ニュース
常に今できることの最大値を出す ~森保一監督手記「一心一意、一心一向 - MORIYASU Hajime MEMO -」vol.08~
2020年03月30日
できる協力をしつつ、収束を見守る
新型コロナウイルス感染症が、国内も含めて世界中に拡大しています。みなさんも日々の生活においては不自由していることかと思います。世間では拡大を防ぐべく、日々、さまざまな対策が講じられていますが、スポーツ界にも影響は及んでいます。また、スポーツ界だけでなく、音楽や文化的な活動、さらには経済にも大きく影響していることと思います。
感染防止に協力すべくJリーグは現時点で公式戦の開催を4月下旬まで延期し、ユースをはじめとするアカデミーの活動も自粛しています。日本代表の活動においても、3月のFIFAワールドカップカタール2022アジア2次予選が延期されることが決定し、6月もその方向であることが発表されました。試合を楽しみにしてくれていたみなさん、試合を成立させるために、ご尽力いただいていた関係者のみなさんと同じく、残念な思いでいます。
また、3月24日には、今夏予定されていた東京オリンピックの延期も決定しました。
僕自身としても、世界的に広がっているこの状況が一刻も早く収束することが重要だと思っています。人々の命と健康があってこそのオリンピックだからです。今はみなさんが安心して観戦できるスタジアム、選手たちが心置きなくプレーに集中できる環境が戻ってくることが最優先だと考えています。
日々、感染が世界に拡大し、国際事案にまで発展している新型コロナウイルス感染症について、我々にできることはそう多くはありません。移動にはリスクを伴いますし、国際試合となれば、対戦相手からも懸念の声が出ることは十分に理解できます。観客、選手、スタッフ、運営に携わる人々を危険にさらすわけにはいかないので、ゴーサインが出るまでは、自分にできることを協力しつつ、収束を見守ることしかできないのが現状です。
今できることの最大値を出す
ただ、試合の開催が延期され、活動が制限されているとはいえ、個人的なスタンスは変わりません。
日本代表の活動は、日頃から準備期間が限られています。その限られた準備期間の中で、1回、1回の活動を充実させ、密度を濃いものにして、結果を目指していく。東京オリンピックが延期されたからといって、その考え方は変わりません。
また、当初予定されていた時期よりも、時間が与えられたということを考えると、よりパワーアップして大会に臨まなければならないとすら考えています。今後の活動に関しても先が見えない状況ではありますが、活動の期間が延びれば伸びるほど、レベルアップできる。常に、少しでも、一歩でも、うまくなり、強くなり、レベルアップにつながるという考えを選手たちにも持ってもらえればと思っています。また、僕自身も、よりチームをレベルアップさせられる時間ができたとポジティブに変換しています。
やれることは限られていますが、その日にできることに最善を尽くす。その考えは常日頃から、さらには今も変わりはありません。努力と日々の積み重ねをして、次の試合に向かっていく。そうした個人的な指針は、何があっても変わらないと思っています。
また、代表の活動予定も刻々と変化していきますが、個人的には自分の努力で変わらないことを深く悩んだり、考えたりしても仕方がないと思う性格だったりもします。だからこそ僕は常に今、できることに目を向けているのです。
現状ならば、活動が制限されているからこそ、スタッフとは密に情報共有は行う。国内においても、試合がないからこそ、情報共有を行い選手のコンディションや状況を把握しておく。
要するに、今できることの最大値を出すということに、変わりはないのです。
スムーズに移行するために最善の準備をしておく
いつも選手たちには、アクシデントや予期せぬことを乗り越えていこうと話していますが、今回のことは想定を越えた事態ではあります。でも、想定外のことが起きたからといって、焦ったり、バタバタしたりするのではなく、落ち着いてやるべきことをやる。時間が経ち、できることが増えてきたときに、慌てることなく、スムーズに移行していけるように。それこそが最善の準備となるように思います。
正確な情報を取り入れ、冷静に対処する。そして目の前のできることに邁進していく。それは日々の活動、みなさんの生活においても同様な気がします。
世界を見渡せば、ヨーロッパを中心に、新型コロナウイルス感染症の被害が拡大しています。日本も予断を許さない状況ではありますが、感染拡大が踏みとどまっている、もしくは踏みとどまろうとしている現状があります。
そうした状況で今いられるのも、自発的に外出を控えるなど、日本人の危機管理能力の高さや周囲への気遣いがあってこそだとも感じています。
だからこそ、ここは日本が世界に向けて力を示せる機会でもあると思うのです。外出を自粛するなど、さらに生活は不自由になることが予想されますが、新型コロナウイルス感染症を収束させるため、日本人の規律を重んじる姿勢や他人を思いやる自己犠牲の精神が生きてくるのではないかと。それは日本人のアイデンティティーとでも言えばいいでしょうか。それを今、示すことで、世界の模範となれることを発信できるのではないかと思っています。
新型コロナウイルス感染症が収束するまで、みなさんの生活も落ち着かないところはあるとは思いますが、またスタジアムでお会いできる日を心待ちにしています。そして、一日も早く、事態が収束することを願っています。
関連ニュース
- 日本代表 2020/01/01 初蹴りで感じたサッカーの魅力とスポーツの力 ~森保一監督手記「一心一意、一心一向 - MORIYASU Hajime MEMO -」vol.07~
- 日本代表 2019/12/27 サッカーができる日々に感謝 ~森保一監督手記「一心一意、一心一向 - MORIYASU Hajime MEMO -」vol.06~
- 日本代表 2019/11/05 戦い方は変わっていく ~森保一監督手記「一心一意、一心一向 - MORIYASU Hajime MEMO -」vol.05~
- 日本代表 2019/10/10 ワールドカップ予選は環境との戦いでもある ~森保一監督手記「一心一意、一心一向 - MORIYASU Hajime MEMO -」vol.04~
- 日本代表 2019/08/09 同じ目線を持つことの意味 ~森保一監督手記「一心一意、一心一向 - MORIYASU Hajime MEMO -」vol.03~
最新ニュース
- JFA 2024/11/21 【不服申立委員会】 2024年11月21日付 公表
- JFA 2024/11/21 【裁定委員会】 2024年11月21日付 公表
- 選手育成 2024/11/21 バイエルン・ミュンヘンへ短期留学 JFAとアディダスによる育成年代の選手を対象としたプロジェクト「育成年代応援プロジェクト JFA アディダス DREAM ROAD」~2024年度 第三弾が始動~
- 大会・試合 2024/11/21 決勝(11/23)チケット当日券の販売について 天皇杯 JFA 第104回全日本サッカー選手権大会 大会アンバサダー三笘 薫 選手・CFCと協働 子どもたち30名ご招待
- 選手育成 2024/11/21 2024年JFA・Fリーグ特別指定選手に3選手を認定