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【Match Report】なでしこジャパン、チーム初陣は課題と収穫を得た黒星に

2021年11月26日

【Match Report】なでしこジャパン、チーム初陣は課題と収穫を得た黒星に

なでしこジャパン(日本女子代表)は11月25日(木)(日本時間26日未明)にオランダ・アルメレで行われた国際親善試合でアイスランド女子代表と対戦し0対2で敗戦、池田太監督体制初陣は黒星となりました。

11月22日(月)にオランダに到着したチームは、2部練習も含めた計3回のトレーニングを経てアイスランド女子代表との一戦に臨みました。今回初めて海外でプレーする選手が合流し、10月に行われたトレーニングキャンプからのさらなる積み重ねを図っている今回の遠征。2022年1月に迎えるAFC女子アジアカップインド2022の戦いも見据え、対戦相手の分析をゲームに落とし込む作業も行いながらこの日の試合へと準備を進めてきました。アイスランド女子代表に対しては過去3度の対戦を全て勝利してきましたが、チーム全体として力強く、サイドにパワーとスピードの特長を持つ相手との一戦は、新チームの現在地を知る貴重な試金石となります。いかに相手の良さを封じ、そして自分たちのコンセプトとする「奪う」プレーを攻守で表現するかに意識を注いで試合に向かいました。

1-4-4-2の布陣を採ったスターティングメンバーには、この試合が代表初キャップとなる成宮唯選手(INAC神戸レオネッサ)が名を連ね、また中盤の中央には初の先発出場となる長野風花選手(マイナビ仙台レディース)を起用。FWに入った植木理子選手(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)も同じくなでしこジャパンで初めての先発出場となりました。

アイスランドボールでキックオフした試合は序盤、両チームが互いに前線から積極的にプレスをかけ合い、激しい主導権争いが繰り広げられます。日本は2トップに入った植木選手、小林里歌子選手(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)がボールを持った相手DFラインに規制をかけると、そこに連動して2列目の選手が狙い所を定めてボール奪取。奪ったボールも積極的に前方へ運び、縦への推進力を見せていきます。対するアイスランド女子代表も3トップが力強く前線からチェイシングをし、日本に自由を与えません。それでも日本は前半5分、長谷川唯選手(ウェストハム・ユナイテッド)がピッチ中央でボールを拾うとすかさず右サイドへ展開、駆け上がった清水梨紗選手(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)が右足でクロスを送り、そこに成宮選手が飛び込みます。このシュートはジャストミートしないものの、狙いとする素早い切り替えからスピーディーな攻撃を見せました。

しかし、スコアを先に動かしたのはアイスランドでした。14分、ピッチ中央でボールを奪うとそのまま右サイドへと広げます。そこで受けたスベインディス・ジェーン・ヨンスドッティル選手が持ち前のスピードで深い位置へドリブルで運び、角度のない所から右足を一閃。これが逆サイドネットに吸い込まれアイスランドが先制点を奪います。

同点に追いつきたい日本はその後、変わらず前線からの連動した守備でボールを奪い、厚みのある攻撃を続けます。20分には左サイドでの長野選手と長谷川選手のパス交換からペナルティエリア内にボールを運び、最後はパスを受けた植木選手が鋭いターンから左足でシュート。これはアイスランドのGKセシリア・ラン・ルナルスドッティル選手に防がれますが、チーム全体で狙いとするプレーを攻守両面で発揮し、ゴール前に迫ります。一方のアイスランドも個々のスピードを生かしたカウンターやロングスローを用いて力強く追加点を狙い、アグラ・マリア・アルベルツドッティル選手のシュートがバーを叩くシーンも作りますが、追加点を奪うには至りません。前半はこのままアイスランドが1点をリードし折り返します。

迎えた後半も組織的にボールを奪い、動かし、ゴールを目指す日本と、シンプルに相手ゴールに迫るアイスランドが一進一退の攻防を繰り広げます。日本は57分に猶本光選手(三菱重工浦和レッズレディース)、成宮選手に替え隅田凜選手、宮澤ひなた選手(いずれもマイナビ仙台レディース)を投入。中盤のさらなる活性化を図りますが、次のゴールを奪ったのはアイスランドでした。70分、自陣から日本の最終ライン、左サイド裏のスペースにロングボールを送ると再びスベインディス・ジェーン・ヨンスドッティル選手が抜け出し中央へグラウンダーのパスを送ります。これを受けた途中出場のベルグリンド・ビョルグ・ソルバルズドッティル選手がダイレクトでゴールに流し込み追加点。手数を掛けないシンプルなゴールでリードを2点に広げます。何とか1点を返したい日本はその後77分に田中美南選手(INAC神戸レオネッサ)、林穂之香選手(AIKフットボール)を投入しゴールを目指しますが、その後は両チームともディフェンス陣がゴール前で粘り強い守備を見せ得点は生まれず、そのまま試合は終了。自らの特長を生かして2点を奪ったアイスランドが勝利を収めました。

新チームの初陣を白星で飾れなかったなでしこジャパンですが、29日(月)(日本時間30日未明)にはFIFAランキング4位のオランダ女子代表との対戦を控えています。この日の課題と収穫を持ち帰り、再びトレーニングで目指すサッカーへ向けプレー精度を高め、初白星を目指して戦います。

監督・選手コメント

池田太 監督
0対2という結果は非常に残念に思います。ただオランダに来て短い準備期間の中、共有してきた色々なことにトライする選手の取り組みはピッチで見られたので、そこは収穫だと思っています。
どうのようにボールを前進させていくかというところでは、選手に早い準備を求めていました。サポートの角度も意識し連動していこうとした中で、自陣から相手陣地に入るところまではできたと思います。ただその後の最後、アタッキングサードのところでの停滞感、フィニッシュに繋がるところの共有はまだまだだなというのが正直なところです。より合わせていく部分は必要だと思いますし、それが可能な選手たちだと思っています。ただ単純なミスも多いので、そういったところの精度は求めていきたいです。
試合開始から少し相手の中盤に対する同時性が足りず、大きな展開をされる前に我々が奪い切るプレーの精度を上げていかなければいけません。また、展開された後の守備の粘り、組織の構築はこれからやっていかなければならないと思います。前から守備に行く中で、相手のボールの動かし方、立ち位置に対してどう対応していくかという点では、2トップが相手の中盤も見ながらアンカーを消していくこともありましたし、ボランチがケアすることもありましたが、ピッチ内で選手自身が感じて修正していくこともできました。これをより早い段階でコミュニケーションを取りながらスムーズにできると良いですし、そうした色々な気付きがあったことは良かったと思います。
少ない海外での試合で、経験を積ませながら勝利を目指していましたが、色んな選手の組み合わせやポテンシャルも見たいと思い、またコンディションも含めバランスを考えながら今日のメンバーは決めました。

DF #3 南萌華 選手(三菱重工浦和レッズレディース)
負けてしまったのはすごく残念ですし、チームとしても勝ちたい試合でした。新体制になって初めての試合ということで、チーム全体でチャレンジしていこうと試合に臨んだのでエラーは必ず起こるなと想定していた試合でしたが、その中でも失点はしたくなかったです。今日の試合の失点になったシーンや、自分の思うようにできなかったところは、次のゲームに向けてみんなで話し合いながら修正していきたいと思っています。
チーム全体として前からプレッシャーを掛けていくというコンセプトを持っていますが、時には全体として前からは行かない時間帯も作らなければということは話していて、それが試合の中で合わなかった時にああいった失点が起きてしまうと思います。ただDFラインとしては前からプレッシャーを掛けている分、背後にスペースがあることは自覚しながらもっとプレーしなければならないと思いますし、一発で裏をやられてしまうとそれまでの時間がもったいなくなってしまいます。ああいった一本での失点を減らしていけるように、DFラインとして背後のスペースはより意識してプレーしていきたいです。今日の試合、負けてしまたったことはすごく残念ですが、たくさんチャレンジして出たエラーをプラスに捉えながらオランダ戦に向けていこうという話は試合後できました。マイナスではなくプラスに考えながら良い方向に修正し、良いチームになっていければと思います。

MF #14 長谷川唯 選手(ウェストハム・ユナイテッド/イングランド)
自分は1回目のトレーニングキャンプに参加しておらず、練習も2回、3回という少ない時間の中で、監督の意図を言葉では聞いているものの実際にはピッチの中で探っていくという部分もありました。その中でチームとしては、今日は特に守備のところで最初はまらなかった部分をしっかりピッチの中で修正できていたので、そこは良かったと思います。それを今後はより早く修正できるようにしたいです。ただ攻撃のバリエーションは少なかったと感じていて、中央に相手の人数が多い状態でどうやって崩していくか、いつもであれば10番のポジション、トップ下のポジションが空いてきたりしますが、今日の相手は人に強くという形だったので、なかなかそこを使ったシュートシーンを作れませんでした。難しい部分ですがそこのバリエーションを増やさなければと思いました。前半の中で修正するというのはこれまでもトライしてきましたが、それが上手くいくということはなかなかありませんでした。それが今日は全体の意思統一ができて状況を変えられたので、ポジティブに捉えて良いと思います。攻撃はオフサイドもありましたが、もう少しタイミングを合わせたり、出す側も受ける側もひとつ工夫することでそれは無くなってくると思います。コンビネーションのところはもう少しFWと中盤の距離を近づけたり、サイドバックが高い位置を取ることでサイドハーフが内側のポジションを取れて人数を増やすということもできると思うので、改めてビデオを見てどんどん話して、改善していきたいと思います。

MF #17 成宮唯 選手(INAC神戸レオネッサ)
0対2という結果で悔しい気持ちです。個人としてもいつもプレーしている感覚と違ったものを感じたので、私自身このままではダメだなということをより強く感じました。個人的には2017年のラ・マンガU-23女子国際大会以降初めての外国チームとの対戦でしたが、外国人選手ならではのスピード感と特有の間合いや、そこで足が伸びてくるかというところで足が伸びてきたり、無理がきく選手が多かったです。普段WEリーグでやっている中で、ミスがミスにならずに自分でプレーを何とかできるところもあったのですが、それがミスとしてはっきり出てしまう、失点に繋がってしまうというところが海外を相手にすると出てきてしまいます。一つひとつの質を、WEリーグでプレーしている時より上げないと通用しないなと感じました。
池田監督になってからの「奪う」というコンセプトに関しては、今日はボールを奪う回数も相手に比べて多いとは言えなかったですし、得点も勝利も奪えなかったので、ひとつもクリアできなかったと感じています。今はその奪うというものがみんなに意識付けされている中でも簡単に奪わせてもらえない相手になってくるので、1人で奪えなければ2人、3人で囲って、日本人の俊敏性を生かした切り替えで集団として奪うというところをやっていかなければと思っています。

国際親善試合

なでしこジャパン 対 アイスランド女子代表
開催日時:2021年11月25日(木) 19:40(日本時間 11/26(金) 3:40)
会場:Yanmar Stadion(アルメレ/オランダ)
テレビ放送:BSフジにて生中継

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