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周囲の人びとへの感謝 ~いつも心にリスペクト Vol.27~

2015年07月30日

周囲の人びとへの感謝 ~いつも心にリスペクト Vol.27~

明治安田生命J1リーグの「1stステージ」で、浦和レッズが開幕から無敗という素晴らしい成績で優勝を飾りました。

昨年のJ1で優勝に大きく近づきながら終盤に不可解な崩れ方をしてタイトルを逃した浦和。今年はAFCチャンピオンズリーグ(ACL)も並行して戦いましたが、残念ながら大きな期待を受けたACLでは序盤に3連敗を喫し、グループリーグで敗退してしまいました。

しかしJリーグでは3月7日の開幕戦から集中した戦いを見せ、勝利を重ねました。昨年の悔しさ、ACLでのふがいなさを取り戻そうとでもいうように、今季の浦和には粘りと落ち着きがありました。そして守備を固める相手に終盤まで無得点でもあわてず、最後に見事なシュートを決めて勝利をもぎ取りました。先制点を許しても昨年までのようにバランスを崩すことなく、逆転に持ち込みました。

そうした結果を重ねたことが自信になり、優勝を決めた16節(6月20日)終了時で11勝5分け無敗という素晴らしい成績が生まれたのです。

このヴィッセル神戸戦では、1-0のリードで迎えた後半30分にMF宇賀神友弥が2枚目のイエローカードで退場になり、アディショナルタイムを含めて残り20分間以上を10人で戦うというハンディを負いました。しかしそこから逆に集中力を高め、ホームチームである神戸の猛攻を1点に抑えて1-1の引き分けに持ち込み、優勝を決めたのです。決定的と思われたピンチを攻撃的MFである武藤雄樹が猛烈な戻りで防ぐなど、その意識の高さは「さすがチャンピオン」と思わせるものでした。

6月のFIFAワールドカップ予選シンガポール戦の日本代表には、GK西川周作とDF槙野智章の2人しか選ばれなかった浦和。決して「スター揃い」のチームではありません。2012年に就任したミハイロ・ペトロヴィッチ監督が攻撃的なチームプレーを植え付け、過去3年間優勝争いに加わりながら力をつけて、その力を今年、爆発させたのです。

選手たちからもファンからも「ミシャ」の愛称で呼ばれるペトロヴィッチ監督は、「チームで戦う」ことを信条としています。彼が意図しているのは、速いテンポのショートパスをベースにしたサッカーそのものだけではありません。

「私にとっていちばん大事な人は誰だかわかりますか」

彼からこんな問いかけをされたことがあります。

ミシャのことだから、特定の選手を想定しているはずはないと思いました。しかし彼の説明は私の予想をはるかに超えるものでした。

「それはね、練習に使っている大原グラウンドの2人のグリーンキーパー(芝生管理人)なんだよ。私たちの『仕事場』が最高の状態に保たれているのは、彼らが毎日毎日心を込めて整備してくれるからだからね」

彼の話は続きます。「クラブハウス内をいつも清潔な状態に保ってくれる掃除のおばさんたち、チームが練習や試合に集中できるよう準備に当たってくれているマネジャーたち、メディカルチーム、クラブの人びと、そして何よりサポーター…。私たちの成功のためには、彼らすべてが必要なピースなのです」

毎年1月、シーズンの最初のトレーニング日にミシャが選手たちを集めて話すのは、決まってこういう言葉だそうです。

「自分たちを支えてくれている人への感謝」の気持ちを忘れないこと、そして自分たちがピッチの上で走り、戦い、勝利をつかむのは、そうした人びとの思いのこもった仕事を完結させるものであると忘れないこと…。ミシャは、それこそ「チームで戦うこと」であり、本当の「チームプレー」であると説くのです。

「1stステージ」の優勝が決まっても、戦いは続きます。「シーズンでいちばん大きなタイトル(チャンピオンシップ)を取り、その喜びを支えてくれる人みんなと分かち合いたい」という思いが、浦和の選手たちにさらに大きなモチベーションを与えています。

寄稿:大住良之(サッカージャーナリスト)

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