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死闘を制してカナダが新女王に。戦術・技術のレベルアップが光った大会 第32回オリンピック競技大会(2020/東京)
2021年08月09日
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)の女子サッカー競技は、8月6日(金)に決勝戦が行われ全日程が終了した。
最終結果
金メダル カナダ
銀メダル スウェーデン
銅メダル アメリカ
スウェーデンとカナダによる決勝は当初、国立競技場で午前11時キックオフの予定だったが、高温となる日中を避けるため、横浜国際総合競技場で午後9時からに急遽変更。両者一歩も譲らない熱戦は延長戦、PK戦の末にカナダが初の金メダルを獲得し、スウェーデンが2大会連続の銀メダルに輝いた。また、5日(木)に行われた3位決定戦では、アメリカがオーストラリアとの4-3の打ち合いを制し、銅メダルを獲得した。
なでしこジャパン(日本女子代表)は、グループステージでカナダ(1-1)、英国(0-1)、チリ(1-0)と対戦し、1勝1分1敗で、グループ3位でノックアウトステージに進出。しかし、準々決勝で優勝候補筆頭と目されたスウェーデンに1-3で敗れ、ベスト8で今大会を終えた。
ヨーロッパを中心に女子サッカーが急速な発展を遂げる中、今大会は北中米カリブ海地域から新女王が誕生した。2012年、16年と直近の2大会で銅メダルを獲得してきたカナダは、イングランド出身のベブ・プリーストマン監督が、就任から1年足らずで魅力的なチームをつくり上げた。移民国家ならではの多様性を強みとし、欧州やアメリカのリーグでプレーする選手を中心に、4-4-2の各ポジションに強力な個性を揃えた。強豪オリンピック・リヨン(フランス)でプレーするDFカデイシャ・ブキャナン選手を中心とした守備は今大会屈指の堅守を誇り、攻撃では、代表キャップ数「300」を突破したFWクリスティン・シンクレア選手を中心に、個々の判断力の高さが光った。シンクレア選手は優勝までの過程を振り返り、「それぞれの選手が自分の仕事をして、みんながステップアップし続けた。とてもユニークなチームだった」と、選手とチームの成長を勝因に挙げた。
スウェーデンは、17年から指揮を執るペテル・ゲルハルドション監督の下、攻撃的なチームづくりを進めてきた成果を存分に発揮。高さ、スピードなどのフィジカルを生かしたカウンターに加え、丁寧なパスワークによる多彩な崩しも見せた。そのベースとなっていたのは、「止める・蹴る」の基礎技術の高さと、チームとしての戦術面の引き出しの多さだ。システムは4-2-3-1を採用。11人が常に良いポジションを取りながら、攻守において主導権を握る組織的なサッカーは、「フィジカルか、技術か」という二元論から、戦術・技術・フィジカルを融合させたスタイルへと、女子サッカーの潮流が変化していることを実感させた。バルセロナ(スペイン)やバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、パリ・サンジェルマン(フランス)やチェルシー(イングランド)といったビッグクラブでプレーする選手たちのレベルアップは目覚ましく、スウェーデンの黄金期の到来を予感させる。
2015年、19年とFIFA女子ワールドカップを連覇中のアメリカは、初戦でスウェーデンに0-3で敗れる衝撃的なスタートを切ったが、見事に持ち直した。精神的主柱でもあるMFカーリー・ロイド選手は、大会中に選手たちのミーティングを重ねたことを明かし、表彰式では銅メダルを誇らしく掲げた。各ポジションにオリンピックやワールドカップのタイトルを持つ世界トップクラスのタレントを揃え、今大会も不動の4-3-3を採用。準決勝ではカナダとの接戦の末、PKを決められて敗れたが、3位決定戦ではロイド選手とFWメーガン・ラピノー選手が2ゴールずつを決め、ここぞという場面での勝負強さを発揮した。レギュラーメンバーの高齢化が進んでおり、今後は世代交代に舵を切る可能性もある。
オーストラリアは、過去最高の4位に入賞。スウェーデン、アメリカが同居する“死の組”を突破し、準決勝では延長戦の末に強豪・英国を破った。スウェーデン出身のトニー・グスタフソン監督が着任したのは今年1月で、準備期間は限られていたが、グスタフソン監督が強豪国とのマッチメイクを積極的に組み、チーム強化を成功させた。今大会は3バックを採用。アメリカ同様、長く代表でプレーしている選手が多く、成熟した連係とエースのFWサマンサ・カー選手の決定力を武器とした攻撃は迫力を増しており、アジアでは今後も日本の強力なライバルとなるだろう。
また、今大会は経験豊富な選手たちが輝いた大会でもあった。カナダのシンクレア選手(38歳)を筆頭に、アメリカのロイド選手(39歳)やラピノー選手(36歳)、ブラジルのFWマルタ選手(35歳)、英国のFWエレン・ホワイト選手(32歳)などが、高い技術や決定力、円熟味を増したプレーで大会を盛り上げた。
得点王には、オランダのFWヴィヴィアン・ミーデマ選手が、過去の記録を塗り替える10ゴールで得点女王に輝いた。
絶対王者のアメリカが敗れ、カナダという新女王が誕生した東京オリンピック。新たな風が吹いたこの大会を契機にどのような流れの変化を生むのか。これからも女子サッカーから目が離せない。
第32回オリンピック競技大会(2020/東京)
サッカー競技日程:2021年7月21日(水)~2021年8月7日(土)
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