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【JFAの知っトク!】ユース育成の改革~城和憲JFAユース育成ダイレクターインタビュー

2024年09月24日

【JFAの知っトク!】ユース育成の改革~城和憲JFAユース育成ダイレクターインタビュー

すべてはサッカーをする選手たちのために

日本サッカー協会(JFA)が進めるユース育成において、育成の考え方や方向性、また2024年度から実施している改革について、城和憲JFAユース育成ダイレクターに話を聞きました。

※このインタビューは2024年8月27日に実施しました。

日本独自のパスウェイを大事にしていく

――JFAとしての選手育成の考え方を教えてください。

 「ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan's Way」では、「参加する、楽しむサッカー」(左側の山)と「競技としてのサッカー」(右側の山)のダブルピラミッドを掲げています。この2つのすそ野を広く、そして高くしていくべきです。世界で活躍できる選手を育てることは大事ですが、サッカーを楽しむ選手を増やしていくことも、同じくらい大切だと認識しています。

――そのためにプレー環境を整えたり、選手に刺激を与えたりといった取り組みを進めているということですね。

 「サッカーが楽しい」と思って始めた子が「もっとうまくなりたい」とトップアスリートを目指すこともあれば、サッカーをそれぞれのペースで楽しみながら続ける子もいる。どちらにも行き来できるのが、「日本独自のパスウェイ」だと捉えています。リーグ戦を含めたゲーム環境、トレセン活動、日常のチーム活動など、われわれにできる取り組みやサポートを継続し、選手がサッカーを楽しみ続けられるように自ら選択できる環境をつくっていきたいと考えています。


今年からJFAユース育成ダイレクターに就任した城和憲ダイレクター。
「責任とやりがいを感じながら、皆さんでベクトルを合わせていろいろと進めていきたい」と抱負を語る

――右側の山の「競技としてのサッカー」について、現在の日本の育成年代が世界で通用する部分、まだ足りないと思う部分をどう見ていますか。

 世界に見劣りしないと思っていますし、世界で戦える日本のサッカー、日本人の良さは間違いなくあります。今年7~8月の「Jリーグインターナショナルシリーズ2024 アカデミーマッチ」でJリーグ選抜U-15がヨーロッパのクラブと戦いましたが、トッテナム・ホットスパーU15(イングランド)の監督と話をすると、「なぜ日本人はそんなにうまくて、強いんだ」と。そういう言葉を聞いたり、世界でも堂々と戦う選手たちを見たりすると、育成年代で取り組んでいる方向性は間違っていないと感じます。

その一方で、FIFA U-17ワールドカップインドネシア2023に出場したU-17日本代表は、一瞬で勝負を決めるという世界の強豪との差も体験しました。その差は何かといった答えは求め続けなければいけないですし、日常のレベルをワンランク上げていく必要があると思っています。


Jリーグ選抜U-15を率いた城ダイレクターは「日本人特有の規律や組織力に、うまさや強さもうまく混ざり合い、
いろんなことができるようになっている」と話す

多くの選手に刺激を与えるトレセン活動

――今年からさまざまな改革がスタートしています。

 日本サッカーが大きな発展を遂げ、次のステージへと突入している中で、われわれが取り組んできた事業をもっと良くするために、さらに世界で活躍する選手を発掘・育成するためにどうすればいいのか。さまざまなことを考えた上で、施策を打ち出しています。

その中で、JFA主体で動かしていくという従来のスタイルから、地域・都道府県サッカー協会(FA)を中心に進めていく方向にかじを切っています。JFAとして方向性は示しつつも、各FAに配置するFAコーチが先導役となり、地域やFAごとの多様なニーズに応え、カスタマイズや工夫をしていく。これまでは少人数のJFAコーチが全国に足を運びながらでしたが、今はそれぞれの場所に信頼できる仲間としてFAコーチがいます。その広がりをもって手厚いサポートで、より良い環境づくりを進めていければと考えています。

――ユース育成ではどういった変更をしましたか。

 トレセンは「多くの選手に刺激を与える」という考えの下、ナショナルトレセンU-12・13を廃止し、その年代までは地域トレセンを行う形に変えました。「早期の絞り込みが、早期の排除につながる」のは避けなければいけません。どうしてもトレセンに選ばれたから良い選手、選ばれていないからダメだとなりがちですが、低年齢ではまだまだ分からないのが現実ですから。また、地域やFAによって事情が異なりますので、最適な形を模索しながら独自性も出し、さまざまな選手に刺激や経験を与えてもらいたいと考えています。

ナショナルトレセンU-14に関しては、今年から年3回の開催とし、全て異なる選手を招集します。ここで得た刺激を自分のチームに持ち帰り、広く波及させていくことを目指します。そのほか、エリートプログラムU-13・14も、日韓交流戦のみとし、その他の活動は廃止しました。その分、時間や予算などを地域での活動に回し、より多くの選手を発掘していく考えです。そして、15歳からはU-15日本代表が立ち上がるという流れを構築しています。

トレセンの概要は下記参照
https://www.jfa.jp/youth_development/national_tracen/


トレセンは「個の育成」を目標に、自チームでは味わえない刺激や経験を積み、天井効果を排除することにある

ITテクノロジーを生かして未来につなげる

――情報発信や共有という部分で、トレセンでのライブ配信など新たな試みに挑戦しました。

 2024ナショナルトレセンU-14前期(5月23日~26日実施)では、トレーニングマッチをライブ配信し、たくさんの方に視聴いただきました。そのアーカイブや、トレーニングメニュー紹介の映像も、いまだに多くの視聴があります。なるべく多くの方の目に触れることで、どういった活動をしているのか知ってもらいたいですし、「もっとこうすべきでは」とディスカッションしていきたいですね。今後もできる限り継続していく予定です。

2024ナショナルトレセンU-14のトレーニングメニュー紹介は下記参照
https://www.jfa.jp/youth_development/national_tracen_u14_2024/trainingmenu.html

――選手を選考する上で、どういった視点を持つべきでしょうか。

 これまで「タレント」という言葉が使われてきましたが、実は明確な定義がなく、指導者の目に委ねられてきた部分があります。その目はもちろん大切ですが、われわれはその基準、タレントID(Talent Identification/若年層の人材発掘・育成、およびそれを目的とした事業・プログラム)をつくっていくと同時に、トレセン活動などに参加した選手たちが育っていく過程をしっかりと追いかけなければなりません。そのために、統一したフォーマットをつくり、選手評価やフィジカルデータなどさまざまな情報を入れ込む形でトレセンデータの集約化を進めています。全都道府県のトレセンデータを蓄積することで、選手を可視化したり、情報の受け渡しを進めたりするなど、有効活用していければと考えています。


「SAMURAI BLUE(日本代表)で活躍する選手が昔はどんな選手だったのか、
携わった指導者しか知らないのは財産を失っているようなもの」と城ダイレクター。将来を見据えてトレセンデータを蓄積していく

――そのほか、ユース育成で取り組んでいきたいことは?

 以前は、ストライカーキャンプやセンターバックキャンプを実施し、現在はナショナルトレセンU-14でポジション別トレーニングも行っていますが、個人やポジションに焦点を当てた取り組みも進めていきたいと考えています。

また、ゲーム環境でいえば、U-18年代の高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグを、レベルや注目度を含めてこの年代の世界一のリーグにしたい。それに付随して地域やFAが主導するプリンスリーグ、地域リーグ、FAリーグ、さらに下の年代のリーグ戦も変化を加えながら、質を高めていきたいです。学校部活動の地域移行の問題もクリアすべきことは多いですし、私自身は中学3年や高校3年での「引退」という概念もなくしていきたい。「すべてはサッカーをする選手たちのために」ですね。

――全国で選手育成に関わる方へのメッセージをお願いします。

 今の日本サッカーがあるのは皆さんのおかげです。われわれとしては感謝しかありません。選手の育成はJFAだけでできるものではないですし、「JFAの言う通りに」などという考えは一切ありません。皆さんと情報共有をし、手を取り合い、一緒に悩み、そして考えながら、選手のためにさまざまなチャレンジをしていければと思います。FIFAワールドカップを掲げるという目標に向かって、一緒に頑張っていきましょう!


城ダイレクターは「目指すのは、日本サッカーの発展。
そのために、サッカーに関わる皆さんの力を借りながら一緒に取り組んでいきたい」とメッセージを送る

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