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【ワールドカップトピックス#第5回】開催国ロシアの快進撃
2018年07月04日
2018FIFAワールドカップで開催国のロシアがベスト8に進出した。FIFAランク70位(6月7日現在)と出場32チーム中最下位のチームが、優勝候補の一角に挙げられていたスペインを1-1の延長戦の末、PK戦で下しての勝利に、ロシアの国が湧いた。
試合が行われたモスクワから遠く離れたロストフ・ド・ナヌーでも通りを行く車がクラクションを鳴らして祝福。日本代表がベルギー代表との16強対決を翌日に控えて公式練習に臨んでいた市内の練習場でも、場内整理にあたっていた大会ボランティアや警備員などのロシア人スタッフが、スマートフォンでの試合中継をチェック。1本1本のPKの成否に一喜一憂していた。
このPK戦の立役者はもちろん、ロシアGKイゴール・アキンフェーフ選手。スペイン3番手コケ選手のキックを右へ飛んで止め、5番手イアゴ・アスパス選手に逆を突かれそうになったキックは左足首で止めた。CSKAモスクワのアカデミーで育った32歳のGKは、試合中から鋭い反応を見せて、後半終了直前にはヴィッセル神戸入りが決まっているアンドレス・イニエスタ選手の右の一振りを阻止。延長後半にはロドリゴ・モレノ選手のカウンターでの一撃をブロックしていた。
ロシアには旧ソビエト連邦時代にレフ・ヤシンという優れたGKがいた。ディナモ・モスクワで1963年権威あるバロンドール賞に選ばれ、それ以降今日までに同賞に輝いたGKはいない。1958、1962、1966年と3度のワールドカップで8強入り2回と4強入り1回に貢献したヤシン氏は、1998年にはFIFA 20世紀ワールドチームのGKにも選出された。その後、FIFAワールドカップの最優秀GK賞は2006年まで彼の名前を冠して「ヤシン・アワード」と呼ばれていた。
しかし、ロシア代表チームは、ソビエト連邦として出場した1958年から1970年までは1966年の4位を含めて全大会で8強に進出していたが、ソ連崩壊後は様子が変わった。ロシアとして出場した1994年からは今回で出場4度目だが、過去3大会はいずれもグループステージ敗退で、ヤシン氏ほどのGKの存在も不在だった。
開催国として迎えた今大会、国民は不安と期待をないまぜに6月14日(木)の開幕戦を迎えていたのだろう。日本代表のキャンプ地で警備員が、サウジアラビアとの開幕戦を心配そうにスマートフォンで中継を追っていた姿が記憶にある。あの警備担当者も、ルジニキスタジアムで大声援を送り続けたロシアのファンに負けず劣らず、スペイン戦の勝利を喜んだに違いない。
昔から開催国の躍進は、大会成功と盛り上がりには不可欠と言われており、ホスト国の代表チームは大会での躍進で国民のハートをつかんできた。1998年大会のフランス然り、2002年の日本と韓国然り。そして今回はロシアだ。地元のメディアには、かつてロシア代表をつとめたフース・ヒディンク氏が登場し、盛り上げに一役買っている。
GKアキンフェーフ選手が「ヤシン2世」と呼ばれるかどうかは不明だが、後輩の一人として人々の心に残る活躍を見せたのは間違いない。準々決勝ではクロアチアと対戦。勝てばコロンビアとイングランドの勝者との準決勝へ進む。開催国ロシアの熱い戦いが続いている。
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