ニュース
【JFAこころのプロジェクト「夢の教室」15周年企画】「子どもたちの普段見ない姿や力を引き出してくれる」自治体座談会
2022年09月21日
JFAこころのプロジェクトは2007年4月19日に第1回の「夢の教室」の授業が行われ、今年で15周年を迎えました。ここでは自治体の皆さんによる座談会を実施し、プロジェクトを取り入れた経緯や感想を聞きました。
○オンライン取材日:2022年8月19日
参加者
清水衆さん(長野県高森町教育委員会事務局 局長補佐 兼 学校教育係長)
五百蔵実さん(岡山県高梁市教育委員会 スポーツ振興課スポーツ振興係)
田谷寿之さん(茨城県小美玉市役所 文化スポーツ振興部スポーツ推進課)
(以下敬称略)
――皆さんの自治体は、どのように夢の教室をスタートさせたのですか。
清水 高森町では当時の町長の下、子どもたちの学びに力を入れていくというはっきりした政策がありました。一流のアスリート、その競技でトップに立った人たちの経験を生の声で聴かせたいという思いが、担当者にもありました。実は、当時のその担当者が、今の町長です。良い形でご縁が続いているということですね。
五百蔵 高梁市の当時の担当者は、私と同じように教員をしていた頃、一通の手紙を受け取りました。JFAからだったのですが、宛名が手書きだったのと、内容も面白そうだと感じて印象に残ったそうです。翌年に今の私と同じ部署に異動すると、見覚えのある手紙を受け取りました。宛名が手書きで、中身はやはり夢の教室の案内でした。内容も変わらず熱い文面で、気持ちも見事に合致して、実施に至ったそうです。
田谷 スタートは東日本大震災の翌年です。小美玉市は海沿いではないのですが、茨城県内でも被害が大きかった沿岸地域で、日本サッカー協会などにより復興支援の目的で開催されていたスポーツこころのプロジェクト「笑顔の教室」※で子どもが笑顔を取り戻しているという話が伝わってきました。子どもたちはゴールデンエイジと呼ばれる身体能力や運動能力が著しく発達する時期でもありますので、夢の教室をぜひ当市でも実施していただきたいということになりました。
――授業をご覧になった感想はいかがですか。
田谷 私が担当になってから、コロナ禍でのオンライン形式しか実施されていません。本当は対面式で行いたいのですが、子どもたちに「今から東京とオンラインでつなぐよ」「どんな先生かな?」と話し掛けると、授業が始まるのをとても楽しみにしている姿が印象的です。大きな横断幕を作成したり、画面に映る夢先生と一緒に写真を撮る子どもたちもいます。お礼の気持ちを寄せ書きにして、JFAに、さらには小美玉市にも送ってくれたことがあります。
清水 最初に授業を見た時は、子どもたちと一緒に体を動かして、レクリエーションのようなものなのかと思っていたのですが、会場が教室に変わり、夢先生の話しが始まると、子どもたちの目の色が変わっていくのが分かりました。トップアスリートを前に、最初はミーハーな気持ちもあると思うのですが、苦労や努力の体験談を聞くうちに、どんどん真剣な目つきになっていくんです。また、授業ではありませんが、送迎する車内での夢先生とスタッフの話し合いが印象的でした。とても「夢の教室」の内容を真剣に考えていて、熱量がすごいんです。こうして話を聞ける子どもたちは幸せだな、と思いました。
五百蔵 「子どもたちに伝えたい」という思いが、すごく強いですよね。中には話が得意ではない先生もいらっしゃいますが、思いは子どもたちに伝わっています。子どもたちは、いろいろなところから感じ取っていますから。それに、以前に来ていただいた夢先生と再会すると、子どもとの接し方や伝え方など、グレードアップを感じます。清水さんがおっしゃるように、夢先生とスタッフの熱量はものすごくて、授業の合間のランチタイムにも「あそこはこうした方がよかった」と話し合って、どんどん良いものを取り入れようとしてくれます。ユニークな口調で情熱的に語って、斜に構えがちな中学2年生を吸い付くように聞き入らせる夢先生もいますよ。
田谷 私はやはり対面式を経験したいのですが、オンラインの良いところもあります。去年、みんなと一緒に授業を受けることが苦手な生徒がいて、JFAにフォローしてもらい、その生徒だけ別室から参加できるように対応してもらいました。さらには全体での授業終了後、夢先生がその別室の生徒とマンツーマンで話をしてくれました。担任の先生は「オンラインだと、こういうこともできるんですね」と感心していました。普段あまり話したり笑ったりしない子が挙手して発表をしたり、夢の教室では普段とは違う姿が見られると、クラスを受け持つ先生たちは話していました。
清水 普段はおとなしいお子さんが、授業の最初に体を動かすことで、自然と入り込める姿を目にできました。夢先生がクラスに入ってくれることで、子どもの良いところが引き出されたり、何かを乗り越えるきっかけになることがあるようです。
五百蔵 普段見ない姿や力を引き出してもらえるという声が一番多いですね。それに、先生自身が夢先生の生き方に感銘を受けたという声もよく聞きます。子どもの頃に夢の教室を受講した、という先生が出てくるようにもなりました。今でも夢シートを持っている、と話していましたよ。私の子どもも、しっかり保管しています。今後も長く続けて、高梁市民が親子で自分の受けた夢の教室の話をできるようになったら面白いな、と思っています。
清水 高森町では、最初に夢先生の授業を受けた子どもたちが2年前に成人式を迎えました。それをきっかけに、子どもの頃に書いた夢シートを印刷して、新成人に配るということを始めました。目標が変わっていてもいいのですが、夢を実現するために自分は何をしてきたのかな、とか、書いた当時の夢を追いかけている気持ちを思い出してほしいという狙いがあります。
五百蔵 高梁市では、授業をしてくれた夢先生を10年後にお呼びして、当時の子どもたちと大運動会をやれたらいいな、という話が出たことがありますよ。
田谷 子どもたちの夢のその後を追う、というのは面白いですね。夢先生をお呼びして、スポーツ教室もやってみたいです。そういう関係を築くためにも、対面式での実施を楽しみにしています。
夢の教室実施実績
長野県高森町
スタート年:2009年度
実施回数/対象人数:2009~2021年度末まで(13年間) 60クラス 1,769名
岡山県高梁市
スタート年:2011年度
実施回数/対象人数:2011~2021年度末まで(11年間) 183クラス 4,115名
茨城県小美玉市
スタート年:2012年度
実施回数/対象人数:2012~2021年度末まで(10年間) 192クラス 5,616名
※スポーツこころのプロジェクト「笑顔の教室」は、東日本大震災復興支援を目的に日本サッカー協会が、公益財団法人日本体育協会、公益財団法人日本オリンピック委員会、一般社団法人日本トップリーグ連携機構の3団体とともに2011年度(学校年度)から、青森、岩手、福島、茨城、千葉の6県55自治体を対象に2021年3月31日まで行っていた活動です。