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アジアのピッチから ~JFA公認海外派遣指導者通信~ 第61回 井尻明 ベトナム・女子サッカー統括
2022年02月28日
FIFA女子ワールドカップ2023の出場権を獲得
ベトナム女子代表が出場したAFC女子アジアカップインド2022。日本は3位で三連覇ならず、優勝したのは中国でした。FIFA女子ワールドカップ2023予選も兼ねたこの大会で、ベトナム女子代表は準々決勝敗退でしたが、プレーオフを勝ち抜き、男女通じて史上初のFIFAワールドカップ出場権を見事獲得しました。
大会期間前、期間中と参加チームのほとんどがコロナの影響を受けてしまいました。ベトナム代表も事前キャンプでクラスターが発生し、大会を棄権する可能性もありました。大会初日には規定人数ギリギリの13名しか揃いませんでしたが、大会が進むにつれ選手が復帰し始め、そこからはベトナム人の長所である強靭なメンタルと、強い結束力でどうにか戦い抜くことができました。
ベトナム国内では男子代表チームの人気は凄まじく、代表戦のテレビ視聴率は70%を超えることもあります。それに比べ女子サッカーの知名度は雲泥の差で、人気も知名度もありません。しかし、ワールドカップ初出場という事で注目度が上がり、国内で女子サッカーが盛り上がれば、いろいろな面でプラスになるはずです。今後に大きな意味を持つ偉業でした。
「本物の反復」とその成果
2020年9月に立ち上げたベトナムサッカー連盟(VFF)女子アカデミーU13。元JFAアカデミーテクニカルアドバイザーのクロード・デュソーさんが仰っていた「本物の反復」をイメージし、取り組みの柱を「インテンシティの高い中で認知⇒判断⇒実行する」としました。アカデミーの選手にはサッカー初心者も多くいるので、シンプルなドリルトレーニング(トライアングルパス/スクエアパス)を日々のルーティンにしました。日本でいえば少し前の指導者C級のメニューです。ベトナムでも似たようなトレーニングはやっていたようですが、私がこだわる「本物の反復」にはスタッフや選手も最初は戸惑っていました。
「観る/動きながら/ボールに寄る/パスして動く/遠い足で/左右の足で/DFを入れて」などを、ベトナム人に合わせて時間をかけながら、慌てず丁寧に少しずつ要求を増やしていきました。初心者が多かったことが幸いしたのか、変な癖や、極端に間違った動きをする選手が少なく、また、ベトナム人特有の勤勉さもあり、選手たちはどんどん技術を吸収し、1年ほど経つと少しずつですが変化が出始めました。試合をすると「サッカー」になってきたのです。相手を「観て」ポジションをとり、状況に合わせたコントロールをし、パスの受け手、出し手のタイミングも良くなってきたのです。
「本物の反復」を意識しながら、トレーニングを続けてこられたのは、アカデミースタッフの深い理解と協力があっての成果だと思っています。
まだまだ取り組むべきことは多いですが、基礎をベトナムの文化に合わせながら、引き続き続けていこうと考えています。
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