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正しい知識を身に付け、子どもたちを守り、自分自身を守る ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.102~

2021年06月18日

正しい知識を身に付け、子どもたちを守り、自分自身を守る ~サッカーの活動における暴力根絶に向けてVol.102~

2019年5月16日、暴力や暴言、ハラスメントのない健全なサッカー環境の実現を目指して、日本サッカー協会(JFA)から「JFAサッカーファミリー安全保護宣言」が発表された。本来、スポーツは身体を丈夫にするだけではなく、楽しむ中で豊かな人間性や社会性をかん養するところに大きな価値があるはず。しかし、残念なことにスポーツ活動における体罰、暴力・暴言、ハラスメント行為は後を絶たず、子どもたちからスポーツの楽しさや心身の健やかな成長の機会を奪うのみならず、子どもたちの将来の可能性までも奪ってしまう現状がある。

2020年の暴力等根絶相談窓口に寄せられた件数は99件(2020年11月10日までのデータ)。相談内容で最も多いのが、暴言や威圧で50%、次いで直接的な暴力が18%だった。種別ごとの相談件数を見てみると、4種が圧倒的に多くて49%、次いで2種が15%、3種が13%である。18歳以下の年代が対象となる相談がほとんどを占めている。本来は伸び伸びとサッカーを楽しむべき子どもたちが、暴力・暴言、威圧などで悩んでいるのかと思うと心が痛む。一方で、泣き寝入りすることなく、勇気を持って声を上げてくださるおかげで、何らかの策を講じることもできる。このような窓口がなくても問題のない状態になれば良いのだろうが、やはり悩みを抱えたときに相談を寄せられる場所があることの大切さも感じる。

目指すは、暴力・暴言を根絶し、ゼロトレランスを実現することだ。誰もが安心して、安全にサッカーを楽しめる状態にしなければならない。多くの指導者の方が、日々真剣に子どもたちと向き合って熱心に指導している。自らサッカーを楽しみ、サッカーを通じて子どもたちと関わりを持ち、成長を見守る。本当にすばらしいことだ。ネガティブな言動があるのは一部であり、決してサッカー界全体ではない。

一昔前は誰からも指摘を受けなかったことが、現在では好ましくないとされることもある。本人だけではなく、周囲も含めて気が付いていない、周囲は感じているのに気付きを伝えられない、あるいは周囲から気付きが伝えられても聞き入れない。その結果、気が付いたときには社会的に大きな問題となっているケースもある。また、本人には悪意がなく、良かれと思ってとった行動や言葉が、認識の違いでネガティブな結果を生み出すこともある。

「裸の王様」にならぬように周囲の声にも耳を傾け、社会の出来事や世の中の流れにも関心を持ち、アンテナを張りめぐらしておくだけでも、自分自身に気付きをもたらしてくれることもある。周りの声や情報に翻弄されるということではない。関心を持ち、正しい知識を身に付けることで、子どもたちを守ることはもちろんのこと、結果的には自分自身を守ることにもつながる。

現在、国際サッカー連盟(FIFA)やアジアサッカー連盟(AFC)においても、子どもの安全保護についてさまざまなことが進められている。FIFAからはガイドラインなどが示され、JFAでもそれに沿って着々と作業を進めている。18歳以下の子どもたちや、弱い立場にあり危機にさらされやすい人を守り、そして誠実に子どもたちに向き合う大人の安心・安全も守らなければならない。

起こったことに罰を与えることは簡単だが、完全な解決に至らないケースもある。人間関係が原因でサッカーから離れてしまったり、あるいはネガティブな言動が原因で指導者のキャリアが終わってしまったりすることもある。時すでに遅しとならぬよう、正しい知識を身に付け、日頃のコミュニケーションを大切にすることで、同じサッカーに関わる者同士の関係を常に円滑にしておきたい。

【報告者】山岸佐知子(JFAリスペクト・フェアプレー委員長)

※このコラムは、公益財団法人日本サッカー協会『テクニカルニュース』2021年3月号より転載しています。

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