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【審判員インタビュー】みんなが夢中になって楽しむ、そういう試合の手助けができる審判員になりたい 山下良美さん

2022年10月03日

【審判員インタビュー】みんなが夢中になって楽しむ、そういう試合の手助けができる審判員になりたい 山下良美さん

今年5月にFIFAワールドカップ初の女性審判員の一人に選出され、8月にはプロフェッショナルレフェリーとなった山下良美さん。サッカーや審判員活動を始めたきっかけや、FIFAワールドカップカタール2022に臨む現在の心境などを聞きました。

※このインタビューは2022年9月12日にオンラインで実施しました。

――サッカーを始めたきっかけを教えてください。

山下 兄の影響で、4歳で始めました。通っていた幼稚園に教えに来ていたクラブに入ったんです。当初は、女の子は私一人でしたが、特に意識することもなく、楽しんでやっていました。中学3年生までクラブチームでサッカーを続けましたが、高校では部活動に憧れていたことと、進学した高校にサッカー部がなかったことからバスケットボール部に入部しました。でも、その後、サッカー熱が再燃し、大学で再開しました。

――審判員活動はどのように始められたのですか。

山下 大学在学中に先輩の坊薗真琴さん(現、国際審判員)に声を掛けていただきました。坊薗さんは既に審判員活動を始めていて、半ば強引にといいますか、先輩の誘いなので断れず、「はい!」と(笑)。

――実際に審判員として活動してみていかがでしたか。

山下 練習試合などで副審を務めたことはありましたが、(主審として)笛を吹いたことはなかったので、最初は時間を計測する人のようなイメージで、キックオフとタイムアップの笛を吹くだけという感じでやっていて、審判員活動にあまり興味を持てませんでした。でも、試合を終えると、その試合に対する責任と審判員の存在の大きさに気付き、やるならばしっかりやらなければならないと思うようになりました。

――審判員を続けようと思った理由を教えてください。

山下 周囲の方に声を掛けていただき、それがすごく励みになって、次の試合、次の試合と向上心が芽生えてきました。そして、続けていくうちに選手時代とは異なるサッカーの一面を知ることができ、どんどん魅力が増していきました。

――2019年に1級審判員に認定され、現在は男子の試合でも主審を務めていますが、女子の試合との違いを感じることはありますか。

山下 フィジカル面ですごく感じます。例えば、ロングボールを蹴る場合、女性だと振りかぶって体を目いっぱい使って蹴りますが、男性は大きな予備動作もなくパッと蹴れてしまう。これまでは蹴る前の動きで予測できていたところが、そうではなくなる。自分自身の予測の精度を上げなければなりません。また、ボールが蹴られてから走るスピードの差も異なります。自分の方が速ければ予測が外れても追い付けますが、そこでギャップが生まれるとその後の展開に付いていけなくなってしまいます。予測を一歩でも、一つでも間違うと追い付けなくなるので、90分間を通して高い精度を保つことに集中しています。

――今年5月、FIFAワールドカップカタール2022の審判員に選出されました。

山下 聞いたときは信じられない気持ちと驚きがありましたが、同時に責任を強く感じました。日本人として、アジア人として、そして今回は女性初ということで、女性審判員としても、多くの方のワールドカップへの思いを理解して臨まなければならないと思っています。また、これまで先輩方が築き上げてきたものや審判員仲間の信頼を壊していけないという思いも強くあります。

――カタール大会をどのような舞台にしたいですか。

山下 未知の舞台ではありますが、参加する以上、その責任を果たすために全力を尽くすことしか私にはできないので、ピッチに立つことを目標に、目の前のことに集中してやっていきます。

――女性初、日本初など「〇〇初」という表現が付いて回りますが、重圧を感じることはないですか。

山下 「初めて」になるのは、決して自分だけの力ではないですから、試合後には常に「これで次の人にきちんとつなげられるだろうか」と不安になります。でも、不安やプレッシャーを感じてできる立場に対して喜びや幸せも感じていますし、多くの方から声援をいただけるので、それを力に変えています。

――8月からはプロフェッショナルレフェリーとして活動することになりました。

山下 昨年、WEリーグが開幕して女性でもプロサッカー選手を目指せる環境ができました。審判員でも同じように夢や目標にできる環境をJFAが整えてくれたことに感謝していますし、私自身がプロフェッショナルレフェリーを引き受けることで女性だけでなく、日本サッカーのさらなる発展につながればうれしいですね。もちろん、それぞれの生活に合った審判員活動がありますから、プロフェッショナルレフェリーが一番の存在ということではなく、選択肢が広がったということを知ってもらえればと思います。

――ご自身の審判員活動だけでなく、多くの人に伝えていくことも求められると思いますが、どのようなことを伝えていきたいと考えていますか。

山下 いろいろな方とお話をさせていただく機会が増えて、その中で本当に限界はないのだと感じているので、可能性は常に広がっているということと、それを信じて前に進んでほしいということを伝えていきたいと思います。

――最後に、目指す審判員像を教えてください。

山下 選手は夢中になって勝利を目指し、観客はその姿に感動し、いろいろなことを感じながらみんなが楽しむ、そういう試合の手助けができる審判員になりたいと思っています。

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