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[女子チームのつくりかた]Jリーグの取り組み 中野幸夫専務理事 インタビュー

2010年03月16日

[女子チームのつくりかた]Jリーグの取り組み 中野幸夫専務理事 インタビュー

女子チームの裾野を広げるためにさまざまな活動をしてきた日本サッカー界。現在、Jクラブで女子チームを保有しているのは栃木SC、浦和レッズ、ジェフユナイテッド千葉、東京ヴェルディ(日テレ・ベレーザ)、ジュビロ磐田、アルビレックス新潟、大分トリニータの7チーム。2010年度からはザスパ草津、セレッソ大阪が新たに女子チームを発足させる。スクール活動という形ではすでに多くのクラブが展開しており、その中に女子選手が参加しているケースも多かったが、今後はJリーグとして正式に“女子”の普及と育成に取り組んでいくことになった。
この流れを受けて、自身もアルビレックス新潟でレディースチームを立ち上げた経験を持つJリーグ中野幸夫専務理事に話を聞いた

中野専務はご自身がいらしたアルビレックス新潟でレディースチームを立ち上げた経験をお持ちですが、“女子サッカー”にどのようなイメージをお持ちですか?

2004年に何もないところから新潟にレディースを立ち上げ、そのときに初めて女子サッカーに深く触れました。近年のなでしこジャパンの活躍などを通じて女子サッカーをさらに身近に感じていますし、この活躍を頼もしくも感じています。

新潟でレディースを立ち上げたときのお話を伺えますか?

当時はLリーグと呼ばれていた日本女子サッカーリーグですが、もちろん現在もそうですがプロリーグではなくアマチュアリーグですから、いろんな背景を持つチームがありました。新潟は本当に“女子”という分野ではゼロからのスタートだったんです。でも、Jリーグの試合にはスタジアムに足を運んでくれる方々が増えて、サッカーを知るという環境が広がってきていました。その中でフットサルが浸透したり、ボールを蹴ってみたいという人が増えてきたりして、それで楽しくプレーしたいという人たちを増やしていきたいと思ったのがきっかけです。現在ではなでしこジャパンに選ばれる選手も出てきましたが、当時は本当に選手がいなくて大変な思いをしました。

すでにJクラブとして男子チームが存在していた新潟ですが、女子チームを持つということは男子のケースと大きな差はあるのでしょうか?

私個人としては同じだと思います。男子もJリーグに参入するときはスポンサー探しも大変でしたし、選手を集めることも大変でした。女子も同じ。ただ、“女子”を支援してくれる構造は必要です。新潟でそれをやってみようと思った訳です。女子選手には特有の魅力があります。一つ例を挙げるとすれば、女性はキッズ受けがいい。ですから新潟では女子の選手たちに、地域貢献の一つとして幼稚園の普及活動に積極的に参加してもらいました。そういう面でも女性の果たす役割は大きい。Jクラブが地域に根を張る一つのきっかけとなりました。

Jリーグとして女子の普及に着手するきっかけとなったのは何だったのでしょうか?

なでしこリーグやなでしこジャパンの活躍を見て、女子サッカーに潜在的な可能性があることは認識していました。一方で、小学校でサッカーをしていた女子選手が中学校に入るとサッカー部がない、中学生年代の女子選手の受け皿が限られているという実態もありました。近年の女子サッカーの盛り上がりからしても、力を注ぐべき時期であることは明白です。なでしこリーグとしても強化の一環として再編成に着手したりしていて、なでしこリーグからの強化・発展面での協力要請もありました。Jリーグが力を入れて動き出す時期として、女子の良さと必要性を訴えていきたいと思っています。

今年度からJリーグのプロモーションに“女子の普及”が組み込まれるということですが、具体的なアプローチはありますか?

Jリーグの観客の約40%が女性というデータが示している通り、Jリーグにとっても女性へのアプローチは非常に重要です。Jリーグをより身近に感じてもらうためにも、スタジアムに来ていただける女性や、身体を動かしたいと感じている地域の女性に実際にサッカーをする機会を提供するなどして、女性との接点をこれまで以上に増やしていくことが必要だと感じています。具体的には、Jリーグの試合にサッカースクールなどのイベントを付帯したり、女性プレーヤーがプレーする場所を提供するフェスティバルを開催したりしたいと思っています。

さらに、Jクラブのアカデミーに所属する女性指導者を対象にした研修を実施します。選手たちが最初に触れ合うのが指導者です。女性指導者がお手本となり、憧れの存在になれば、選手たちはついていきます。また、女性指導者がこの研修を通じて同じ立場の指導者たちと交流し、意見交換をすることで自らの資質を向上させることもできるはずです。それぞれのJクラブがホームタウンと連携しながら、地域における女子サッカーの普及・発展のシンボル、推進役となってくれることを期待しています。

Jリーグとして今後の女子の普及について期待すること、ビジョンなどはありますか?

「Jリーグ百年構想」では誰もが年齢、体力、技能、目的に応じてスポーツを楽しめる環境を作ることを謳っています。女子サッカーの普及と発展を通じて、ますますスポーツを「観る」、「する」、「参加する」という営みが一般的なものとなり、一人でも多くの女性プレーヤーがサッカーに親しむことのできる環境を実現したいと思います。Jクラブが女子チームを持つことは、間違いなく普及・発展への近道です。

Jリーグ、なでしこリーグには共通してやれるものがたくさんありますが、ただ我々が忘れてはいけないのは、男女の特長を生かしたそれぞれのビジョンを持っているということ。両リーグの協力関係は必要ですが、必ずしもイコールである必要はないんです。なでしこリーグも発展のために強い方向性を持つという意識が大切になってくると思います。

普及と強化は矛盾する部分もあります。いきなり両方を得ようとすることは難しいことですが、目指すはこの両方です。広い裾野の中にいい選手が存在する。そして地域のカラーもあります。育成年代からのチームでもいいですし、いろんなタイプの女子チームをスタートさせていいと思うんです。そのためには選手はもちろん、監督、コーチ、マネージメントなど、関わる人それぞれの立場での組織作りが必要になると思います。各クラブも不採算部門として見るのではなく、どうやって採算を取っていくか考えることがポイントとなるでしょう。裾野がないのに高みを作ろうとしても不安定です。安定なピラミッドを作るためにJリーグとしては受け皿を作っていきたいと考えています。

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