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【日本サッカーミュージアム企画】「いろいろな人の思いを継承していかなければいけない」佐藤寿人さんインタビュー
2023年01月05日
日本サッカーミュージアムは、日本サッカー協会(JFA)のオフィス移転に伴い、2023年2月5日(日)をもって休館します。ここでは、2022年12月25日(日)に行われた日本サッカーミュージアムトークイベントに参加した佐藤寿人さんに、記憶に残る大会やミュージアムの印象などについて聞きました。
――FIFAワールドカップカタール2022でのSAMURAI BLUE(日本代表)について、どのように評価されていますか。
佐藤 これまでのワールドカップと違って準備期間が限られていて強化の部分で難しさがあり、期待と不安が混在していたと思いますが、あの難しいグループステージでチームとして準備してきたことを発揮し、結果につなげてくれましたし、森保一監督が準備してきた「勝つ可能性を1%でも高める」という作業が花開いたと思います。相手が自分たちを上回るプレーをしてきても、慌てずに防ぐ術を最大限に持ち合わせたチームだったと思います。
――大会全体を見て感じたことを教えてください。
佐藤 本当の意味でトップレベルの選手たちとはクオリティーの差が大きいと思いましたし、日本がそういう相手に対して何ができるのかを見たかったな、という思いはあります。今回、現地で16試合を見ることができたのですが、たとえば横パス一つにしても、それが30センチ前に来るか後ろに行くかの違いだけで次のプレースピードが変わり、相手の守備のポジションも変わるので、そういった部分を追求していかなければいけないと感じました。
――森保監督とはベガルタ仙台やサンフレッチェ広島で深い付き合いがあると思いますが、どのような方なのでしょうか。
佐藤 カメラに映っている姿が素の森保さんだと思います。裏表がなく、飾ることもないですし、大きなことを言おう、自分を大きく見せようということもないですね。地道にコツコツやることが得意な方ですし、クラブや代表の監督として経験を積むなかでいろいろな考えを取り入れていると思いますが、物事への取り組み方や人との接し方は変わっていません。印象的だったのが、スペインに勝った後のインタビューで「この成果はみんなで勝ち取ったもの」といったニュアンスのことを言っていたんですが、それが広島で初めて優勝したときに発した言葉とよく似ていたんですよ。僕も感じましたし、一緒に聞いていた妻もそう言っていて、森保さんらしいなと思いました。
――過去のワールドカップで特に思い出に残っている大会はありますか?
佐藤 1993年の“ドーハの悲劇”は印象的でした。当時は小学6年生で、夜更かしして見ました。カズさん(三浦知良)やゴンさん(中山雅史)、ラモス(瑠偉)さんらスター選手がいるなかで、それでもワールドカップに届かないという現実を突きつけられ、泣きながら布団に入ったことを覚えています。日本代表が出場した大会で言うと、やはり初出場した1998年のフランス大会は印象深いです。期待を抱いていた反面、ゴールを奪う難しさ、勝ち点を挙げる難しさ、勝つ難しさをまざまざと感じました。当時、僕自身もU-16日本代表で初めて日の丸を背負い、日本と世界との差を肌で感じていたので、それも含めて印象に残っています。
――特に印象的な試合や選手について教えてください。
佐藤 小野剛技術委員長(当時)がまとめられたテクニカルレポートのなかに、ガブリエル・バティストゥータ(アルゼンチン代表)の動きがまとめられていたんですよ。豪快なプレーが特徴的な選手ですが、それを生み出すためにどうやって動き、フィニッシュワークをするための空間をつくり出していくのかが言語化されていて、それを教材として見せていただくことができました。僕自身もちょうど代表のユニフォームを初めて着た頃だったので、どうすれば得点を奪えるのかを突き詰めて考えるきっかけになりました。
――今回はその当時のユニフォームをお持ちいただきました。
佐藤 カタールのドーハでAFC U-16選手権を戦った時のユニフォームです。1997年の“ジョホールバルの歓喜”やフランス大会のときと同じデザインですよね。今回、カタールでワールドカップが開催されて、そういえば1998年にドーハで着たユニフォームがどこかにあるな、と思って探したところ、なぜか妻の実家にありました(笑)。このときは残念ながら世界大会への切符をつかめなかったんですけど、育成年代の代表活動はトップの代表強化にもつながりますし、僕も当時、いろいろな場所に遠征に連れて行ってもらって、世界との差を肌で感じながら成長することができました。
――佐藤さんは日本サッカーミュージアムを訪れたことがあるそうですね。
佐藤 はい。2022年の夏に来ました。想像以上に深い歴史を目の当たりにして、鳥肌が立つような感覚でした。歴代のユニフォームが展示されるなど華やかなイメージを持っていたんですが、日本サッカーの本当の歴史、普段なかなか見ることができないようなものまで見ることができて、何でもっと早く来なかったのかなって後悔しました。Jリーグがあり、日本代表がワールドカップに出るのが当たり前の時代になりましたが、遡ればいろいろな方のサッカーに対する思いがあったからこそ今があるわけですし、サッカーに多くのものを与えてもらった世代として、それをしっかり継承していかなければいけないなと感じました。今回のワールドカップでサッカーの楽しさ、チームとして結果を出すことの素晴らしさを代表チームや選手が与えてくれ、いろいろな人が受け取ってくれたと思うので、それを未来につなげていくことが自分たちに課せられた使命だと思っています。
――日本サッカーミュージアムはJFAのオフィス移転に伴い、2023年2月5日をもって休館する予定となっています。
佐藤 新たな形に生まれ変わるとは思いますが、今のミュージアムはあと1カ月間程度しか見ることができないですし、ぜひこれまでの歴史、ここまでの歩みを多くの方に見ていただきたいですね。今回のワールドカップで得られた成果の背景を少なからず感じ取ることができると思いますし、現状のミュージアムを見ることで将来、どのような姿に生まれ変わるのかという楽しみも増えます。ぜひ一度、足を運んで、日本サッカーの歴史を共有してほしいですね。
日本サッカーミュージアムについて
2002FIFAワールドカップ日本/韓国の開催を記念して2003年12月に開館。同大会の熱狂や感動と、日本サッカーの歴史を次世代の人々に継承し、サッカー文化を普及させる役割を担っています。
累計入場者は約70万人(2022年12月時点、年平均:約36,700人)。
日本サッカー協会(JFA)事務局の新オフィス移転に伴い、2023年2月5日(日)をもって休館します。
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