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vol.007「U-20女子日本代表を率いて」
2012年08月22日
U-20女子日本代表監督 吉田弘
(自分が関わっていることに関して)サッカーを通じて人間育成、社会で役に立つ人間を育てることに貢献したいと思っている。
そういった意味では豊かになった日本では、子どもたちが親や周りの大人にかまわれ過ぎていると感じている。子どもに対する「リスペクト」が欠けているのではないだろうか?子どもたちが自立するためには決して良いことではないと思う。面倒を見るのは悪いことではないが、面倒の見方を考えてほしい。
サッカーではグラウンドでのパフォーマンスが良ければレギュラー、悪ければベンチ。スポーツの世界は表現されたことが監督やコーチにすぐに伝わる(見た眼)。出来の良し悪しは誰かの責任ではなく、自己の責任である。だからレギュラーになりたければ自分で努力し、他人にないものを身につけ、自分をアピールすることが必要だ。逆に言うと「皆が一緒」である必要はない。
「なでしこジャパン」がワールドカップで優勝したことで、夢はいろいろな意味で広がった。世間での関心度が高まり、メディアへの露出も格段に増えるなど、女子サッカーのステイタスは上がったと思う。それはありがたいことだが、スポーツの世界はごまかしが効かない。プロとしてピッチで「何か」をやらない限り、サポーターやファン、応援してくれる人たちは、「何か」を感じることはない。一生懸命なプレー、質の高いパフォーマンス、やった分だけ(結果を伴って)評価されるというシビアな世界だ。
人にやらされてやっているうちは「何か」を身につけることはできない。勉強もすべてそうだが、人に言われてやっているようでは自分の身にはならない。「自分がやりたい」と強く思い、「自発的に行動する」ことが重要。「自ら一生懸命にやる」を指導者として導いてあげたいという思いがある。
指導者にとって、自らの思い・意思を持つ選手を育て、その思い・意思を尊重し、伸ばすことは簡単なことではない。前提として指導者は子どもをリスペクトし、その思いや行動を忍耐強く見守ることが必要だからだ。
石川遼選手(プロゴルファー)の父親は、自身が指導者であったにも関わらず、自らの意思でやらなければ大成しないという考えから、親元を離れさせた。保護者として指導者として素晴らしいと思う。無理にやらせたわけではなく、おもちゃのゴルフクラブで遊んでいたことが楽しくなり、もっと上手くなりたいと思うようになり、自分の意思でやるようになっていった。この思いや行動をサポートする、そういった環境を作り、育てることが良い指導者の一要素である。
「自身の責任において、自らが考え、行動する」ことのできる選手を育てたい。サッカーを通じて人間性にも関わり、サッカーも一流だが社会人としても一流だという選手を出来るだけ多く輩出したいと思っている。
U-20の選手達には、失敗を恐れずに相手ゴールに向かって、自分の出来ることを精いっぱいやってほしい。自分の特徴や自分の良さを出せるかがキーポイントとなるが、自分の力を信じ、積極的にチャレンジしてほしい。自分の特徴を生かし、表現するということは、今の日本社会に足りない部分でもあるので、サッカーを通じて身につることを期待したい。
U-20女子ワールドカップでは、若い選手達が積極的にチャレンジしていくという「ひたむきな姿勢」を見てほしい。「なでしこジャパン」が常にチャレンジしているように、「U-20」も最後まであきらめずに「なでしこらしさ」をグラウンドで表現したい。この夏は、是非とも会場で、あるいはテレビで、この若い選手達のプレーを観戦し、応援してください。(了)
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