年にわたって、SAMURAI BLUE(日本代表)を率いた。アルベルト・ザッケローニ氏は、日本の選手の特徴をどのように見ているのか。今後の日本サッカーへの期待を語ってくれた(全2編の後編)。

前編はこちら

――FIFAワールドカップブラジル大会のSAMURAI BLUEは、優勝を狙える質がありながら「足」と「頭」のバランスが崩れていたとのことでした。今のSAMURAI BLUEはかなり良い形になってきたように思います。とはいえ、本番でアルゼンチンやスペイン、フランス、イングランドといった世界の強豪に勝っていくとなると大変なことです。

ザッケローニ もちろん簡単ではないでしょう。でも、ワールドカップはクラブチームが戦うリーグのように長期間続くわけではありません。短期間に次から次に試合は来るわけで、チャンピオンチームですら歯車が狂ったりすることはあります。何が起こるかわからないのがワールドカップ。日本は日本、イングランドはイングランド。ピッチのサイズもボールも同じ、GKの数も一人ずつ。そう選手たちが心の底からゲームを理解することが大切です。

SAMURAI BLUEを率い、アルゼンチンやフランス、ベルギーなど強豪を破った

――日本の最高成績はベスト16です。日本にワールドカップを勝ち抜く勝者のメンタリティーはあるでしょうか。

ザッケローニ 私の知る限りでは、日本の選手に「今日は3-0で相手をやっつけろ!」とか「相手を削れ!ぶっ潰せ!」といった強めのトークをロッカールームで仕掛けることはプレッシャーを与えすぎて良くない気がします。むしろ、日々のトレーニングの中で「私たちは相手がベルギーだって3-0で勝てるんだよ」と丁寧に伝えて、徐々に納得してもらう。試合前だったら「今日もできることをやろう。ちゃんとやれば自然に結果はついてくる」というアプローチの方が日本の選手には向いている気がします。私自身、練習でピッチに出ればたくさん話をしますが、試合前に熱くなって話すタイプではありませんでした。

今はメンバーも変わりました。どういう選手がチームにいるか、各選手の性格によって(監督の)アプローチは変わるでしょう。サッカーに、勝つための決まったフォーマットは存在しないので、監督はいろいろなことを決めなければいけません。

――日本がワールドカップで優勝するには何が鍵になるでしょうか。

ザッケローニ 日本が他のチームと違うのは団結心(がある状態)からスタートができることです。日本の選手たちはチームが勝つことに大きな喜びを感じる。仲間を助けることもいとわない。団結力や犠牲心という面で、監督が気を使う場面が少ないのです。カタールのワールドカップで見せた日本の戦いも、ものすごく良かった。

日本の選手は、外国の選手に比べてセンシティブな側面があるのは確かでしょう。弱いというわけではなく……多感、敏感といいますか……。それが、選手に圧をかけるようなやり方は、日本の選手には向いていないと思う理由でもあるのですが、日本の選手は多感な分、エンパシー(自分と異なる人間や価値観に対し、相手のことをおもんばかりながら共感する力)があると思っています。

「いかにエンパシーを発揮し、チーム力を高めるか」が日本のレベルアップの鍵だと語る

――もう少し詳しく教えてください。

ザッケローニ ヨーロッパのトップリーグでプレーしている選手たちが代表に戻ってプレーすると、周囲の選手を自分が普段(クラブで)一緒にプレーしている選手とどうしても比べてしまうものです。そこで生じるちょっとした食い違いが、時に結果を左右する。そういう問題が必ず出てきます。そういうリスクを抱えつつ、いかにエンパシーを発揮してチームの中で結束してチーム力を上げていくか。これは大事なポイントになるでしょう。

繰り返しになりますが、日本のプレーの質はもう高いのです。速くて倒されないのは、日本の選手の素晴らしい特性です。他国の選手は、強いか、速いか、強くて速いかになりますが、日本の選手は速い上にスタミナもある。海外にもそういう選手はいますが、90分間を戦い抜いた後、気力と体力が尽きて、舌を出してハアハアするような状態になったところから、まだ走れるのが日本の選手です。森保監督はそのことをよく分かっていると思います。

チームで良いプレーをして勝っていく。勝ち続けると自然に「いけるんじゃないか」という自信や手応えが醸成される。自信がつくと、いつもはしないけれど、ちょっと難しいプレーに挑戦してみようという積極性も生まれる。これからいろいろなことが起きると思いますが、チャレンジする気持ちを大切にすれば、きっと乗り越えられるでしょう。

日本サッカー殿堂掲額式典後のパーティーでは、多くの参加者から写真を求められた

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