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【ワールドカップトピックス#第3回】ワールドカップ初導入のVAR判定
2018年07月02日
6月22日(金)、サンクトペテルブルクで行われたブラジル対コスタリカ戦は、0-0のまま80分を迎えようとしていた。初戦をスイスと1-1で引き分け、16強進出には勝利が必要だったブラジルは、ペナルティボックスに切り込んだネイマールが相手DFと接触、笛が鳴った。「PK!?」とざわめく場内に、主審はVARを適用。ピッチ脇に設置されたモニターへ駆け寄って問題場面のリプレーを確認。ピッチに戻るとPKは認めずに、プレーを続行した。
VAR=ビデオ・アシスタント・レフェリー、通称ビデオ判定。21回を数えるワールドカップで初めて導入されたシステムだ。誤審を減らし、競技の公正さを高めるために、競技規則を司るIFAB(国際サッカー評議会)が「最少の影響で最大の効果をもたらす」手段として今年3月、導入を認めていた。適用の場面はゴールやPKの有無、一発退場、警告や退場の選手誤認という、試合の結果を左右しかねない重要な場面に限られる。
数台のTVモニターが並ぶ専用の部屋に、VAR担当審判団と技術者が待機。プレーの確認に必要な映像を用意して、これをピッチ脇のモニターで必要に応じて主審が見る。主審の見落としがあった場合には、VAR担当からピッチ上の主審に連絡が入る。いずれも、映像を見た上での最終判断は主審に委ねられており、VARを使うかどうかの判断も主審にある。主審の権限を尊重する姿勢は従来通りだ。
例えば6月23日(土)のベルギー対チュニジア戦では、試合開始早々にペナルティエリアの端でアザールが倒されてPKとなった。この時、主審はVARを使わずに判断。チュニジアの選手が使用を求めるしぐさをしていた。一方で、ナイジェリア対アイスランド戦の後半、アイスランドがPKを得た場面ではVARの知らせでPKの有無を確認した。ちなみに、VAR適用第1号は、6月16日(土)のカザンでのフランス対オーストラリア戦のPK判定だった。
FIFAは今回のVAR導入を睨んで、この2年ほどの間に2016年FIFAクラブワールドカップや昨夏のFIFAコンフェデレーションズカップをはじめ、ドイツやイタリアなど20か国以上の972試合で試行テストを繰り返してきた。そこで得たデータによると、判定の正確性は98.9%と5.9%アップ。主審がモニター確認に費やした時間は平均55秒だった。
映像確認作業で、サッカーの醍醐味でもある試合の流れが途切れることを懸念する声は少なくなかったが、「FKや交代より時間はかからない」とする推進派のFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長が、この数字を歓迎したのは言うまでもない。
FIFAは準備段階で、大会審判候補に通常の審判研修以外にVAR研修も用意。大会にはVAR専任の審判を従来の試合担当とは別に選出した。このVAR研修を受けていることが大会選出には不可欠だったため、中にはイングランドのように、唯一の大会審判選出候補が自己都合で辞退すると、代わりの候補者を出せず、サッカーの母国イングランドを含めた英国4協会は、実に80年ぶりに一人も大会へ審判を送り出せないというケースも出た。
これまでのところブラジル戦のケースなど、適用を評価する声もあるが、VAR使用を決めるまでに時間がかかりすぎという指摘もある。緊張度の上がるノックアウトステージはこれから。審判団の緊張はまだまだ続きそうだ。
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