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[特集]ピンクリボン運動・乳がん経験者インタビュー「まさか自分が 乳がんを正しく知りまずは自分事化を」
2020年10月14日
日本サッカー協会(JFA)は乳がんの啓発活動「ピンクリボン運動」に賛同し、10月の「ピンクリボン月間」に乳がん検診の早期受診を呼びかけています。今回はJクラブで働く、乳がんを経験した女性にインタビューを実施しました。サッカーファミリーの皆さんにも乳がんやその他の病気の早期発見につながればと思います。
※ご本人の希望により匿名にてお届けいたします
――乳がん検診を受診された経緯を教えてください。
4年ほど前、もういい歳だからと初めて人間ドックを受けて、そのときは結果が全く問題なかったんです。なので3年に1回受ければ十分だろうと2018年の12月頃に再び人間ドックを受けたところ、左胸が引っ掛かりました。「半年後に経過観察で受診してください」と言われたまま忘れてしまい、なかなか予約がとれなくて結局は今年1月に経過観察も兼ねて人間ドックを受けたら、左ではなく右胸が引っ掛かって、後日電話で再検査を受けるよう病院から連絡がありました。3月に超音波検査を受け、2週間後に結果を聞きに行ったときに再検査が必要と言われ、4月初旬にMRI検査を受けました。その2週間後、今度は組織検査をすることになり、ゴールデンウイーク明けに検査をしました。先生にまだ検査が必要なのかと聞くと「MRI検査の結果を確定させるため」と言われ、その時に初めて「もしかしてそういうことなのかな…」と思い始めました。そして、5月下旬に超早期の乳がんで手術が必要と診断されました。
――その後、どのような治療をされたのでしょうか。
手術のための病院・医師を探し、7月下旬に手術をして、9月は毎日通院して放射線治療を受けました。9月はホームゲームが多くて非常に忙しくきつかったのですが、クラブがオフの月曜は治療後に友人宅でご飯を食べたりして、それが気分転換になって乗り切ることができました。
また病院の医師、看護師、放射線技師さんにもとても良くしていただいたので、不安をあまり感じずに治療に通うことができました。
――検査から治療までの間はどのような心境でしたか。
MRI検査を受けた頃から不安になり始め、組織検査をしてから結果が出るまでの2週間は自分でも乳がんに関していろいろ調べたりもして、その頃が一番不安でした。間違いであってほしいと思う半面、これだけ検査をするのだから(がんである)確率は高いんだろうな、という思いもあり、少し覚悟もしていました。病院に検査結果を聞きに行くときに一緒に来てくれたり、検査を継続することを後押ししてくれた友人もいて、それは心強かったです。
乳がんを告げられたときは、「超早期です。見つかってよかったですね」と先生に言っていただいて、その瞬間から「本当に早く見つかってよかった」と気持ちを前向きに持っていくことができました。
手術・治療に当たっては、本当に良い先生・病院を紹介していただいたので、それも前向きになれる大きな要因でした。
――今はどのように治療されているのかを教えてください。
9月末に放射線治療が終わり、10月上旬に診察を受けて今後はしばらく薬を飲みながらの再発予防となります。
――乳がんに罹患され、あらためて感じていることはありますか。
日頃から健康に不安がある方や健康志向のある方は用心されていると思うのですが、私は「前に風邪をひいたのはいつだっけ?」と思うくらいに健康で体力もあって、自分が病気になるなんて想像すらしていませんでした。そういう人ほど軽視しがちなのではと思います。私の場合、クラブ内に定期的に人間ドックを受けている方がいて、その方に誘われて一緒に人間ドックを申し込んでもらったので、そういうきっかけがあるかどうかも大きいのかなと思いました。
乳がんを告げられたときは、家族にどう説明しよう、という思いが頭をよぎりました。仕事もそうですね。周りの人たちへの影響はすごく考えました。自分以上にみんな驚くはずなのでどう伝えればいいのか、Jリーグが再開している中で仕事をどうお願いすればよいか、ということは考えました。
――サッカー界が乳がんの啓発に取り組むことについてはどう感じられていますか。
先日、JFAの取り組みの一環としてなでしこリーグの選手たちがオンライン乳がん勉強会に参加していましたが、受講した選手たちは20代、30代が多く、乳がんに罹患しにくい年代と言われています。40代、50代になると罹患率は高くなるので、むしろJFAやJリーグ、Jクラブで働いている女性スタッフの方がこの年齢に当てはまる方は多いように思います。ですから、サッカー界に関わる女性スタッフにも勉強会の動画を見てもらいたいと思いました。
乳がんは早く見つかれば治る病気と言われています。少しでも違和感を感じたり、何かおかしいと思ったらすぐに病院に行きましょう、ということは伝えていくべきと思います。勉強会に参加した選手には、ぜひ周りの人たちにも伝えていってもらいたいです。
――選手や関係者、ファン・サポーターなど、サッカーファミリーの皆さんに伝えたいことをお聞かせください。
治る可能性のあるものを放っておいて命を縮めるべきではありません。われわれのクラブでも毎年、ピンクリボンキャンペーンを実施しているのですが、実施している私自身も以前は “自分事”として捉えていなかったと気が付きました。まさか自分が乳がんになるとは思っていなかったですから。私はたまたま受けた人間ドックでたまたま見つかり、それが超早期だったので本当にラッキーでした。神様がついていたと思ったけれど、検診を受けることで、「ラッキー」の確率が高くなる。だから、私の経験談が少しでも“自分事化”するためのきっかけになればうれしいです。サッカー界の啓発活動に関わることによって、サッカー界に携わる女性たちが元気に健康で仕事を続けられればと思っています。今はサッカーをすることはまだNGと言われていますが、年が明ければまたボールを蹴ることができるようになると思うので、自分がやりたいことをやり続けるためにも、早期発見は大事だと思っています。