JFA.jp

JFA.jp

EN
ホーム > 女子サッカー > 最新ニュース一覧 > [女子チームのつくりかた]うないFC(沖縄県中頭郡北谷町)うないFC 佐久本盛正監督に話を聞きました。

ニュース

[女子チームのつくりかた]うないFC(沖縄県中頭郡北谷町)うないFC 佐久本盛正監督に話を聞きました。

2010年03月30日

[女子チームのつくりかた]うないFC(沖縄県中頭郡北谷町)うないFC 佐久本盛正監督に話を聞きました。

チームを立ち上げようと思ったきっかけは?

沖縄県女子U-12選抜のチームが2002年の九州大会で優勝し、沖縄県勢として初の全国大会へ出場しました。このとき、私の娘も選手一人として出場し、試合でみんなが一生懸命プレーする姿を目のあたりにしたんです。全国大会では残念ながら予選リーグで敗退してしまったんですが、その悔しさもあり、選手から中学へ進学してもサッカーを続けたいという声が上がりました。その希望を叶えるために、じゃあみんなで集まってトレーニングをやってみようかと「うないFC」を創部しました。

立ち上げに至るまでの流れを教えてください。

トレセン活動をきっかけに生まれたということもあり、沖縄県女子U-12選抜の選手を中心に毎月の第1・3土曜日に小学校の体育館で練習を行いました。最初に集まったのは10名弱。そこで選手たちのやる気を観察したんです。どれだけサッカーに本気で取り組めるのかと。半年間見ていて選手たちのがんばりが変わることがなかったので、これなら大丈夫だろうと2003年4月にクラブチームとして日本サッカー協会へ登録し、「うないFC」として17名で活動を開始することにしました。当時、県内の女子登録チームは、クラブチームが2チーム、高校女子サッカー部が8校程度活動していたと思います。

これまでに生じた最大の壁はどんなことでしたか?

当初は沖縄県内各地から女子選手が集まってくるため、特定したホームグラウンドをおさえるのが難しく、毎日の練習場確保に苦労しました。今は県営の室内人工芝グラウンドなど、一応コンスタントに確保できています。とはいえ、土日はいろんなチームに練習試合を組んでもらって、相手チームのグラウンドに移動して活動をするという状態は、現在も変わっていません。
最近では県内各地域にいくつかチームが作られて、選手も分散しています。うないFCは中部地域で活動をしていますので、通ってくる選手たちも30分から1時間位の移動で集まることができます。しかし、沖縄では交通手段が車しかないので保護者の送迎がないと集まれない、その負担は大変です。本当に保護者のみなさまには感謝しています。

独自のアイデアというものはありますか?

創部当初からうないFCは全国大会出場を目標に活動しています。スタッフも常に高い意識を持って日々のトレーニングの臨むように指導しています。そういった意味では、選手たちも理解してくれていると思っています。特にこの春に卒業していった選手たちは全国大会を経験しているため、自分たちに何が必要なのか、自分たちはどのポジションに立とうとしているのかという高い意識を持っていました。こういう意識は下級生の選手たちにもつなげていかなければいけないと思っています。

創部4年目で全日本女子ユース(U-15)選手権大会へ初出場して全国3位。その後、3年連続全国大会出場を果たしましたが、ここ2年は九州予選で3位の成績で、あと一歩で全国大会出場を逃しています。それはこういった日々の意識の部分が影響しているのかもしれません。オン・オフをしっかりと分けて、集中してトレーニングに自ら臨んでいくように持っていきたいですね。

また、組織の体制も充実しています。指導は、私がGKをしていたので監督兼GKコーチを務め、他にも2名のコーチと女性のトレーナーの4名体制で活動をサポートしています。特にU-15年代は身体が変化していく時期です。うないFCでは年に一度、合宿の時に沖縄県サッカー協会の中に創設されている医科学委員会から管理栄養士やトレーナーなどを派遣してもらってレクチャーを受けるようにしてるんです。そして日々の生活やトレーニングなどで生まれた疑問や不安などは、近くにいる自チームの女性トレーナーにいつでも相談できるような環境になっています。

チームが始動してから生じた課題とそれに対する取り組みを教えてください。

県内のU-15年代のクラブチームが徐々に増えてきたため、選手の確保が難しいということでしょうか。トレセン活動などを見ていても、県内にはU-12年代の選手が40~50名がいます。しかしトレーニングへ向かう移動が足かせとなっていることもあり、普段は部活動などで男子とともにトレーニングをして、女子の大会のあるときに集まるという形態で活動するチームが増えてきました。ただ女子チームとして継続的にトレーニングできる環境は十分とは言えないと思います。うないFCも選手が分散していっているため人数は減少傾向にありますが、選手たちにはがんばれば自分たちも高いレベルにまで上がっていけるんだということを実感し、ステップアップすることを知ってもらいたい。その楽しさを一度でも感じることができれば、サッカーを続けたいと思う人は増えるのではと・・・。

また、うないFCは小・中学生年代が主体のチームで、高校進学と同時に高校の部活動で活動する選手が増えているため、U-18年代への繋がりが難しい現実もあります。全日本女子ユース(U-18)選手権大会沖縄県予選に年代を超えて出場し、カテゴリーが上のチームの中で3連覇を果たすことができているので、その年代の育成にももっと取り組んでいかなくてはならないと思っています。

これからチームが目指すビジョンとは?

全国大会出場を目標においてチームづくりを推進しています。いろんな声もありますが、こんなに小さな沖縄県でも、努力すれば結果は付いてくると選手たちが自信を持つことが大事だと考えています。また、全国にはいろいろな特性を持った選手がたくさんいます。それを自分の目で確かめて、上を目指してほしいという思いがあります。だからこそ、全国大会出場を狙えるような本気のチームづくりをしたいと思っています。

地元のチームであるFC琉球にラモス瑠依さんが来たときに、「沖縄の選手たちには独特のリズムがある」と言われたことがありました。全国大会に行ったときにも似たようなことを言われたんです。沖縄には力を秘めた選手がたくさんいます。でも、高校・大学生になると県外へ出てしまう選手が多く、沖縄県全体で高いレベルでサッカーを続けられる環境が整ったら、“沖縄らしいサッカー”を沖縄で成長させることができるかもしれない。そんなサッカー環境が根付いていくようにがんばりたいと思います。

チームトレーニングレポート

沖縄県の中部で活動をしているうないFCのトレーニングは木曜~日曜の週に4日です。木曜は県内の屋内人工芝コートで、金曜は状況によっては学校のグラウンドなどで自主トレーニングの場合もあるとのことですが、週末はゲームがメインです。グラウンドの手配が難しいということもありますが、ゲームから吸収することも多く、土日に行われる他チームとのトレーニングマッチはうないFCにとって大切な要素となっているようです。

 この日は木曜日。19時~21時まで室内でのトレーニングです。全員がそろってランニング、ステップワーク、股関節のストレッチなどを織りまぜてウォーミングアップ。そしてボールを使用してのトレーニングへ。80m四方の人工芝のピッチを4等分。その1つがうないFCのトレーニング場となります。シュートに持ち込むことをテーマに3対3、4対4のミニゲームを行いながら、その中で守備にも目を向けて指導していきます。すべての選手が攻守のポジションに入りながら、集中したトレーニングが続きました。

 年間でいうと、うないFCの活動はとても活発です。1月が基本的にオフになっていますが、2、3月は走り込みを中心にしたフィジカルトレーニングに力を入れて、4月~12月はU-15の大会からフットサル、U-18年代の大会まで毎月何かしらの大会に出場しています。その月ごとに新たな目標と課題が生まれる環境に身を置くことで、より効果的なステップアップを目指しています。
 指導者の方々も、キツいトレーニングメニューのときには選手といっしょに走り、コーチたち自身も指導者ライセンスを取得したりと自らがんばっているところを選手たちに見せているそうです。いっしょに歩んでいる実感があるからこそ、厳しいトレーニングも乗り越えることができるのでしょう。

 4月から中学3年生になる知念怜弥さんは「U-15の全国大会に出場してベスト4に入ることと、沖縄県の国体メンバーに選ばれて多くの試合に出て活躍することが目標です。なでしこリーグのトレーニングや試合を生で見てみたいし、いっしょにトレーニングとかできたらすごく嬉しい!」と語ってくれました。高校3年生の上原鈴香さんは今もうないFCでボールを蹴っています。「相手との駆け引きで、数学のように正しい答えがないからこそいろんな答えを出したくなる、どんどん追求したくなる、サッカーにはそんな魅力があると思います」と力強く答えてくれました。

 真剣に勝ちにこだわり、トップを目指す。トレーニングは厳しいかもしれませんが、その先にある目標を選手たちはしっかりと見据え、今何をやるべきかを理解しています。そして結果を手にした時の充実感が計り知れないことも選手たちは知っているのです。「せっかくがんばってサッカーをやっているんで、続けさせてあげたいですよね。どうせやるならば本気で! がんばった分、結果が伴うと大きな喜びが生まれます。高いレベルに行けばまたそれが大きくなる。そして月日が経ったら彼女たちもお母さんになります。その子供たちはきっとサッカーが大好きな子供に育つのではないでしょうか。また、沖縄県内で高いレベルのサッカーを続けられる環境が整っていけば、沖縄らしい特長のあるサッカーというものが育っていくと思います。そんな未来になるように、頑張っていきたいと思っています」とは佐久本監督。

 指導者、選手が1つになって目標に向かっているからこそ、目標に近づくことができるのだと改めて感じさせてくれたうないFCでした。

アーカイブ
NEWS メニュー
JFAの理念

サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、
人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献する。

JFAの理念・ビジョン・バリュー