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チェンジメーカー 第9回 石川慎之助(いしかわ・しんのすけ) NPO法人つくばフットボールクラブ代表・株式会社つくばFC代表取締役

2012年03月01日

チェンジメーカー 第9回 石川慎之助(いしかわ・しんのすけ) NPO法人つくばフットボールクラブ代表・株式会社つくばFC代表取締役

Profile

石川 慎之助 / ISHIKAWA Shinnosuke さん
NPO法人つくばフットボールクラブ代表/株式会社つくばFC代表取締役
2004年度SMC本講座修了(1期生)

1979年1月、東京都生まれ。
暁星高校(東京都)より筑波大。同大学院修了後の2003年、大学院生時代から指導していたつくばFCをNPO法人化し、現職。2006年、営利事業の事務局として株式会社つくばFCを設立。
2006年女子トップチームがなでしこ参入宣言、2007年男子トップチーム「ジョイフル本田つくばFC」も本格的に活動開始。

その1 みんなに応援してもらえるクラブ

坂口:では、よろしくお願いします。

石川:お願いします。

坂口:まず、つくばFCがどんなクラブなのか、どんなことをやっているのか、教えてください。

石川:もちろんサッカーのクラブです。老若男女みんなが楽しめる形でやっていること、それからトップチームがJリーグ、なでしこリーグを目指して活動してるってこと・・・
までは当たり前なんですが、それ以上に、みんなに応援してもらえるようなクラブづくりをしたいと思って活動しています。

それは、例えば、農業だったり、あるいは工業だったり。他のスポーツ団体との冊子作りだったり。
まぁ、普通のサッカークラブがあまり取り組まないような形で、スポーツだけにとらわれないクラブづくりを進めています。

坂口:今、クラブのメンバーの数はどれくらいですか?

石川:今は、子供からおとなまでで、740人ぐらいです。カテゴリーは、いわゆるキッズからジュニア、ジュニアユース、ユース。
それが男子と女子があって、あとは、お父さん、お母さんが参加できる社会人の活動。それとは別に、トップチームがあります。

坂口:さっきおっしゃっていた工業って何ですか?

石川:工業ですか?
工業は、今、見ていただいているグラウンド。この人工芝のグラウンドです。この人工芝自体、うちのクラブでJFA公認の規格で作っています。設計は僕らがやって、製造は中国です。こういう安価な人工芝ならば、より多くの町クラブとかアマチュアレベルの人たちが、いい環境でスポーツできるんじゃないかということで進めています。工業は、この人工芝の開発と普及の取り組みです。

坂口:施工もやるんですか?

石川:施工もやれますが、施工は僕らは得意じゃないので、地元の業者の方にお願いしたほうがいいんじゃないかと思っています。笑
僕らはもともと天然芝の普及活動もやってますけど、同じように人工芝も普及させたい。安価で、皆がいい環境で、っていうものを普及していきたいなと思ってるんで。
それをひとつのきっかけに・・・
天然芝も、人工芝もきっかけなので・・・
それをきっかけにして、クラブ間の交流が生まれて、いつかうちのクラブがJとかなでしこに行ったときに、いい選手を送り込んでくれる関係になれたらいいなと。芝生仲間で、繋がれればいいなと思ってますね。

その2 ないのならつくってしまおう

坂口:続いて天然芝の話もお願いします。

石川:天然芝は、当時、いいグラウンドがつくばになくて、自分たちでグラウンドを作ってしまいました。標語を掲げて。「ないのなら作ってしまおうグラウンド」と。
で、その標語を掲げて、芝生募金って寄付を集めたら、80万ぐらい集って。ただ、実際のグラウンドづくりの費用は、もっともっとお金かかったので、その一部にあてながら、自前で天然芝のグラウンドを作りました。

ほんとに自分たちの手作業で、3か月ぐらいかけて芝生を植えていきました。今だったらそういうやり方はしないですけど。笑
最初はなにも知らなかったんで。ほんとに大変でしたけど、いい経験しました。

坂口:このグラウンドは、照明からネットから、手作りの感じがすごくいいですよね。

石川:芝生は、自分たちのグラウンドだけではなくて、JFAとも協力して、ポット苗の生産もしています。

坂口:グリーンプロジェクトですね。天然芝以外にも農業の取り組みってありますか?

石川:はい。ここの空きスペースを畑にしてホウレンソウを作ります。このグラウンドでイベントをやるときに、ホウレンソウのラーメンとかを食べてもらって。子どもたちも自分たちで作ったホウレンソウなので、進んで食べます。まぁ、食育と、それからホウレンソウを通じて地域のお店とつながるというか。あくまでホウレンソウもひとつのツール。つながるためのツールでしかないんですけど。

あと、最近はお米ですね。「つくば・なでしこ米」って名前をつけてやっています。「つくば・なでしこ米」を筑波山の旅館組合に買っていただいて、これを観光客の人たちにも食べてもらっています。田んぼ自体もうちの選手が用意して、耕して、それから植えて。収穫も選手がやって。ってことに、今、取り組んでいます。

今度は普通の白米じゃなくて、古代米でやろうってことで準備しています。古代米の市場は、意外と隙間があるんじゃないかって。だから、そっちでやろうかなって。古代米用の精米機まで買っちゃおうかって話もしています。ちょっと高いんですけど。笑

その3 「なんでチャレンジしないんだ」

坂口:石川さんが、ひとりでつくばFCを始めたころぐらいから、ここまで来た経緯を教えてください。今までの話と重なることもあるかも知れないですけど。

石川:ひとりで始めたって実感はなくて。ほんとに仲間に助けられてやってきました。
一番初めは、大学生の時に、地域の少年サッカーチームに、ボランティアで教えに行っていました。大学院生になるにあたって、その子たちが中学生になってどうなっているかなって見に行ったとき。ちょうど2月ぐらいで、グラウンドは霜が降りてグチョグチョで。4時から練習が始まって、4時半には日が暮れちゃって練習終わっちゃうような時期。

たまたま、見に行った日は、顧問の先生も会議でいなくて、子供たちはただ走っているだけ。何もしてないじゃないか!と。絶対うまくなっているわけがない。よくない環境をまず目の当たりにして、ここから中学生とか高校生になってもいい環境でサッカーさせてあげたいなって思いました。

それから大学時代に、アメリカのベンチャー企業のICチップを研究題材にしていたのですが、そこのベンチャーの社長に話を聞きに行ったときに、「なんで、日本人はもっとチャンレンジしないんだ」「アメリカ人はもっとやるぞ」みたいなことを言われて。なんか火つけられて。
そこの社長は、自分のICチップを日本で売る子会社作れって言ってたわけなんですが、それはやりませんでした。

でも、そのことばがずっと頭の中にありました。だから、つくばFCの活動を後を継いでくれないかって言ってもらったときに、これをきっかけになんか始めるのもありかな、と思って。
ただ、そのときは大学卒業して大学院に進んだだけなんで、まだそれを本業にするなんてまったく考えてなくて。でも、大学院の2年間、勉強しながらクラブを少しずつ良くしていたら、これはもしかしたらひとつの形というか、最終的な絵を描けば・・・

最終的に、Jリーグとか、なでしこリーグとかもありなのではないかと。あるいはもっと、ほんとにいい環境作りを進めていくことで、自分の生活のベースも作れるんじゃないかなっと思って踏み込みました。

坂口:そこから始まったわけですね。

石川:そのあと、SMCを受けたんですよ。
大学院の2年間で、クラブを立ち上げて、修士を修了したときに、立ち上げを教えてくれた先生がこういうのあるぞ、ってJFAの理事会の資料を見せてくれました。それ、ぜひ行きたいですって言って、申し込みました。第1期でしたね。

坂口:第1期は年上の人が多かったですね。

石川:そうですね。

『2011年度SMC本講座 つくばFC視察の様子』

坂口:その中で、20代は石川さんだけみたいな感じでしたよね。SMCを受講されて、その後、つくばFCで活動していく中で役立っていることはありますか?

石川:役立っていること・・・
いちばんは、人のつながりです。全国どこに行っても知り合いがいます。やっぱり情報、集めないと。ぼくらも結局いろんなことの組み合わせで、サッカークラブを良くしていこうと思っています。なにか発明しようと思っているわけじゃないし、真似できるものは真似して。

ほかの地域の真似をするのがいちばん楽ですし、ほかのスポーツから真似してもいいと思います。真似するためには情報を集めなければなりません。情報を集めるにはネットでもいいのですが、どうしても表の情報しかありません。裏の、本当の情報を教えてくれる人とたくさん出会えたっていうのが、SMCのいちばんの成果です。

その4 世界一しあわせなクラブ

坂口:今後、やっていこう、展開しようと思っていることをお話していただけますか?

石川:今、女子のアカデミーを計画中です。まずは、女子の中学生対象の。JFAアカデミーがありますが、あそこはすごく、エリート。
あれもすごく大事な考え方で、ぼくらもぜひ、その概念というか、考え方を継承しつつも、もっと地域に密着したアカデミーを構想しています。茨城からのヒロインを作るような。選抜するのもなるべく、このローカルなところが優先されるような。

日本中からいい選手を集めるんじゃなくて、なるべくローカルで。最低条件やる気があるってことですけど。やる気があって、茨城から11人とか15人とか集まればそれでOK。集まらなければ、次に関東に拡げて、全国に拡げてって形で。そんな地域密着のアカデミーを茨城県内で開設したいなと。

それをきっかけに、そこに総合型のスポーツクラブもつくりたいなと思います。そこで、人材育成というか、専門学校とかそういったものも最終的にはつくりたいですね。人がいちばんの財産なので。
人に関わる、人の育成に関わるようなものを、そこで展開していきたいなと思っています。

坂口:茨城のどこで計画しているんでしょうか?

石川:茨城の小美玉市です。それは、茨城空港があるところで、非常に自然が豊かで、グラウンドも何面でもつくれそうな、非常にいい場所です。
ただ土地があるだけでは難しくて、考え方を共有してくれて、お金を出してくださる方がいまして、その方が自分の退職金も何もかもつぎ込んで一緒にやってくれると言ってくださったので。その方と、一緒にやりたいなと思います。

ただ、その方の信頼を得るのも簡単ではありませんでした・・・
その方にもこのグラウンドに何回も足を運んでいただいて、地道な活動を近くで見ていただきました。この人工芝もその方の会社と一緒に共同で開発しました。そういう方なので、一緒にやってもいいよって言ってくださったのだと思います。

すごく思うのは、自分でなにか先に始めるから、あとから周りが応援してくれるっていうか。それは地域の企業さんも一緒で、こっちが先にしてあげれば、それがほんとに気に入ってもらえれば、あとからちゃんと応援してもらえるものだと思うんです。それを、今回の小美玉で計画してい
るプロジェクトでもうまく活かしながらやれればいいなと思っています。

坂口:SMC第1期生で、こうやっていろんなものをゼロから作りあげて、パイオニアとして活躍している石川さんの背中を見ている人がいっぱいいます。今後も頑張ってほしいなって思います。

石川:最近、日本クラブユースサッカー連盟で、講演させていただく機会があります。ぼくは話を聞かれる側なんですけど、反対にぼくの話を聞いた人たちからも、うまく話を聞き出そうと頑張っています。
ぼくもネタを探しているんで。 笑
そういう交流を続けたいなって思ってますね。

なんて言うんですかね。アイデアはいくらでも欲しいですし、ぼくがやりたいのはやっぱり、ネットワークづくりなんです。ネットワークづくりから、世界中の人をスポーツでしあわせに、というか、ぼくら、つくばフットボールクラブって「つくば」付けてますけど、ぼくらが目指しているのは、世界一しあわせなクラブ。

世界一しあわせなクラブをつくりたい、という理念があります。
その理念は、つくばだけにとどまるものじゃないですし、広がらないと世界一は難しいので、そのためにもネットワークづくりを、進めていきたいなって思っています。

坂口:ありがとうございました。

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