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“伝統”と“多様性” ~ワールドカップと背番号の変遷 後編~
2022年09月23日
前編「背番号の歴史」はこちら
中編「日本代表 背番号の“継承”」はこちら
2014年ブラジル大会で世界王者となったドイツ代表については、一人のスター選手の躍動というより、組織としてそれぞれの選手がポジションや特長に適した仕事を果たしていたのが印象的なチームだった。
守護神【1番】マヌエル・ノイアー、ディフェンスリーダー【5番】マッツ・フンメルス、中盤で抜群の攻撃センスを発揮した【8番】メスト・エジル、無類の勝負強さでワールドカップ16得点という大記録を打ち立てたストライカー【11番】ミロスラフ・クローゼといった、伝統的なポジションと背番号のイメージにふさわしい選手が主軸として活躍しながら、若くして注目を浴びた【18番】トニ・クロースや、アルゼンチン代表との決勝で殊勲のゴールを決めた【19番】マリオ・ゲッツェなど、12番以降を背負う選手が試合ごとのヒーローとして躍動して栄冠を勝ち取った。
2018年ロシア大会で優勝を果たしたフランス代表では、まだ当時19歳だったキリアン・エムバペが【10番】を背負った。1998年に同国代表を初優勝に導いた「10番タイプ」の代表格ジネディーヌ・ジダンとは異なり、ストライカー色が強く”9.5番”という表現がふさわしいアタッカーで、圧倒的なスピードと突破力、冷静なフィニッシュでフランスを躍進に導いた。
そのフランス代表に敗れはしたものの、準優勝と躍進を見せたクロアチア代表の【10番】ルカ・モドリッチもまた先人とは異なるタイプだった。司令塔として攻撃を組み立てながら、チャンスを見てフィニッシュにも参加する姿はまさに「10番タイプ」だったが、守備面でのハードワークによる貢献も大きく、エムバペとも先人とも異なる【10番】の”多様性”を物語る選手だと言えるだろう。
ロシア大会の日本代表については先述の【4番】本田圭佑、【7番】柴崎岳、【10番】香川真司らの活躍も目立ったが、特に印象的だったのは【14番】乾貴士と【15番】大迫勇也だろう。
セネガル戦、ベルギー戦で見事なゴールを決めた乾の【14番】は、かつて日本代表を初のワールドカップ出場に導いた岡野雅行はじめ切り札的なイメージの選手が背負う印象が強く、そのイメージを確固なものとしたのが乾の活躍だったように思う。
大迫の【15番】は固有の選手のイメージはあれど、少なくともストライカーが背負う番号のイメージはなかったが、コロンビア代表との初戦で殊勲のゴールを決め、「大迫半端ない」が流行語となるなど国民的な話題となった大迫の活躍によって新しいイメージが刻まれた印象がある。
長い歴史と多くの国々の文化によって、役割やイメージが幅広く変遷してきた背番号だが、その移ろいは一層加速しているように感じられる。
ドイツ、スペイン、コスタリカと同組となったカタールワールドカップで、ベスト8という過去最高の成績を目指す”サムライブルー”で、誰がどの背番号を付けるのか、そして印象に残る活躍と共に記憶に残る背番号は何番になるのか注目したい。
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