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[特集]GKへの理解 守護神の姿~林 彰洋選手に聞く GKの奥深さを理解してその魅力を伝えていく 後編
2020年06月17日
2019明治安田生命J1リーグでベストイレブンを受賞した林彰洋。
流通経済大学在学中に海外へ活躍の場を求め、プロとしてのキャリアをスタートさせた。
日本屈指の守護神に、GKになったきっかけやその魅力、海外での経験を通して感じた世界と日本の差について聞いた。
インタビュー日:2020年1月17日
※本記事はJFAnews2020年2月に
掲載されたものです
日本と海外における基準の違いとは
――林選手は流通経済大学4年時に海外に活躍の場を求めました。なぜ海外でプロキャリアをスタートしようと思ったのでしょうか。
林 もし日本サッカーが世界トップレベルにあれば、日本でプレーすることがベストだったかもしれません。でも、そうではありません。主流はどこなのか考えたときに、ヨーロッパがすぐに頭に浮かびました。そこでの経験なくして上を目指したいと口にするのは違うと思いました。だから、当時の僕はヨーロッパへの挑戦以外は考えていませんでした。
――日本とのプレー環境、トレーニング環境の違いとは?
林 GKに関して言えば、国ごとにはっきりとした色があると思います。例えば、GK大国と言われているポーランドではトレーニングの中に器械体操のようなメニューが必ず入ってくる。ベースをつくることがうまいと感じました。それを取り入れることで、身長190センチを超える選手たちの身のこなしがうまくなっていく。そうやって次々とGKを輩出し、ヨーロッパの一流クラブへと送り出している。
日本ではあまり有名ではない国のリーグでも育成段階の選手の能力の高さを感じました。また、どういったスタイルのGKを育てるのかという確固たる理想がそれぞれの国にあると思います。
――日本と海外でGKへの理解度の違いは?
林 僕が海外で感じたのは、GKは止めて当たり前という感覚でした。
試合は、日本ほど緻密な守備を構築するわけではないので、あっさりと決定的な場面をつくられることも多かった。アグレッシブな守備スタイルなので、実際のゲームでは簡単にDFがFWと入れ替わることも多い。日本でDFが味方の戻りを待っている時間、海外では、GKがいるんだからとボールを奪いに行く。ここで止めて当たり前という水準が高いのだと思います。そういう考え方だからこそ、止めることに長けているGKも必然と多くなるのだと思いました。
――海外で日本人GKが活躍するために必要なことはどんなことでしょうか。
林 まず言葉の問題があります。
GKはポジションが一つしかなく、狭き門です。その国の言語を話せず、文化やサッカースタイルも理解していない状況で飛び込んでも、よそ者扱いされて終わりです。早い段階でその国の文化やサッカースタイルに順応しなければいけません。
豊富な知識を持つ林は「ボールのないところでのプレーにも注目してほしい」と語る
GKの醍醐味はシュートストップだけではない
――林選手が思う理想のGK像とは。
林 現代サッカーではフィールドプレーが欠かせません。かつ、やはりゴールを守る能力は長けていなければいけない。ひと昔前はセービングがうまければ評価されました。もちろん、優先順位はゴールを守ることが最も大事ですが、足元の技術も必要になっているのが現代のGKだと思います。
――GKとして子どもたちにメッセージを送るとしたら?
林 うまくいかず、自分に合わないと感じても簡単に諦めないでほしい。GKのトレーニングで、これをやれば確実に一番になれるという練習はありません。僕自身、多くのコーチの教えを理解し、一つ一つ自分で消化したからこそ今があります。逆に、もっといろんなことを吸収できていれば、もっとうまくなることができたかもしれません。GKをやりたいという意欲があれば、成長できる術は必ずあります。だから、必死にそれを模索しながらトレーニングに打ち込んでほしいと思います。
――GKが人気ポジションとなるために必要なことは何でしょう。
林 少し前まで、試合のハイライトシーンでゴールシーンを取り上げられることは少なかったと思います。でも、DAZNをはじめ、多くの試合を視聴できる環境が増え、GKが注目される機会もそれだけ増えたし、いい選手のいいプレーを盗むこともできるようになったと思います。
――GKのステータスを上げるために必要なことは何だと思いますか。
林 どれだけチームに貢献しているかをピックアップすることが一つ挙げられると思います。GKの面白さを伝えるようなトレーニングも、もっと伝えていく必要があると思います。
――励みになったコーチの言葉はありますか。
林 つい頭でっかちになってしまうときがあるんですが、そういうときに思い出す言葉があります。それは流通経済大学付属柏高校のコーチから言われた「直感力を信じろ」という言葉です。いろんな局面でさまざまなチョイスがありますが、実際の試合で感じたことや、無心にプレーすることを大切にしています。自分の良さを出せずにミスから失点してしまったときなど、コーチから「オリバー・カーン(元ドイツ代表)のように直感力を大切にしてほしい。もちろん理論立てたプレーをしていると思うが、彼の野性的な感覚や勢いを大切にしている姿に俺は魅力を感じる。だから、そういう姿勢を持ってほしい」と言われました。それは今も大切にしています。
――どのようなところに注目してほしいですか。
林 GKはシュートを打たれてセーブしたときが一番の見せ場のように思われています。でも、シュートを打たせないということも大切なんです。相手がシュートを打つ機会を防げば防ぐほど、失点の可能性は低くなる。ハイボールや最終ラインの背後に抜け出たボールの処理、相手のトラップ際にボールをアタックする技術、そうしたところを意識して見てもらいたいし、いかに失点を未然に防いでいるかを知ってほしい。と同時に、一つ一つのセービング技術も見てもらえば、きっとGKの奥深さがわかってもらえると思います。
Jリーグ8年目の2019シーズンに
初めてベストイレブンを受賞した
林 彰洋(はやし あきひろ)選手の紹介
1987年5月7日、東京都生まれ
【経歴】
1995年~1999年 東大和サッカー少年団
2000年~2002年 柏レイソル青梅ジュニアユース
2003年~2005年 流通経済大学付属柏高校
2006年~2009年 流通経済大学サッカー部
2009年~2010年 プリマス・アーガイル(イングランド2部)
2010年~2012年 オリンピック・シャルルロワ(ベルギー3部)
2012年~2013年 清水エスパルス
2013年~2016年 サガン鳥栖
2017年~ FC東京
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