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[復興支援活動]手倉森 浩 復興支援特任コーチ 活動レポート(6月)
2014年07月03日
JFAは復興支援活動の一環として、福島県のトレセン活動をサポートしてきましたが、2013年からは5地区6ヶ所のU-12トレセンの活動のサポートを行っています。いわき地区のトレセンは、JFAアカデミー福島の布啓一郎スクールマスターを中心に、同アカデミーのコーチ陣が支援担当しており、2014年からはとナショナルトレセンコーチ東北担当と私もサポートに入っております。
今回のトレセンは6月17日に、いわき市の鹿島小学校と中央台北中学校グラウンドで実施されました。今回は、私がU-11年代を担当し、東北ユースダイレクターの山崎茂雄コーチがU-12年代を鹿島小学校で指導し、ナショナルトレセンコーチ東北担当の菊池利三コーチがU-13年代を中央台北中学校グラウンドで指導しました。私にとっていわき地区のトレセンは初めてでしたが、関係者の日頃の取り組みのおかげでトレーニングもスムーズに進み、それぞれのテーマを意識して、参加者全員が楽しく、一生懸命、取り組んでくれました。
今回、地元のスポーツ少年団の活動も見てみたいと思い、前日にいわき市入りして植田サッカースポーツ少年団(植田SSS)と勿来フォーウインズの合同トレーニングにお邪魔しました。
トレーニングの会場は、眺めの良い小高い丘に位置する植田小学校。震災前はナイター設備もある、広くてサッカーをするには十分なグラウンドでしたが、東日本大震災が起こった当時は地面が陥没し、体育館も損壊して使えない状態でした。
震災から1年半後にグラウンドが整備され、体育館も使用できるようになりましたが、グラウンドにはところどころに異なる色の土が敷かれていて、震災の爪痕を色濃く残していました。
トレーニングは鬼ごっこから始まり、パス&コントロール、ポゼッションなどを行いました。全員が集中してやってくれました。両チームのコーチがトレセンスタッフですので教え方も非常にうまく、子どもたちも飲み込みが速かったです。トレーニングの最後には学年ごとにゲームをしました。子どもたちも明るく元気にプレーしてくれて、とても良い雰囲気でした。異なるチームのスタッフ同士が子どもたちのことを考え、こうして合同トレーニングを実施するなどして、子どもたちに良い刺激を与えているのが印象的でした。
いわき市は福島県の沿岸部に位置しており、東日本大震災では津波の被害も受けました。植田SSSの坂本秀行コーチの話によると、3年前の震災の時、子どもたちは地面が割れて崩れている光景を目の当たりにしたそうです。「怖い、もうサッカーができなくなる――子どもたちの気持ちが折れる瞬間でした」と、坂本コーチは沈痛な面持ちでその時のことを語っていました。
校庭が元通りになり、ようやくサッカーが出来るようになったのは、翌年の夏休み明け。約1年半、校庭が使えない間、チームは、近所にある東田中央公園で練習をしていたそうです。もちろん、ゴールはない、ナイター照明もなく、小さな街灯が数個あるだけ。そんな不自由な中での練習でしたが、子どもたちはサッカーができる喜びでいっぱいだったといいます。
「今でこそ、学校に通うことができ、サッカー活動もできるようになりましたが、当時は屋外での活動時間が制限されたり、毎回、公園の隅々を線量計で測って放射線量を確認してからでないと練習できなかったり、あるいは、少しでも雨が降ってくれば練習を中止しなければならないなど、大変な日々でした。今のチームがあるのは、震災後の初練習で誰一人欠けることなく参加してくれたことと、選手・保護者・指導者が団結し、震災前以上に助け合いながら活動ができたことが大きい」と、坂本コーチは言います。
震災から1ヶ月も経たない頃、植田SSSのOBの高萩洋次郎選手(サンフレッチェ広島)が練習場所の東田中央公園まで激励にきてくれたこともあったそうです。この時のことを坂本コーチは、「不安に押しつぶされそうになりながらも、前を向いて歩こうとしていた子どもたちに(高萩選手は)大きな安心と希望を与えてくれました」と、感慨深く振り返っていました。
坂本コーチは言います。「立ち止まるのも自分たち次第なら、歩みを進めるのも自分たち次第。未来ある子どもたちを見ていて、私たちサッカーに関わる大人がすべきことは、子どもたちにサッカーを思いっきり、やらせてあげられる環境を整えてあげることだと考えます。その中で、子どもたちが明るい未来を見据えて、希望をもって生活ができるように復興が進んだらと切に願っています」
このいわき地区でのトレセン支援は、選手、指導者がサッカーに関する理解をより深め、また、普段、あまり接点のない2種・3種指導者に、4種の活動を見てもらう良い機会になったようです。坂本コーチは、「いわき地区のトレセン活動全体が活性化するきっかけになりました。今後も、親交を深めながら、トレセン活動を通じて子どもたちの気持ちを盛り上げつつ、復興に向けて歩んでいければと思います」と、清々しい顔で話していました。