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2020/2021年度Associate-Proコーチ養成講習会モジュール5(最終試験)が終了
2021年05月21日
Associate-Proコーチ養成講習会の第5回目の集合研修(モジュール5/最終試験)が、5月10日(月)から14日(金)までの5日間、時之栖スポーツセンターで開催されました。
最終モジュールは、口頭試験、筆記試験、実技試験(指導実践)、プレゼンテーションの試験が中心のスケジュールでしたが、初日には、AFCエモーションズプロジェクトのプロジェクトトリーダーのマーク・ミルトン氏に参加いただき、トライアルを実施しました。エモーションの仕組みや感情のコントロールについて学び、指導者として選手と向き合う上で、より深く相手を理解するための新たな視点を得ることができました。
2、3日目は、モジュール(MD)1~4までの指導実践と、その間に行った合計6回のメンタリングの成果を発揮しながら、この日初めて参加してくれた近隣の高校サッカー部の選手を相手に、それぞれが目指すサッカーにこだわりながら、指導実践の総まとめを行いました。
プレゼンテーション実習では、”Development Plan”をテーマに、女性指導者としての自身の将来について発表を行いました。将来への思いを丁寧に語りながらも、今後も学び続け成長をしていきたいと語る姿に9ヶ月間の成長を見ることができました。
集合研修は今回で最後となりましたが、この後、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となっている海外研修、国内研修(インターン)を経て、コース修了となる予定です。
◯期間:2021年5月10日(月)~14日(金)
◯会場:静岡県・時之栖スポーツセンター
◯スクールマスター:眞藤邦彦
◯コースダイレクター:小野剛、今井純子
5月10日(月)
講義:ガイダンス
講義:A-Pro振り返り
実技: AFC Emotions Project
試験:口頭試験
5月11日(火)
試験:指導実践(ゲーム指導)
試験:口頭試験
5月12日(水)
試験:指導実践(ゲーム指導)
実技:マッチデーファンクション
講義:GK、フィジカルフィードバック(講師:川俣則幸、菅野淳)
5月13日(木)
試験:プレゼンテーション実習(Development Plan)
試験:筆記試験
5月14日(金)
講義:Bi-Lateral MTG
講義:振り返り、クロージング
A-Proインストラクター、メンター、講師一覧
スクールマスターコメント
眞藤邦彦 さん(JFAインストラクター)
富士が見える御殿場で、昨年8月にメンター研修会を実施し、9月にはAssociate-Pro(A-Pro)ライセンス講習会をスタートしました。A-pro ライセンスを取得するには、6回のメンタリングと18回のオンラインセッション、そして5回の集合研修(モジュール)と国内・海外研修が必要です。この度は、コロナ禍で国内・海外研修が未実施ですが、ひとまずモジュール5までを修了しましたのでこれまでの振り返りの報告をいたします。
モジュール1(MD1)を始める前に、女性指導者のためのスキルアップ研修を実施しました。本講習で学習を深めるためのベースとなる概論として哲学、プレーモデル、プランニング、ゲーム分析、ビデオ編集を学習し、受講者のスタートラインを合わせました。これまでの経験やスキルアップ研修等で学んだ知識をもとに互いの意見を出し合いながら、気づきや新たな発見を促し、自身の力となるようなアクティブラーニングをベースに行いました。ここでのキーワードは、「共創」「内省」「コンフォートゾーン(安心安全の場づくり)」の3つです。
MD1では、この3つをベースにプレーモデルを実践に移しこみ、よりリアリティのあるプレーモデルの原則、サブ原則、サブサブ原則までの詳細な部分へのアプローチを行いました。
MD2は、詳細な部分まで突き詰めての実践になりました。受講生は、詳細な部分の整理が曖昧なままでプレーモデルに振り回されているようでしたが、これも私の狙いでした。この揺さぶりの中で、プレーモデルの学びが自分自身のものとして整理できるようにしたかったのです。
MD3ではプレーモデルとプレーアイデアの整理が少しずつつき始め、プレーヤーに対して、とてもシンプルに伝えられるようになりました。それはトレーニングオーガナイズやテーマに迫るプレーの再現性が的確になってきたことから伺えます。迷路にはまっている受講生も見受けられましたが、実技の振り返りや受講生同士の刺激によって、解決へのさまざまなオプションに気づき、その中から自身のプレーモデルの実施に当たっての最適な方法を、もがきながら見つけ出しているように感じました。
MD4では、これまでの学習で培った分析力や伝達力を発揮して、自身のプレーモデルを短時間で、チームへ落とし込むゲーム指導に取り組みました。これまでは受講生とコーチエデュケーター(CE)とでディスカッションを行っての振り返りをしてきましたが、MD4のゲーム指導では、CEと実践者との振り返りを行いました。自分の実践に対して振り返り、自己評価能力をより高めていくためです。これが的確にできるようになると、今後は自分自身の力でさらに飛躍できるのではないかと考えました。客観的な指標が必要なことはもちろん、謙虚に他者から学び続け、現場に戻った時に置かれている環境の中で実力を伸ばしてほしいと願ったのです。初めてのゲーム指導だったので、受講生は戸惑いもあり、ゲームができるというプレーヤーのはやる気持ちについていけない部分もありました。そこで、またまたMD5に向けての受講生それぞれの課題が明確になりました。MD5が始まるまでに、受講生はメンターと一緒になってその課題の克服に努めていました。同時に、私たちメンターの力も試されたように思います。私自身もメンタリングにおいて受講生の取り組みを見ながら、受講生と一緒に考え成長できたと感じました。
MD5は、受講生それぞれが課題を克服した成果を見せるゲーム指導でした。そこには、プレーヤーをもっとうまくしてあげようと真剣に取り組む姿があり、コーチらしく、頼もしく思えました。最後の指導実践は無難にまとめるのかなと心配しましたが、短い時間の中で、自身のプレーモデルをシンプルにわかりやすく落とし込みながらテーマに迫っており、自身のコーチングスタイルの色が見えた実践でした。私だけではなく、CE全員が「ここでもまだチャレンジしている」と驚きを隠せませんでした。それほど彼女たちのチャレンジ精神は見事でした。これからも、その姿勢を忘れないでほしいと思います。その実践において、プレーヤーはコーチの情熱に同調しながら、インテンシティーとクオリティの高い実践をやり遂げました。
最後に実践のまとめとして、2度目のマッチデーファンクションを行いました。受講生が2つのグループに分かれ、監督、コーチ、GKコーチ、フィジカルコーチ、テクニカルコーチとそれぞれの役割を決めての対戦です。コースダイレクターの小野CEと私もゼネラルマネージャー(GM)の役割を受講生に与えられました。GM同士の予備戦では私が一発勝負で勝ったのですが、本戦では0対1で負けてしまいました。真剣勝負の本戦では、プレーヤーは指導実践で最後まで走り続けて頑張っていたので、体力が持つかと心配しました。ところが、その心配もなくトレーニングからゲームまで全集中で取り組んでくれました。これも受講生のトレーニングプラン、ミーティングの準備、スタッフの役割を明確にして取り組んだ成果だと思います。最後まで勝利を目指して全力でプレーする姿は、すがすがしく感じられ、彼女たちの取り組む姿や白熱しているゲームを見ている私自身が元気をもらいました。ゲームにおいて勝ち負けは当然あり、勝ってうれしい、負けて悔しいことはありますが、それ以上にサッカーを楽しめたという感情がプレーヤーにも伝わったのではないでしょうか。
ゲームが終わって、受講生が後片付けをしていると、プレーヤー役だった生徒たちが自ら進んで「手伝います」と爽やかに参加してくれました。この生徒たちの行動について、私なりに分析してみました。プレーモデルの提示に始まり、タブレットや模造紙を駆使して個々のポジションでの役割や戦い方のミーティングを行い、ゲーム中においても個々の名前を呼びながら的確なアドバイスをしてくれた受講生スタッフに見守られている喜びを感じるとともに、最後まで勝利を目指してプレーできた達成感があったのではないでしょうか。だからこそ、他者の役に立ちたいという思いで後片付けに参加してくれたのではないかと思いました。受講生はサッカー指導を通してプレーヤーにサッカー以上の大切なものを伝えたのかもしれません。私はその光景を見ながら、プレーモデルの理解が深まったこと、そして何よりプレーヤーの素晴らしい立ち居振る舞いにただただ感動していました。こうしたA-pro ができたのも、メンターの皆さんやオンライン講師を務めていただいた、FIFAの方々をはじめ素晴らしいメンバーに支えられたおかげです。受講生も私たちCEも感謝しています。ありがとうございました。受講生は多くの人との関りによって成長できました。はじめは緊張して自分の殻を破るのにも時間がかかりましたが、今では素直な自分を表現できるようになり、よりたくましい姿が見られるようになりました。
昨年8月のメンター研修会と同様、今回のMD5においても4日目の朝、きれいな富士を見ることができました。受講生は、その富士を見ながらいつか高い山の頂上に立って、また違った景色を見ることができるのではないでしょうか。
受講生は、指導実践をはじめ口頭試験やプレゼン実習、筆記テストと大変なMD5であったと思いますが、最後の最後に、私だけならまだしもCE全員をいじったところは、人としての成長と彼女たちのチャレンジ精神に驚かされ、完全に脱帽しました。
私は今回久しぶりにJFAに戻り、10年後を見据えた指導者養成の新たなチャレンジに関わらせていただいたこと、素敵な受講生に恵まれたことに感謝しています。
コースダイレクターコメント
小野剛 さん(副技術委員長)
TOKYOオリンピック、WEリーグ立ち上げ、女子ワールドカップの招致、、、女子の発展がそのまま日本サッカーの発展を引っ張っていくであろうとの道筋を描いていた矢先のコロナ禍。そしてその影響もあってのワールドカップ招致断念。だったらより一層女子サッカーの発展に力を注ごうというJFAの強い意志、そして協会あげての取り組みの一環として立ち上がったのがこのAssociate-Pro (A-Pro) License Courseでした。そのため、このA-Pro License Courseは、AFC Pro-License基準をクリアする形で設定し、今後の日本サッカーを引っ張っていく女性リーダー養成としての使命を持ったコースでした。
何人集まってくれるかという不安をよそに、熱い志をもった13名の受講生が門を叩いてくれ、彼女たちの弛まぬチャレンジのおかげで、我々Coach Educator(C/E)にとっても学びの多かった本当に充実した9ヶ月間になりました。
とは言え、立ち上げ当初は正直、不安もあったのも事実です。しかしこの最終モジュールで受講生たちは、そんな弱い私の心を吹き飛ばすような逞しく成長した姿をみせてくれました。最終試験を兼ねた指導実践という重圧の中でさえ、誰一人として守りに入らず、チャレンジを続ける姿勢は、我々C/E一同に大きな驚きとともに感動を与えてくれたこと、鮮明に頭に焼き付いております。
コースを一緒に創っていった眞藤邦彦(元JFA指導者養成ダイレクター)とは、女性指導者養成という側面のみならず、”Coach Education Next Decade”(次世代の指導者養成)という側面も合い言葉にしてきました。
新しい試みの1つとしては、13人の受講生一人一人に、すなわち13人のメンターをつけて一緒になって進むべき道程を探り、互いに協力しながら登っていくというものがあります。受講生たちは、おそらく幾度も苦しい時期が訪れ、時には眠れない日々もあったと思いますが、それを乗り越え最終的に大きな成長を見せてくれたのは、自身の不屈のチャレンジ精神はもちろんですが、彼女たちに常に寄り添いながら一緒に山を登ってきてくれたメンターたちの献身的な尽力なしには成し得なかったと思います。
さらにエキスパートの観点から常に彼女たちに助言と勇気を与え続けてくれた川俣GKプロジェクトリーダー、菅野フィジカルフィットネスプロジェクトリーダー、常に足を運んで成長を見守ってくれた影山雅永氏、池田太氏、中山雅雄氏、今井純子氏はじめ多くのJFAスタッフ。そして指導に携わっていただいたFIFA、 UEFA、 AFC等多くの指導陣に心より感謝したいと思います。
このコースでは各自のプレーモデルを尊重し、それを元にサッカーをそしてコーチングを突き詰めていくスタイルで進んでいきました。ただ、それは決して簡単なものではありませんでした。「自分のサッカー」と口には出せても、それがしっかりプレーモデルに落としこまれているかといったらまた別問題です。自分のプレーモデルを確立する過程でもがき、それをピッチ上で表現していくために再びもがき、、、と、常にそんな連続だったと思います。
そしてコースの中でもう1つのキーワードとしていたのが ”Emotions”という言葉です。これまでの経験からも、指導者養成をやっていると知らず知らず頭デッカチに陥ってしまう傾向というのは付きものです。
そんな中「どんなに正しいことを語ったとしても選手の目が輝いてこないトレーニングだったら意味がない」「選手のEmotionにどれだけ働きかけることができるかが勝負」とその部分も大切にし、チャレンジし続ける日々でした。”Play Model”, “Coaching”, “Emotion”と「成長したと思うと次々と壁が突きつけられる」そんな苦しさを一つ一つ越えていくことで彼女たちは着実に成長してくれたのだと思います。
そんな折、何かの偶然でしょうか。 奇しくもAFCでアジア全体の発展には必須との強い思いからAFC Technical Director、Andy Roxburgh氏のリーダーシップのもと ”AFC Emotions Project” が立ち上げられました。これはAndy氏がUEFAのTDをしていた時代に エキスパートであるMark Milton氏を引き抜いて立ち上げたProjectのアジア版となるものです。そのPilot MAとして選ばれたJFAでは、このA-Proが最初のトライアルセッションとして実施されることとなりました。Andy, Markといった錚々たる面々で行われたセッションでは、おそらくそれまでの成長の過程で苦労しながら克服してきた様々なことが重なり合い、受講生たちにとって貴重なものになってくれたのではと想像しています。
昨年9月に始まったコースも今回のモジュール5で終了となり、残すは渡航の関係で延期となった海外研修(および国内研修)を残すのみとなりました。受講生たちと一緒にもがいていた日々を終えると、ホッとした気持はもちろんあるものの一抹の寂しさを覚える、まさに自分にとってはそんな思い入れのあったコースでした。
最後になりますが、「既成服」を無理に着せるのではなく、一人一人に応じた「テイラーメイド」のプログラムを一緒になって考え、一緒に悩み、励まし、そしてなにより常に寄り添って山に登っていってくれたメンターの方々、本当にありがとうございました。
そして、メンターたちのその姿勢こそ、彼女たちはそれをしっかりと受けとめ、後進たちへとしっかりと引き続いでくれるものと確信しております。
このコースを支えて下った全ての方々に厚くお礼申し上げます。
受講生コメント
横道玲香 さん( 広島経済大学女子サッカー部監督/JFAコーチ(女子担当)中国担当チーフ)
このコースは「WEリーグ所属のチーム及びWEリーグ所属のプロ選手の指導ができる人材を養成すると同時に、世界のサッカー界における女性指導者のリーダーとなる人材を育成する」ことを目的に立ち上げられた女性指導者が対象の「Associate-Pro(A-pro)コーチ養成講習会」です。その海外研修を除く全日程が終了しました。
全日程を終え率直に感じていることは、このコースに参加できて本当に良かったということです。受講生が臆することなくチャレンジできる環境を作ってくださるコーチエデュケーターの眞藤さん・小野さんがいること。その環境の中で苦しみながらも果敢なチャレンジを続ける13名の心強い仲間がいること。そしてオンライン講義や一人一人についてくださるメンターの皆様は錚々たるメンバーで私たちの力を引き出し、見い出してくれました。
私たちはスタートラインにやっと立てただけです。
これからは「劇的に女子サッカーを変える」その仲間として、私たちらしく前向きに、ひたむきにチャレンジを続けていきたいと思います。
コロナの影響で各種調整が難しい状況のなか、受講生が安心・安全に受講できる環境を整えていただいたこと、そしてコースの創設にあたりご尽力いただいた皆様、指導実践でご協力いただいたチームの皆様、最後になりますが13名の受講生に関わってくださった全ての方々に心から感謝申し上げます。
小倉咲子 さん
最終モジュール初日はAFCエモーションズプロジェクトの講義でした。
技術・戦術と同等に感情のコントロールは勝敗を分ける個人技術の一つになり得ます。感情を支配するのか、感情に支配されるのか。指導者として選手の感情の奥にあるニーズを冷静に見極められる傾聴を心がけていきたいと思います。
その後は口頭試験、指導実践、プレゼン発表、筆記試験という毎日でしたが試合同様に「事前準備の重要性」を感じました。
指導実践では「試験だからと無難にやるのではなく、最後までA-pro受講生らしくチャレンジしよう」という共通意識の中、それぞれがメンタリングでの成果をゲーム指導の中で出し切りました。
対応してくださった星槎国際高等学校と飛龍高校の礼儀正しくはつらつとした選手の皆さん、本当にありがとうございました。
A-proは「一人一人の個性を大切にし、多様性の中での気づきから学ぶ」という観点で一貫していたので、最後のプレゼン発表では全員が個性を全面に出し、この先進む道や取り組むことが手に取るようにわかる前向きな内容でした。
私も与えられた15分間にA-proで培ったものや感謝の気持ちを伝えることができました。
この9ヶ月間は、居心地の良い環境の中、サッカーだけに没頭でき、女子サッカーを引っ張っていく仲間と出会えた、幸せな時間でした。ひとまず集中講習は終わりましたが、一旦解散してまたそれぞれの場所で個を磨いて再集結できる日を楽しみにしたいと思います。
最後に所属チームをはじめ、このコースに携わってくださった全ての方々に心から御礼を申し上げます。