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UEFA Assist プログラム、女性を対象にリーダーシップ研修を実施
2023年03月28日
日本サッカー協会(JFA)は3月20日(月)、21日(火)に、「UEFA Assist プログラム」の一環として、サッカーに関わる女性を対象としたリーダーシップ研修をJFAハウスで開催しました。
UEFA Assist プログラムは、ヨーロッパサッカー連盟(UEFA)が2017年にスタートさせた育成プログラムで、UEFAやその加盟協会の持つ経験とノウハウを世界各国のサッカー協会に提供しようという取り組みです。日本においては、2018年と2019年にJFAコーチの指導者研修の場として開催され、2020年以降はコロナ禍の影響でオンラインでの開催となりましたが、WEリーグの開幕に向けて、女子リーグのマーケティングやプロモーション、クラブ経営、女子サッカーの普及拡大の事例などについて学ぶ機会となりました。対面形式での開催は4年ぶりとなります。
この2日間のプログラムは、女性のリーダーシップやマネジメントスキルの向上を目指すことを目的としたもので、選手、指導者、大学生、クラブスタッフ、WEリーグやJFAの職員といったさまざまな立場で女子サッカーに関わる24人が参加。講師はUEFAのPriscilla JANSSENSさん、Chris MILNESさん、Eva Pasquierさん、Jarmo MATIKAINENさんが務めました。
女性のリーダーシップは現在、UEFAと国際サッカー連盟(FIFA)も積極的に発信しているテーマの一つです。サッカー界および社会全体を良くするためには、さらに多くの女性が関わっていくことが必要であると考えられています。プログラムの冒頭、JFA女子委員会の今井純子副委員長は「世界から学ぶことは大事なこと。日本では社会に参画している女性がとても少ない。世界でも取り組まれているこの課題に我々はもっと取り組んでいかなくてはならない。もっともっと女性が当たり前に関わっていける社会にしたい」と話し、参加者の意識を高めました。
UEFAの講師からはFIFA女子ワールドカップ2019のスローガン「DARE TO SHINE(勇気をもって輝こう)」が紹介され、プログラムでは、それぞれがコンフォートゾーン(これまでの快適な空間)を抜け出して積極的に学び、交流し、発言し、行動するよう求めました。その中で参加者が発言する際には、人前で話すときの見せ方や振る舞い、意識すべきことなどについても細やかなアドバイスがなされました。
参加者たちはプログラムを通して、自身の5年後のキャリアを考え、そのために何をすべきなのか、女性および自身がキャリアを築く上で障壁となっている外的・内的要因は何か、それに立ち向かうためにはどうあるべきか、日本サッカーにおいて女の子や女性がサッカーをプレーする、またはプレーを続ける上で障壁となっているものは何か、などについて考え、意見を交わしました。UEFAの講師は「まずは自身を取り巻く障壁に気づくことが大事。その障壁があることを当たり前と思わないこと。(自分が何をしたいのか)自身に正直でなければ、壁を打ち破ることはできない」と話し、壁を打ち破るためには声を上げること、仲間を増やすこと、コンフォートゾーンを抜け出して時に居心地の悪い思いをすることも受け入れることが必要であるとし、それらが自身の成長につながると伝えました。参加者からは「これまで外的障壁だと思っていたものが、実は内的障壁だったのかもしれないと気づいた。これからの行動に移していきたい」といった声も聞かれ、それぞれの意識に変化をもたらす機会となりました。
グループワークでは、「日本でサッカーをプレーする女の子を増やすためにはどうしたらいいか」「女性がコーチになるようモチベートするにはどうしたらいいか」「なでしこジャパンが再び世界一になるにはどうしたらいいか」という3つのテーマから1つを選び、各グループでプレゼンテーションをする機会も設けられました。約15分という短い時間ではありましたが、各グループでまとめられた提案とプレゼンテーションの方法にはそれぞれ個性が見られました。
そのほかUEFAからはネットワークを構築することの大切さやツールの紹介、成功に導くための交渉、タスクのタイムマネジメントなど、さまざまな情報やスキルが共有されました。プログラムの最後には、講師から「この2日間は変革を起こすための土台をつくる時間。この土台の上に、これからも一つ一つジェンガのようにしっかりと積み上げていってもらいたい。皆さんの交流を深めていけば、一人で戦うよりもパワーを増やすことができる」とエールが送られました。また、今井副委員長は参加者たちの今後の活躍に期待を込め、「今回学んだことをやり続けてほしい。私自身にも大きな学びがあった2日間だった。人と一緒に学ぶことで刺激になることは多い。必要以上に自分たちを低く見せないこと、そうやっていま当たり前になっている障壁を一つずつ解きほぐしていけば、いつか女性が活躍する社会が当たり前になるときが来ると思っている」と話しました。
UEFA Assist プログラムは3月23日(木)、24日(金)にも行われ、JFAやWEリーグ、WEリーグクラブの経営層、JFAコーチらが女子サッカー発展のためのワークショップに取り組みました。
参加者コメント
林香奈絵さん(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース選手)
今回UEFA Assistのワークショップに選手の立場で参加し、多くのことを習得できました。私がとても印象に残ったことは、リーダーとしての立ち振る舞いや伝え方です。リーダーとしての自覚・責任を持ち、そして自信をもって行動・発言をすることなど、リーダーのあるべき姿を深く考えられました。UEFAの講師の方々が世界を通して経験してきたことから直接得た学びや、このワークショップで習得したことを、所属クラブやこれからのサッカー人生で実行できるように努めていきたいと思います。
筏井りささん(フットサル日本女子代表選手)
この度はこのような研修に参加させていただき、とても有意義な時間を過ごさせてもらいました。
講師の方々もそうですが、一緒に参加された方も選手や指導者、協会、WEリーグの事務局の方や学生までフットボール界を良くして行きたいという意志の強い方ばかりで、学びと刺激の連続でした。研修の中では、情報や知識の面だけではなく、実際の振る舞いやすぐに変えられることも多く、自分にすぐに落とし込めることばかりでした。今回フットサルの選手の代表として参加しましたが、女子サッカーの環境の変化や目指すべき状況のために多くの人が動いていることを感じました。選手として、1人の人として、フットボール界のために小さなことでも、アクションし続けるようにしたいなと思います。貴重な機会をいただきありがとうございました。