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[特集]部活動の実情とこれから 福島隆志 JFA学校部活動検討委員インタビュー 前編 「サッカーファミリーをキーワードに中学年代の課題に向き合う」
2020年08月04日
2018年にスポーツ庁から策定された「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を受けて中学年代の部活動で大きな変化が起きた。福島隆志JFA学校部活動検討委員(日本中学校体育連盟サッカー競技部長)に中学年代の部活動における実情や課題について聞いた。
電話インタビュー日:2020年3月19日
※本記事はJFAnews2020年4月号に掲載されたものです
活動時間の制限で公立中学校は厳しい立ち位置に
――中学年代の部活動に変化はありますか。
福島 公立中学校ではスポーツ庁の出したガイドラインに沿う形で活動しています。導入前は朝練習が文化になっていた地域もありましたが、今では大方の学校で朝練習は廃止されています。“過度な時間を費やさない”、“持続可能”というキーワードに沿う形でガイドラインを実現してきていると思います。
――実際に教員の負担は減っているのでしょうか。
福島 私は日本中学校体育連盟のサッカー競技部長として、どちらかというとプレーヤーズファーストでものを見ようというスタンスで、あえて働き方改革と部活動の活動時間をリンクさせて考えてきませんでした。JFAの部活動検討委員会では働き方改革に焦点を当ててきましたが、適切な活動時間で部活動を続けようというのは多くのところで定着してきています。現場では肯定的に捉える向きがあり、時間を有効に使おうという方向に変わってきていると思います。
――土日のどちらかを休むようになったことでリーグ戦にも影響はあるのではないでしょうか。
福島 リーグ戦が組みにくくなりました。しかし、それは予測できたことです。特に私立中学校では土曜日に授業がある学校も多いので、そうすると日曜日しか試合が組めません。
――活動時間が減少したことで、けがが少なくなったというような報告はありますか。
福島 サッカーの場合は、指導者のライセンス制度が早い時期から整っていて、系統を立てて勉強してきた先生が他の種目よりは多いと思います。今までも指導者の裁量の中で、きちんとオフは週一回取るとか、うまく時間のやりくりはできていました。B級スタンダードと言われるように、B級ライセンス取得者がすごく増えてきました。その中で、仮にライセンスを持っていない指導者が自分の近隣の学校にいたら、そういう指導者もサポートしながらみんなでステップアップしていこうという流れがあります。ですから、急にけがが減ったとか、トラブルが減少したということはあまりありません。それはJFAの指導者ライセンス制度の賜物です。
――「もっと活動したい」という声が増えることで中学校よりクラブチームを選択する生徒が増えていくのでしょうか。
福島 そうですね。それは、中体連で頑張っている生徒の比較対象はクラブチームになります。クラブは活動の時間もスポーツ庁の時間でくくられません。だから土曜日に試合をして次の日に遠征に行くこともあると聞いています。活動日数で言えば圧倒的にクラブチームのほうが多いので、中体連の子からもっとやりたいと声があるのは事実です。しっかりプランニングした中で活動日数を確保しているクラブチームを選択する選手が増えることはある意味必然的で、それはそれで良いことだと思います。ただ、地域によってはクラブチームに通いにくい子どももいると思います。最近はクラブの数も増えてきましたが、行くのであれば遠方まで足を伸ばさないといけない。そういう地域の子どもは中学校でプレーすることを選択せざるを得ないのですが、より高いレベルでプレーしたいという思いに応えられる活動が中学校で提供できているかと言うと、少し難しいかもしれません。
――中体連としては何かしら手を打つ予定ですか?
福島 まずは全国中学校サッカー大会(全中)を魅力的な大会にすることです。大会は学校が稼働中の時期にはできないので、夏の長期休暇中に涼しい地域で開催するなど、選手がよりパフォーマンスを発揮できるような大会にしようと動いています。それからJFAがスポーツ庁のガイドラインを踏まえて制作した「手引き」をもっと有効活用する学校が増えてほしいと思っています。今はウェブ上でしか見られないので、手元に冊子であると良いと思い、全チームに配布してほしいという要望を出しています。手引書をもっと活用できれば、短い時間でも良い取り組みはたくさんできます。
より魅力的な大会にするために全国中学校サッカー大会の冷涼地開催を目指す。写真は第50回全国中学校サッカー大会決勝より
効率的なトレーニングは中学年代全体の流れに
――公立中学校でも効率の良い練習ができればチームの強化は可能でしょうか。
福島 そうですね。東京都の荏原第一中学校は昨夏の全中に出場し、初戦で青森山田中学校に敗れはしましたが、とても良いサッカーをしていました。顧問の菊地洋至先生はガイドラインを十分考慮してトレーニングをとても効率的に行っていると関東の指導者の方々から聞いています。そういう取り組みをみんなでもっと共有していけば、部活動の中で一定の強化はできるのではないかと思います。
私立でも日章学園や青森山田といったいわゆる強豪校も、当然、公立よりも時間的には長いと思いますが、本当に科学的なトレーニングを行っていますし、そのようなところを公立中学校も学べるといいのかなと思います。
――効率的なトレーニングは時間の制限がある公立中学校だけではなく、中学年代全体のキーワードになっていくということですか。
福島 全体でかなり浸透してきていると思います。中体連の場合は、私立と公立の先生同士がすごくオープンに情報交換しています。指導者のみなさんが一緒に成長していこうというスタンスでいます。ガイドラインに沿った公立のトレーニングを私立にも参考にしていただけたらうれしいです。
公立の荏原第一中学校(写真)は効率的な練習で全国大会出場を果たした
「中学校部活動サッカー指導の手引き」の案内
JFAが部活動をサポートするため、2018年7月に作成したハンドブック。「JFAのサッカー部活動に対する考え」「指導上の留意点」など18項目にわたって書かれている。また練習計画を立てる上で活用できる「活動予定表」も掲載。下記からダウンロードができる。
http://www.jfa.jp/coach/physical_training_club_activity/guidance.html
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