ニュース
【SAMURAI BLUEを支えるスタッフ】チームのパフォーマンスに関わるキャンプ地選び
2022年11月19日
FIFAワールドカップでの戦いにおいてベースキャンプは非常に重要な要素となる。SAMURAI BLUE(日本代表)はどのようにキャンプ地を選定しているのか。2007年の日本サッカー協会(JFA)入局時よりチーム総務を担当し、現在はドイツのデュッセルドルフにあるJFAヨーロッパオフィスに勤める津村尚樹・同オフィスダイレクターに、2014年ブラジル大会と2018年ロシア大会でのキャンプ地選びについて話を聞きました。
※このインタビューは2022年10月13日にオンラインで実施しました。
――2014年のブラジル大会のキャンプ地選びについて聞かせてください。
津村 選定の基本として考えていたのは、宿舎と練習グラウンドが一つの敷地内にあることです。移動の負担が少ないですし、選手が自分たちのペースで準備やトレーニングできるからです。それがかなわない場合には、練習場の環境を優先した上で、なるべく近い距離にあるホテルを選ぶという考え方でした。
――その考え方は経験から学んだものですか。
津村 2010年の南アフリカ大会では宿舎から練習場までの所要時間が約5分で、移動のストレスがありませんでした。当時の岡田武史監督から「環境が良い」という話もあり、ブラジル大会も同じ条件を整えるという考えがありました。試合後のリカバリーという点からも、宿舎と練習施設が同じ場所にある方が良いので、設備についてはそのポイントを重視しました。
――ほかにも何か条件はありましたか。
津村 ブラジル大会で難しかったのは、国土が広いことです。気候が試合会場によって異なる上に、どうしてもキャンプからの移動距離が長くなる。しかもベースキャンプは組み合わせが決まる前に決めなければ、良い環境を整えられない状況でした。試合会場への移動は飛行機を使うので、宿舎から空港までの距離も考慮しました。
――実際に視察した数は。
津村 候補地が50以上ある中で、30カ所くらいは足を運びました。その中で練習環境などを考慮してイトゥに決まりました。最終的に3カ所に絞り、アルベルト・ザッケローニ監督(当時)と一緒に視察して決めました。
――ベースキャンプで過ごす中で、当初考えていたことと違いや苦労などはありましたか。
津村 空港までの距離は遠くないのですが、移動の際にチームバスをセキュリティースタッフが先導するなどして、想定していたよりも時間がかかりました。40分くらいはかかっていたと思います。近いというのは10分、15分で着くケースを指すと思いますので。それから、組み合わせ抽選の結果、キャンプ地から距離が遠い上、気温の高い会場で試合をすることになりました。分かっていたこととはいえ、やはり難しさがありました。施設の面では完成予定だった部分があり、最後は間に合わないかもしれないということで、日本から人を派遣して対応したところもありました。「完成予定」は危険だと痛感しました。
――ブラジル大会の経験はロシア大会のキャンプ地選びに生かされましたか。
津村 選定の段階で、どの会場で試合をすることになってもいいような場所を選び、設備の充実度をつぶさに見ていきました。自分が関わる以前は分かりませんが、南アフリカ大会以降は、他のチームはこんなには見ないだろうというくらい視察してきました。ロシア大会も同様です。国際サッカー連盟(FIFA)が契約している施設がリストに更新されていくのですが、視察の途中で、過去の大会で顔見知りになっていたFIFAのスタッフがカザンについて「見た方がいい」と声を掛けてくれて視察することができました。
――カザンに決めたポイントは。
津村 FCルビン・カザンというクラブの施設だったので設備がそろっていました。練習場と宿舎が同じ敷地内にあり、トレーニングパートナーでキャンプに来ていたU-19日本代表も同じ施設内の宿舎に泊まることができました。プールもあり、リカバリーのための設備も整っていたのは大きかったですね。
――ロシアのキャンプ地を決めるにあたり、監督からリクエストはありましたか。
津村 設備の充実に重きを置いていました。当時はヴァイッド・ハリルホジッチ監督でしたが、監督に代わってシリル・モワンヌフィジカルコーチと視察し、決定しました。
――これまで携わってきて、あらためてキャンプ地選定の重要性についてはどのように考えますか。
津村 ロシア大会は初戦に向けて良い準備ができ、結果も出ました(コロンビアに2-1の勝利)。大会期間中は、宿舎もそうですが、練習施設にいる時間が長くなります。ですから環境や設備は大切です。キャンプ地選びはチームが最高のパフォーマンスを発揮することに関わるもの。100点満点はないですが、SAMURAI BLUEは、悪い部分はスタッフのみんなが意見を言ってくれますし、選手も思ったことを率直に伝えてくれる。その経験がしっかりつながってきたと思いますし、また次へつながっていくと思っています。
FIFAワールドカップカタール2022
大会期間:2022年11月20日(日)~2022年12月18日(日)
グループステージ
第1戦 11月23日(水) 16:00[現地時間] vs ドイツ代表
第2戦 11月27日(日) 13:00[現地時間] vs コスタリカ代表
第3戦 12月1日(木) 22:00[現地時間] vs スペイン代表
関連ニュース
- 日本代表 2022/11/18 【SAMURAI BLUEを支えるスタッフ】キットマネージャー山根威信氏 キットスタッフ麻生英雄氏インタビュー
- 審判 2022/11/18 【審判員インタビュー】テクノロジーが導入されても、最終判断は審判員が行う 相樂亨氏
- 日本代表 2022/11/16 【SAMURAI BLUEを支えるスタッフ】フォトグラファー 栗山尚久氏&神山陽平氏インタビュー
- 日本代表 2022/11/09 【SAMURAI BLUEを支えるスタッフ】チームドクター 加藤晴康氏インタビュー
- グラスルーツ 2022/11/08 【中村憲剛の教えてファミリー】興味があることは自分で追求する~川島永嗣選手のご両親インタビュー
最新ニュース
- JFA 2024/11/22 2024年度 JFA第12回理事会を開催
- JFA 2024/11/21 【不服申立委員会】 2024年11月21日付 公表
- JFA 2024/11/21 【裁定委員会】 2024年11月21日付 公表
- 選手育成 2024/11/21 バイエルン・ミュンヘンへ短期留学 JFAとアディダスによる育成年代の選手を対象としたプロジェクト「育成年代応援プロジェクト JFA アディダス DREAM ROAD」~2024年度 第三弾が始動~
- 大会・試合 2024/11/21 決勝(11/23)チケット当日券の販売について 天皇杯 JFA 第104回全日本サッカー選手権大会 大会アンバサダー三笘 薫 選手・CFCと協働 子どもたち30名ご招待